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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】EVIL SCHOOL(2004年5月号)- ポジパンの呪縛に苦しむ80年代の亡者達を解放するレクイエム

ポジパンの呪縛に苦しむ80年代の亡者達を解放するレクイエム

2004.05.01

 2000年暮れ頃から活動を始め、"TOXIC PUNK WASTE"や"HOLLYWOOD JUSTICE"等の企画に出演、'80年代に存在した"ポジパン・ムーヴメント"を体現し、ハードコアのシーンに居ながら異彩 を放つEVIL SCHOOL。ポジパンとは何なのか? そして何故いま、ポジパンなのか? 初の単独音源『THE ESSENCE OF EVIL』のリリースを契機に、Petero Spinster(vo)、K.(b)、Wrong Time Zany(g)のメンバー3人(ドラムのTorは欠席)に話を訊いた。(interview:シンタロウ)

20年のタイムラグを経て往時のポジパンを体現

──そもそも何故、こういったコンセプト(ポジパン)やメイク(顔面白塗り)でやろうと思ったんですか?
 
Petero:バンドの旗揚げ主がWrong Time Zanyなんですけど、彼のコンセプトの中にあったんですよ、白塗りっていうのが。
 
Zany:もう絶対、これが必要だった。
 
Petero:最初は結構、メンバーも流動的だったんだよね。
 
──2000年暮れ頃から出没ということなんですが、それ以前から試行錯誤が?
 
Zany:いや、全然ないです。
 
K.:その2000年という数字も大事だったんだ。
 
Zany:そう、21世紀になる前に、早急に、とにかく形にする必要があった。それから考えようかと。だから時間を掛けて練ったというのはないんですよ。それまで自分達が聴いてきた音楽の中に、こういった見た目のバンドがゴロゴロあったし。
 
──“'80年代”や“ポジパン”というキーワードで紹介されているんですが、そういった音楽はやはり皆さん聴いてこられたんですか?
 
K.:勿論、超リアルタイムで。
 
──当時のそういったバンドや周りの雰囲気っていうのは?
 
K.:正に我々が今やっている通りの感じだよ。当時から異端視されていた。
 
──でも'80年代というと、お化粧したりするバンドって結構メインストリームにもいたような印象があるんですけど…
 
K.:うーん、微妙かな。化粧しているバンドっていうのが今で言うヴィジュアル系っていうことだとしたら、それはまだ世代が移り変わる前のことで…
 
──日本ではそういったバンドというと何がありますか?
 
K.:カヴァーもしたMADAME EDWARDAや(〈Nosferatu〉)、今度我々のレコ発に出演してもらうMOSCOWのメンバーがかつてやっていたSODOMであったり…。ただ、彼らもやっぱりイギリスの当時のポジパン勢に影響を受けて始めただろうし、スタート地点としては僕らも大きくは違わないつもりだよ。
 
Zany:そう、ただウチらはやるのが遅かったっていうだけで。
 
K.:うん、20年のタイムラグがあるけれども、空白っていうのは感じてなくて、そのままやってる。
 
──では、海外のバンドでEVIL SCHOOLが影響を受けたバンドというと?
 
K.:VIRGIN PRUNES、SEX GANG CHILDREN、BAUHAUS、KILLING JOKE、JOY DIVISION、SIOUXIE & THE BANSHEES…幾らでもいるよ。
 
──そういうバンドに影響されながらも、やはりより現代的に、ギターのコーラスが強調されていたり…という印象を受けたんですが?
 
K.:それは当然、自分達でやる以上はね。
 
Petero:ただギターのコーラスに関しては、当時はもっとグニャグニャになってるような、効果音チックになってるバンドがいたと思う。その部分はWrong Time Zanyも試行錯誤してるし、そこにまだ可能性はある。
 
──曲はどなたが作ってらっしゃるんですか?
 
K.:メイン・ソングライターはWrong Time Zany。
 
Zany:最初はね。でもそのうち皆も曲を作ってくるようになった。
 
編集部・see-now:あと、EVILにはサポート・メンバーもいるんですよね?
 
K.:サブ・メンバーとしてドラマーのDIE-SK(“ダイスケ”)。彼は困った時に現れる。
 
Petero:1曲作詞もしてもらった。まぁ、言うなれば2軍だね(笑)。だけど彼はこのバンドのメンバーとして凄い誇りを持ってるんですよ。
 
──アルバムはライヴで演っている曲が中心だと思うんですが、アルバムの為に書き下ろした曲はありますか?
 
Zany:ありますよ、3曲くらい。4曲目の〈心の死支度〉と5曲目の〈善悪の気象台〉。あと9曲目、〈露の世は露の世ながらさりながら〉はライヴでも1回くらいしか演ってない。
 
──アルバム制作期間としてはどれくらいですか?
 
Zany:ミックスまでやって全6日。
 
K.:もういつの間にか出来てたっていう感じだね。
 
Petero:音に関しては懇詰めてやりはしたけど、試行錯誤をしなかった分、ソリッドな面 が出てると思いますよ。まぁファースト・アルバムってそういうものだと思うね。我々が聴いてきた往年のパンク・バンドもそうじゃないですか。
 
──そもそも素朴な疑問があって、“ポジパン”“ポジティヴ・パンク”って、こんなにネガティヴで退廃的なイメージなのに、何故“ポジティヴ・パンク”って呼ぶのかなと思ってたんですけど…?
 
K.:その言葉はイギリスの音楽紙『NME』の記者が付けたんだけど、それも従来のパンク・ロックに対する“ポスト・パンク”っていう中の一つなんだよ。
 
Petero:僕の憶測では、パンクっていうのが出てきた時に結構ネガティヴで退廃的な面 を出してたと思う。で、それに対する…ってことだけど、ポジパンのやり出したことのほうが退廃的だよね? もしかしたら、そこにパラドックスがあるのかもしれない。
 
Zany:俺達が掲げている“ポジパン”については、“ポジティヴ・パンク”っていう風にしなかったのは、'90年代に入って“ポジティヴ・ハードコア”っていうのが出てきて、それと混同されない為に付けたんだけど。多分これは“ヘヴィ・メタル”の“ヘビメタ”みたいな扱いだよ。それがこのジャンルの行く末を明確にしているんじゃないかと。
 
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