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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ランクヘッド(2005年4月号)- 新章突入──「体温」そして『月と手のひら』止め処なく溢れ出す "命が燃える音" への希求

新章突入──「体温」そして『月と手のひら』止め処なく溢れ出す “命が燃える音” への希求

2005.04.01

 ランクヘッドが、約1年ぶりのニュー・アルバム『月と手のひら』を5月11日にリリースする。必死にもがいて、前に進みたいけれど何かに足をすくわれて進めないジレンマを、ギターをかき鳴らし胸の中で爆発させていた前作の『地図』。そこから、鮮やかな飛躍を4人は遂げている。根岸孝旨をプロデューサーに招聘した最新シングル「体温」では、明らかにこれまでとは違う表現と熱を手に入れた。メジャー・デビューから約1年。改めてプロとしての自覚に立ち、バンドが鳴らす音楽の意味を感じながら取り組んだ新作で彼らは、たくましく成長した音楽を堂々と鳴らしている。今年25歳になる4人の男が作り上げた、バンドにとって最初のマイルストーンだ。(interview:梶原有紀子)

思わず拳を握りしめてしまう“攻めのモード”で

──アルバム、すごくいいです。特に1曲目の「月光少年」から2曲目の「グッド・バイ」の流れは、目の前がガッと開けた感じがあって。制作はいつ頃から始まったんですか?
 
小高芳太朗(vo, g):前作の『地図』が出てから「ひとりごと」というシングルを去年の秋に出すことになって、それが録り終わったところから……だから、去年の8月の終わりぐらいからですかね。1stの『地図』は結成当初からやってきた曲やデビュー前の曲がほとんどで、その後に出たシングルの「ひとりごと」もそう。その2枚を出したことでランクヘッドの第一部・完、的なところがあって。それまでの曲は出し尽くした、ここからは新しいランクヘッドの始まりというような、カラを一枚脱いだ感じがあったんですよ。そこからアルバムを意識して曲作りに入って。気持ちとしてはほとんどまっさらな、バンド組み立てぐらいの気分で曲作りに入りましたね。
 
──その時、自分の中で曲にしたいものは何かありましたか?
 
小高:何もなかったですね(笑)。逆に“どうしよう?”ぐらいの。僕ら、ライヴハウスのテープ審査で落ちるようなどうしようもない段階から始まってて、その頃から作った曲も『地図』には入ってたんですね。でもここ何年かで自分らなりの成長もあって。じゃ、今ゼロから始めたら、どういうものが作れるんだろうっていう期待と不安は結構あって。そういう感じは……なかったかな?
 
山下 壮(g):……あったんじゃないかな(笑)。
 
小高:きっと、もっといい曲や言葉が出来るんじゃないか。“出来なければ!”みたいなのもあったし。バンドを結成したような気分もあったけど、実際はデビューしてアルバムを一枚出してる状態で。プロとしてやっていく覚悟ってところでも、非常に腹をくくった時期でもあったし、いろんな感情が渦巻いてた気がしますね。
 
──曲はどんなふうに出来ていったんですか?
 
石川 龍(ds):比較的サクサクと。バンド内はいい意味で仲良く、ほんわかしてましたよ。
 
小高:とりあえず思いついたことは何でもやろうよって。
 
石川:うん。「ひとりごと」を出すことで一通 り精算できたから、何でもやっていいと思ったし、最初に方向性を決めてもつまんないし。 小高:逆に、どんだけいろんなことが俺らできるんかなっていう確認というか、自分らの立ってる場所をもう一回はかり直すという意味でも、それこそヤケクソに何でもやりましたね。ジャジーなものからファンクなものから何まで。
 
山下 :まぁでも、選曲の段階になった時に、これまたおもしろいことがあって。
 
──と言いますと?
 
山下 :曲はいっぱいあったんですよ。20曲ぐらい用意してて“余裕だぜ”と思ってたんですけど、フタを開けてみたらミドル・テンポの曲がすごく多くて。
 
石川:まったりした(笑)。でも、まだ落ち着くタイミングじゃないし、もうちょっと攻めてもいいんじゃないか? ってイメージで決めていったらミディアムの曲がなくなっちゃって(苦笑)。
 
小高:20曲中に5、6曲ミドルがあって、その中から1曲を選びに選び抜いて、残りは保留。ってしてたら全部で8曲ぐらいしかなくて、“曲が足りません!”って(笑)。あと1ヵ月でレコーディング始まるけどー……、みたいな。
 
石川:でも、そこで攻めれて良かったよね。8曲しかないから、仕方ないって残りの曲から選ぶんじゃなくて。
 
小高:“もっといい曲作ってやるぜ”って作り始めました。僕、追い込まれると強いんですよ(笑)。“目にもの見せてやる!”と思って。
 
──それから作ったのはどの曲ですか?
 
小高:1曲目の「月光少年」と本編最後の「月と手のひら」、それと「姫百合の花」です。僕、家で一人で呑むんですけど、酒呑んで曲を作るとまったりしちゃうんですよね(笑)。でも2ndアルバムの意味みたいなものも考えて。2ndアルバムって、1stで作ったものを3rdにつなげるものかなと思ったんですよ。僕らのイメージっていうのも変な話ですけど、バカ売れしてるわけでもないし、1stで作ったイメージが2ndで“あれあれ~?”みたいになってしまうのはヤだなって。僕ら下北沢で、ずっと昔からどんなに頑張ってがむしゃらに演奏しても、お客さんは棒立ちで。そうするうちにお客さんの中で、ガーッてノるよりもジッと聴いてあげるのが正しいファンなんだ、みたいな風潮が生まれて。でも僕らはガッツンガッツンのライヴをしたいんですよね。お客さんと一緒になりたいし。どうしたらいいんだろうってみんなで必死に考えて、ライヴのやり方も考えて。そうした中で1stは、ひとつのライヴの武器になったと思うんですよね。
 
──でしょうね。
 
小高:そうやってせっかく築いてきたものを、もうちょっと先につなげたいって気持ちが生まれてきて。だったら、ライヴで思わず拳を握りしめてしまうような、攻めのアルバムだろうって。
 
石川:ランクヘッドって、小高の歌詞と歌声っていうのが強い要素だと思ってるんで、そのファクターを埋没させないようなレベルでの攻めのモードっていうのをすごく意識して選曲していきました。
 
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