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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】WRENCH(2004年12月号)- 欲求とか怒りといった生々しいものを注ぎ込めるのがロックだと思うし、そういった意味ですごい振り切ってます

欲求とか怒りといった生々しいものを注ぎ込めるのがロックだと思うし、そういった意味ですごい振り切ってます

2004.12.01

 90年代前半のオルタナティブシーンに誕生したWRENCHは日本のラウド・ミュージックを代表するバンドとして常に変化を続けながらロックの最前線をひた走っている。昨年末に不動のメンバーだったドラム名越が脱退したが、新たにMUROCHINが加入し、わずか1年弱で新作『TEMPLE OF ROCK』を完成させた。WRENCHワールドとしか言いようのない彼らの世界観を変えることなく、これまで以上にロックとダンスミュージックが深く融合した本作は、ラウドミュージックをまた一歩進化させる紛れもない傑作といえるものだ。そこでROOFTOPとしては、新生WRENCHへの初めてのインタビューを敢行した。(Interview:加藤梅造)

新作は新生WRENCHのファーストアルバム

──アルバムタイトルの『TEMPLE OF ROCK』は直訳すると「ロック寺」ですが、なんかすごい意味ありげな言葉ですね。
 
SHIGE:それはレコーディングの最中に偶然出てきた言葉なんですが、フレーズを何十回も繰り返している時にいつの間にかこれがテーマになった。
 
松田:1階で1キャラ倒して2階にあがったらもっと強いキャラが出てくるという。
 
──『死亡遊戯』スタイルですね。
 
松田:まあ、単なる息抜きで出てきた言葉なんですが(笑)。
 
SHIGE:なんか息抜きしてるのかまじめにやってるのかわからない、すごいテンション高い状態でこの言葉がビビっときたんです。
 
──テンションが高かったというのは、MUROCHINさんが加入して初めてのレコーディングというのがあったからですか。
 
SHIGE:それが一番大きいですね。ある意味、ファーストアルバムだと思って作りましたから。
 
 
──レコーディングに入る前は不安もありました?
 
坂元:どうなるかなあって。音を録って初めてわかる部分が大きいから。
 
MUROCHIN:プレッシャーはかなりありましたね。レコーディング直前まで曲作りをしていて何曲かはよく見えない状態だったんで、もう勢いでやるしかないという所もあって。
 
──ある意味WRENCHを一番客観視できる立場だと思うんですが、入ってみてどう感じましたか。
 
MUROCHIN:うーん、十何年やっているバンドとは思えない程フレッシュな感じがありましたね。もっとWRENCHの確固たる世界があって誰かが指示を出したりというのがあると思っていたら、そういうのは全然なくすごい民主的で、常に新しいアイデアを4人でああしたりこうしたりというのがあって、それがすごい面 白かった。その分、自分の責任も大きいというか。
 
松田:3人でどうこうしようというのは全然なくて、それは人選の段階から1/4の自己表現をきちんとしてくれる人を探した。それによってこっちも活性化したいと思ったし。
 
SHIGE:音の混ざり方も必要だし人間の混ざり方も必要で、それでバンドは成り立っていると思う。自分ができないことを任すわけだから。
 
松田:ドラムが変わるというのはすごい大きな変化だから、それに合わせるまでのセッションには時間がかかりました。やっぱりドラムの人が一番気持ちいいと思うビートに他のパートが乗っかるというのが一番いいグルーヴが出せると思うから。
 
MUROCHIN:やっぱり今までのクセみたいなのは染みついていて、最初の1,2ヶ月はなかなか合わなかった。
 
SHIGE:それでこれじゃあいけないと思って、ある時「MUROCHIN、全然俺達に合わせなくていいから、好きにやってよ。俺らが合わせるから」って。
 
松田:今まではお互いに見ないでも合わせられた間合いがあったけど、新生WRENCHではまだまだお互いに見ないと合わせられない。でも、そういうふうにみんなが合わせにいっている新鮮さや、ある意味ドタバタ感もあって、そういうのが落ち着いちゃう前にアルバムを録りたいというのがあった。
 

テクノロジーと肉々しさの融合

──客観的に見るとWRENCHの音楽は、初期のオルタナティブから次第にダンスミュージック的な要素を取り入れていったという流れがあると思うんですが、それが今作ではより顕著になっていると感じたんです。
 
SHIGE:WRENCHの音楽は、本質的なものは変わらないで、取り入れたいものは取り入れたいし、どんどん転がっていきたい。いい意味で節操のないのもロックだなと。
 
MUROCHIN:レコーディング中はどうまとめていくのかと思ってました。こんなにとっ散らかってどうなるんだろうって。でもトータルで聴くとすごくまとまってるんですね。個人的には、ここ何年かでかかわったアルバムの中で一番充実したアルバムになったと思っています。
 
──ロックってすごい雑食性の音楽ですが、そこで何をどう取り入れていくのかがすごい重要だと思うんです。WRENCHの場合、それがオルタナティブだったりダンスミュージックだったり、常に音楽の最前線にいるっていうのがすごくいいなあと。
 
SHIGE:においというか、現在進行形でやっている嬉しさがあって。例えば、全然知らない新人バンドに同じにおいを感じると嬉しいし、やっぱりエッジが立ったものには共感しますよね。
 
──あと今作もそうですが、WRENCHの中の変わらないものとして、常にレベル・ミュージックという部分が基本にありますよね。
 
松田:うちらが好きなにおいって多分そういう所です。
 
SHIGE:ロック・バンドで意思表示をする時に、やっぱりキモのつまっている欲求とか怒りといった生々しいものを注ぎ込めるのがロックだと思うし、そういった意味ですごい振り切ってますよ。感情的にも。そうしなければ表現できないし。
 
──WRENCHの詞の世界って、非常に抽象的なものでありながらも現実にそくしていると思います。直接的というか。
 
SHIGE:コンスタントにアルバムを出していく時々に思っている感情は当然入ってます。えらそうなことは言いたくないけど、言いたいことはすべて言いたい。
 
──現実の矛盾に対する怒りの感情も常にありますよね。
 
SHIGE:怒りは暴走しちゃいけないし、共感を呼びたいからこそ煙をもこもこ上げていくものだと思う。暴力性と怒りとは同じものではない。あと、詞に関しては、みんなからもらった言葉をコラージュして作ってます。だからバンドの意志が詞に反映してますね。
 
──そういえば今回のジャケットは松田さんがデザインしていますが、これもいろんなものがコラージュされてますよね。これよく1つにまとめたなあと。知らない人がみたら、この人頭おかしいんじゃないかってぐらいの(笑)。
 
松田:よく言われます(笑) それは一番の褒め言葉で、音楽とか絵とかを作る時は堂々と狂えるじゃないですか。普通 の道端で狂ったら捕まっちゃいますから。
 
──このジャケットはすごくWRENCHを象徴していると思うんです。自然があってテクノロジーもあってという。
 
松田:それはWRENCHの中にすごいあることで、やっぱり土臭いというか自然のにおいが絶対あるし、テクノロジーも含んでいる。それがWRENCHのイメージだと。
 
SHIGE:今回、音の方でも人造人間的なものを表現していて、それがジャケットにはよく出ていますよね。
 
松田:それは単にメカニカルなものじゃなくて、やっぱり肉々しいものになっていると思います。それはWRENCHに絶対必要なものだと思うし。
 
──やっぱりWRENCHにはドラムが絶対必要で、打ち込みだけになることはない?
 
松田:WRENCHという看板がある以上、それをやる意味はないですね。
 
坂元:そういう打ち込み系の音楽も大好きなんですけど、それを聴いて受けたものをどうバンドの肉っぽい部分に表現していけるかだと思うんです。
 
松田:どんなものを取り入れても、結局自分たちのやるものはロックじゃなければと思うんです。そうありたいと。
 
──これぞ『TEMPLE OF ROCK』の神髄ですね。
 
SHIGE:自分たちも今ロックという言葉を使いたい。ロックという言葉がベタとかを通 り越して、今、ロック・バンドやってますと言えるのが嬉しいですね。やっぱりロックも磨いてやらないと光らないから、いつもハーっとしてキュッキュッと磨いていかないと(笑)。
 
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