精神世界のぶつかり合い
──ところで、1曲目の『POWER TO LIVE』ですが、「生きていく力」が強調されているんですけど、堀井さんにとって生きていく力となってるものってなんですか?
堀井:これを書いてるときはね、生きていく力を失っている人が書いたわけだから、その時はそれを本当に全身でほしがってる人だと思うんだ。
──本当の魂の叫びってことなんじゃないですかね。
堀井:本当によけいなものを捨ててどうしても捨てきれないものだけしか残ってないんですよ。という意味では、やっぱり俺達がやろうとしたことはブルースなんだなって思ったし、ソウルミュージックなんだなとも思った。
──でも、ちゃんと1曲の歌として出来たときはポピュラリティーがあって、そこもすごく大事だしちゃんとしてますよね。レコーディングはスムーズにいったんですか?
鞭:曲作りの上で、音を出すまでの精神世界のぶつかり合いというのが非常に困難を極めていて、まずかなり話し合いをしましたね。現段階でずれてるとこを確認しようって、それさえやれば音出すだけだし。技術的なことを言うと、今回から4人で「歌う」っていうスタイルじゃなく、4人の「魂の叫びをぶつけていく」っていうのをやりたいなと思ったんですよ。
──ということは、今まではあまり話し合いとかなかったんですか?
鞭:レコーディングするたびに話し合いはあったんだけど、その時点で話し合ってたことも全体の行く先を見てないままの話し合いだったから、そういうものではなく今回から完全に行き先を決めた上で話し合いをするっていう。一番実となる話をしましたね。
堀井:本当にひとつのことを成し遂げようとしたときにね、もっと人間としてどういう風になりたいかっていうところをとことん見つけた上での回答でなければ、そこに引かれたレールはすぐ折れるよね。今は自分たちでただ一点に向かって行くレールを引いてる最中だから、本当に精神的にも肉体的にも己の全てをかけて協力して作っていく道だと思ってやっているので、強い線路をもっているバンドになりたいな。今って敷いてある線路があって、どの線路にしようかなって言うやつばっかりじゃない? かつての俺もそうだったし。そうじゃなくて出発点で4人の力を合わせる事ができたならば、伝説になれると思います。ということをものすごい限られた時間の中でやろうという決意はあるので、俺達が向かって行く先にかすかでも光を感じる人がいたならば一緒にやりたいなと思うし、同じようなことを考えている人がいたとすれば僕らの力を貸したいなと思うし、貸して欲しいなと思います。それはなるべく誰にでもわかる言葉で説明できたらと思うし、そういう歌も歌いたいなと思うし。と今は思っています。
──この3曲の中に多くのメッセージが含まれているという感じですね。
堀井:この歌の中にも僕たちが思っている歌いたいことの一番原液というか、日本酒でいうところの大吟醸というか(笑)。現状で一番いい3曲がのってるんですよ。
──では、2曲目の『NO MORE TEARS』は、さっきで言う過去の自分に対することを歌っている内容という気はしたんですが。
堀井:そうですね。もう大丈夫だよなんて言ってないもんね。自分と向き合って自分の為に戦うならばっていってるから。強い歌だと思います。
──オトシマエは自分でつける的な。なんだか曲の感じもメンバーさんの感じも変わりましたね。やりたいことがより明確になったからだと思うんですけど。曲を聴いてもブレがないというか。
堀井:10年ぐらい前に「針の穴を通すように一点に向かっていけ」ってアドバイスされたことがあって今でも覚えてるんですけど、ようやくこの言葉の意味がやっとホントにわかったなって。これからも作品以上の決意もあるしね。
──ほんとにこれからですよね。このシングルができてここからどういくのかってことですよね。これだけいいものができたら次はアルバムでさらにいいものを期待してしまうんですが。
鞭:濃密な曲を並べたいなぁ。アルバムを出すごとにやっぱファーストが良かったって言われるから、それをちょっとなんとかしたいですね。常にガチンコで作る。口で言うのは簡単だけど、それぐらい一日一分一秒を無駄 にできないって考えているんで。
堀井:大事なことは長生きすることではないと思ってるからね。すばらしい人生を送ることだと。
音楽は肉体で感じるもの
──ところで、今回ツアーに何カ所か回られるんですが、それはどんな気合いでやっていこうと思ってますか? …薬師神さん。
堀井:おっ、何気にファーストトーク。
薬師神:ふっていただいてありがとうございます。今日は波に乗れなくてどうしようかと思っていました。どんなライブという質問の前に、言いたいことがあるんですけど…。僕は本当にまだまだ若輩者でありまして、26年しか生きてない子供のような大人だと思うんですが、今までに数限りない、大小限らず多くの嘘を吐いてきて、大嘘つきであります。これからは絶対に全ての嘘と戦いたい! という意味で、これからのライブ『POWER TO LIVEツアー』は嘘をつかずに…。(胸に)魂の叫びとかあるけど、「どうぞ!!!!!!!!!!!!!!!」とそのまま伝えます。どこも通過しない。通過したら汚れてしまうもの。そういうライブにしたいですね(全員爆笑)。
──…今の一言を聞いて、ますますこのツアーが楽しみなりました(笑)。
鞭:PV撮影中に堀井くんはマイクをまっぷたつに折りましたね。 堀井 あれビックリしたね~。
──すごい気合いですね。では他のみなさまも意気込みを。
堀井:も、もうまさるくんについていきます。
──あと、こないだロフトでやったHIGHWAY61のイベント「ウッドストック的祭り」は?
堀井:今後、予定としてはまだ決まってないんだけどめちゃくちゃやりたい。具体的なプランはこれからですけど。HIGHWAY61のファンの人だけではなくて、全ての音楽というか、システマチックな世界に生きてる全ての人に送りたい。俺達もシステムの中に生きているんだけど、システムが持ってるつまらなさというか、驕傲さというかその中で生活している全ての人に訴えかけたいな。それが新しい世界への扉になるといいと思うし。
鞭:うちら自身4年間かけて、音楽業界という縛りにどんどん縛られていって、CDはこれぐらいのサイクルとか、どんどんそういうことがつまんなくなっちゃってきてて、一回そういうのをとっぱらったところで、自分らで地に足のついたイベントをやりたいなと思ったんです。それでストリートに立っていた素晴らしい人たちを堀井くんがたくさん呼んでやってみたんです。
──なるほど。でも、あれぐらいライブに勢いがあると、体力的にもすごいんじゃないですか?
堀井:あの。初めて告白させてもらうんですけど、プロボクサーを目指してます。ただ、30歳までにプロテストを受けなきゃならないのに、あと半年しかないんですが…。
──えっ? 本当ですか? でも、そこで基礎体力をつければライブもかなりいいかんじになるんじゃないですか。
堀井:だから逆にパンクをやってたころは肉体的にも精神的にも限界までやってたけど、考え方そのものが変わったかな。つまり、体を使うという意識が全く変わった。ボクシングっていうのもあるし、そうじゃないこともあるけど、いろんな経験を合わせて、肉体を使うことと、生きることということはすっごく関係があることに気づいた。この世界で生きていくのは明らかに頭の中で生きている人が多いよね。自分もそうだったし。音楽でとってもいいのは肉体で感じることが一番僕たちにとったら喜びを教えてくれるんだなぁ、好きだなぁって思ってます。
鞭:そうだね、心じゃなくて肉体で楽しんで欲しいですね。