バックホーンは楽曲のクオリティが落ちないんだよね(増子)
菅波栄純×上原子友康
──お互いの新作は聴かれましたか? 怒髪天の皆さんはバックホーンの『ヘッドフォンチルドレン』はどうでした?
上原子:全部良かったね。やっぱりメロディがまずいいよね、グッときちゃう感じで。
菅波:あぁ、ありがとうございます!
上原子:俺の世代が聴いてた70年代後半から80年代にかけての歌謡曲のいいメロディで、サウンドは今な感じっていうのがいいよね。そこが凄くグッときちゃうんだよね。
増子:そう。ツボを突いてくるからね。
清水:歌詞もいいよ。みんな歌詞を書いてるんだよね?
菅波:そうですね、今は。
清水:なんか最初はキャッチーなところから入って、終わり際に少しキャッチーじゃなくなったりするのがちょっと変わってていいよね。
増子:バックホーンはさ、楽曲のクオリティが落ちないんだよね。アルバムを作るたびに、同じことはできないから禁じ手が増えていくわけじゃない?
菅波:そうですね。
増子:それを超えるのは熱量 でしかないから。…坂さんは聴いた?
坂詰:昨日もらって、家に帰って部屋へ入った途端にヒザをついたら…寝ちゃいました(笑)。
一同:爆笑
増子:それ、なんかの病気じゃないのかよ?(笑)
──バックホーンの皆さんは、怒髪天の『桜吹雪と男呼唄』は聴きましたか?
松田:聴きました。“この曲、好きだな”とか好みはありますけど…やっぱり、怒髪天の凄さは20年バンドを続けてるっていうエネルギー。“何が何でもやってやる!”というパワーが凄い。そこを一番“リスペクト”しますね、今風に言うと(笑)。
菅波:うん。こないだのライヴで坂さんが「ロックンロール!」って言った時にお客さんがワーッ! となって、俺もオーッ! ってなったんですよ(笑)。マツが言ったように、ずっと続けてて、これからも続けていくからこそ、増子さんがMCで言ってた「いろいろ悩んだり、お前らの人生もあるだろうけど、俺達はいつだって、ライヴハウスへ来れば演奏してるから」っていう言葉に鳥肌が立ちましたね。怒髪天はロックンロールですよ!
岡峰:俺は十何年前の曲は聴いたことがないですけど、このアルバムを聴いて若くなってるような感じがしますね。イキイキしてる感がある。ライヴを観ても、シミさんの顔が凄い好きで。“いい顔してんなぁ…”って思うし。
増子:シミはやけっぱちの顔だからね(笑)。
山田:ははは。あと、増子さんの声がスゲェ色っぽくなってきましたよね。最後の曲(「フーテン悪ツ」)とかゾクゾクしましたよ。 増子:それを言ったらね、将司は凄くいい声だよ。俺の好きなヴォーカルって、ピークの時にディストーションが掛かる声、これが“ロック声”なんだよ。チバ(ユウスケ)なんかもそうだけど。音源で聴くと“歪んでるのか?”って思うんだけど、それが生声なんだよね。 シミさんはライヴで観る顔のまんまのベースを弾く人(岡峰)
──お互いのパートについてはどう思われますか?
増子:ここ何年かで知り合ったバンドの中でも、将司はヴォーカリストで言うと間違いなく3本の指に入るね。将司はすましてればモテると思うけど、カッコつけてるだけで伝わるかっていうと、ロックってそんなもんじゃないからね。あと、将司は世界観がキレイだよね。ドロドロの歌を唄っても透明感があるっていうか。
山田:俺は増子さんの声に、熱く唄い上げてるけど優しさを感じていて。そこになんか救われる時がありますね。
増子:嬉しいねぇ!
山田:俺も優しさの打ち出し方として、人のドロドロしたところにわざと付け込むことで共感し合えるようなことをやる時もあるけど…増子さんはもっと骨が太くて、生身のままで声を出してて。そこに自然とケツ叩いてあげるような優しさを感じますね。
増子:人間関係というのは、こういう美しい誤解によって成立するんだね(笑)。
──友康さんは、栄純くんのギター・スタイルはどう思われますか?
上原子:ギターが唄ってるんだよね。ヴォーカルに寄り添うっていうよりも、メロディをギターも唄ってる。出してる音自体は凄いトゲのある音だったり、いろんな音を出してるんだけど。あと、個人的には80年代に自分がコピーしていた頃のメタルっぽいところもあったりして。でも、世代的にはメタルなんて聴いてないよね?
菅波:そうっすね。
上原子:凄くコピーしたくなるようなギターなんだよね。
増子:ホント、俺らの世代にピタッとくるよね。栄純はオッサンか?(笑)
菅波:ははは。もしかしたらそうかもしれないっすね。俺、親が教えてくれてた誕生日と保険証の誕生日が違うんですよ(笑)。
一同:大爆笑
上原子:怒髪天とタイプは違うけど、バンドとしてのギターの在り方が勉強になるんだよ。4人の音としてメロディと歌詞が素晴らしいから、本当はフォーク・ギター1本でもいけると思う。そこでバンド・サウンドをよく聴くと、凄い変わったアレンジをやっていて。それが凄く勉強になるね。
菅波:あ、ありがとうございます。俺は曲を作ることが先で、伴奏したいがためにギターを買ったんです。だから自分の中でギター・ヒーローみたいなのがずっといなかったんですけど、友康さんは好きなんですよ。一番最初に一緒にライヴをやったリハで観た時から…好きでした。
増子:オッ、告白じゃん! フィーリング・カップル4対4だね(笑)。
菅波:ははは。なんか、将司が増子さんをいいって言ってる感じと近いんですけど、優しくて人を楽しませるのが好きなんだろうなって。俺は人を楽しませるのが好きでバンドをやってるところもあって。友康さんは、ここで泣かせて欲しい時には泣かせてくれるギターを弾くし。凄いスタンダードなこともできて楽しませてくれるっていう人は、そうはいないですからね。俺はこれからやりてぇなって思います。
──シミさんから見た光舟くんのベースは?
清水:…カッコイイ!
増子:一言かよ(笑)。
清水:バンドの中でのポジションがとても良くて。ガンと出るところは出るし、ガッチリ押さえるところは安定していて。そして演奏も凄く巧いし。あとは…もうちょっと喋ったほうがいいかなぁ(笑)。
岡峰:はははははは。
増子:次から「ハイ、どうも~」ってMC担当で(笑)。
清水:ベースとしての存在の正しさを聴いていて凄い感じる。
上原子:ヴォーカルのメロディと絶妙に当たってないんだよね。凄いカッコイイよ。
清水:そうそう。低いのから高いのまで音を上手に使っていて、聴いてると気持ちがいいんだよね。俺も早くそうなりたいなぁ…。
岡峰:いやいやいや(笑)。
増子:死ぬ までにはなってよ(笑)。光舟のベースは、いわゆるロック・バンドのベースじゃないんだよな。だから、バンドとしての振り幅が広くなるというかさ。
──そういえば、両バンドともベーシストが最後に加入したという共通点がありましたね。
増子:ウチはまだ正式加入してないから(笑)。
岡峰:ははは。俺が思うのは、シミさんはライヴで観る顔のまんまのベースを弾く人だなって。最後の曲とかアップライトを使ってて、シブいこともやってるなぁと。
清水:…あれ、無理矢理やらされたんだよ。
一同:大爆笑
岡峰:練習してるんですか?
清水:日曜日の夜に落ち着いて(笑)。アコースティック・スタイルになると、俺だけ訓練が必要なの。
岡峰:楽器として別モノですからね。シミさんは歌心と躍動感を兼ね備えたベースで、聴いていて気持ちがいいですよ。 松田くんのドラムはヘヴィ&タイト!