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トップインタビュー【復刻インタビュー】DOMINO88(2004年5月号)- ドミノ、第2次初期衝動モード突入! ポップに突き抜けた最高傑作『SOULHOUSE』、堂々の完成!!

ドミノ、第2次初期衝動モード突入! ポップに突き抜けた最高傑作『SOULHOUSE』、堂々の完成!!

2004.05.01

 DOMINO88のニュー・アルバム『SOULHOUSE』は、11曲で約25分というスピード感で駆け抜ける高揚感たっぷりのポップ・パンク・アルバム。もちろん単に曲が短くなって速度が上がったってだけではなく、カラフルな要素をコンパクト&ダイレクトに凝縮したアレンジ、衝動と洗練を兼ね備えたバンド・アンサンブルもさらに洗練されているところが本作のキモ。勢い余って(?)40ヵ所のツアーを敢行しちゃうDOMINO88は、完全にニュー・モードに突入しているようだ。ヴォーカルのKeyossieに話を訊いた。(interview:森 朋之)

核となる部分を詰め込めば、短くても曲は成立する

──それにしてもアッという間に終わっちゃいますねぇ、このアルバム。
 
Keyossie:時間がないから、じゃないですよ。『レコーディングの時間がなくて、サクッと手を抜いて作ったろう?』って思われちゃうと困るので(笑)。別 に忙しいから短くしたわけじゃなくて、そういうアルバムなんですよ、もともとのコンセプトが。短くて、一気に疾走していくようなアルバムを作ろうって思ってたので。
 
──曲を短くしたかった理由って?
 
Keyossie:どうしてかっていうと、僕の音楽の聴き方っていうのが、サビが終わった瞬間に次の曲に飛ばしちゃうようなことしかできないんですよ。すぐに飽きちゃって。だって、長くないですか、最近の曲? だから、せめて自分のバンドの曲くらいは最後まで聴けるようにしようと思いまして。で、タイムストップで計ってみたわけです、自分が音楽を聴いていられる限界を。それが2分30秒くらいだったんで、新しいアルバムの曲は全部それくらいで揃えてみようかなって(笑)。だいたいね、アルバムを1枚通 して聴くのも、結構大変じゃないですか。俺、このアルバムは絶対に30分を切ってやろうと思ってたんですよ。実際、そうなってますけど。
 
──タイムトライアルみたい(笑)。
 
Keyossie:だって、みんな忙しいじゃないですか。いろいろやることもあるなかで、40分も50分も付き合わせてるのは申し訳ないっすからね。時間は有意義に使わないと(笑)。でも、25分くらいだったら付き合ってもらえるかなって。ちょっとしたブレイクタイムとか、聴きたいときにサクッと聴けばいいと思うんですよね。時間があるときは、何回も聴いてもらって。何回聴いても楽しめるように作ってあるし。まぁ、俺だって、1時間も他人の音楽に付き合うのは無理だから(笑)。
 
──長い曲が聴けないっていう体質を自覚したのは、いつ? 最近?
 
Keyossie:昔からそうですよ。ベストテン世代なんで、俺。ああいうのって、尺を短くしてあるじゃないですか、テレビ用に。それに慣れちゃったのかなっていうのはあるんですけどね。たまに皿とかを回すこともあるんですけど(DJをやるって意味です、念のため)、そういうときも最後までかけられないんですよ。どこでつなぐか? ってことしか考えてなくて、サビが終わったらすぐに(曲を)変えちゃう。
 
──ハハハハハ!
 
Keyossie:でもね、“飽き性”だけではないんですよ、今回のアルバムは。“核となる部分を詰め込めば、短くても曲は成立する”っていう意識も込められてるというか。僕の大好きなニック・ロウもそうですけど、パブ・ロックの人達って、短い曲が多いじゃないですか。でも、削ぎ落とした骨太なメロディと最小限のアレンジさえあれば、それで曲って成立するんですよね。そういうところからのフィードバックも凄くあると思います。最近はテクノロジーも進歩してるし、いろいろ音楽文化自体も凄く発達してるから、いっぱい音を入れないといけないっていう流れもあると思うんですけど、それよりも僕は贅肉を削ぎ落としたものが好きなんですよ。それで辿り着いたのが、今回のアルバムだと思いますけどね。
 
──でも、どうして曲って長くなるんでしょうねぇ?
 
Keyossie:一番の理由はアーティストのエゴだと思いますよ、確実に。たとえばギタリストが8小節でいいソロを16小節弾きたい、とか。そういうことの積み重ねが、曲を太らせていくんじゃないですか。聴いてるほうにしてみたら、『こんなの必要ないよ。もっと早くサビを聴かせてくれ』って人もいると思うけど。僕みたいにね(笑)。
 

今回のアルバムは、僕のエゴですね(笑)

──多くの場合は、活動歴が長くなるにつれて曲の情報量 も増えてくるっていう傾向にあると思いますが、DOMINO88は逆ですよね。どんどん短くなっていくっていう。
 
Keyossie:長くやってるからこそ、ってところもありますけどね。前の『PLEASURE!』っていうアルバムに入ってた曲が結構長くて、4分半とか5分とかあったんですよ。重厚なアレンジを試してみたり、コーラスを厚くしたり、打ち込みを使ったり。パソコンの上で構築していったっていうのもあるけど、ちょっと曲が長くなっちゃった。その反動っていうんでもないけど、俺らの基盤はやっぱりポップ・バンドだし、短くて楽しい曲をやりたいなって思うようになって。でも、それは挑戦でもあるんですよ。もともとは大きい容器に入ってたモノを小さい容器に移して、そのなかでバランスを取るっていうことだから。削ぎ落として削ぎ落として、核だけを残すっていう作業になるわけですけど…。
 
──技術が必要ですよね、そっちのほうが。
 
Keyossie:うん、だから掛かってる時間は変わらないんですよ、前回のアルバムの曲作りと。むしろ、もっと掛かったところもあるし。
 
──いろんなアイデアを短い曲のなかでバランス良く伝えるのは、難しいでしょ?
 
Keyossie:そうっすね。それぞれのメンバーにも、こうしたいああしたいっていう希望もあるので。それがまたね、良いアイデアだったりするんですよ。それを切らないといけないっていうのは、ちょっと大変だったかな。『じゃあ、なんで2分半なんだ?』って話なんですけど、そこはもう『とにかく長ぇんだよ、日本の曲は』って、みんなを洗脳していって。そのうちに自然と、『ああ、そうだな』って思ってくれたんじゃないでしょうか。ぶつかってレコーディングがストップするようなこともなく、創造的な意見を出し合うことができたと思います。
 
──当たり前ですけど、無理に短くしてるわけじゃないですからね。
 
Keyossie:自然に2分半になったって感じなんですよ、ホント。別にタイムを計ったわけではなくて(笑)、要素をどんどん削ぎ落として、いい落としどころを見つけたら、それが結果 的に全部2分半だったっていう。メンバーの感覚が近いってことだとも思いますけどね、それは。
 
──実際、曲自体のクリエイティヴィティも上がってますよね。
 
Keyossie:何枚も出してると、だんだんデロデロになっていきがちじゃないですか。そうならないように、パキッとしたものを作りたいなっていうのはあるので。
 
──自分を飽きさせないようにする作戦だったりもするの? “曲を短くする”っていうのは。
 
Keyossie:そうっすね。たぶん、一番はそれだと思うんですよ。『おい、それこそアーティストのエゴなんじゃねぇか?』って話ですけどね。アーティストのエゴを削ぎ落として……なんて言っておきながら、実は自分のエゴだったっていうのが核心的なところで。ネタ、ばらしちゃいましたね。今回のアルバムは、僕のエゴですね、はい。言っちゃいました(笑)。
 
──(笑)まぁ、エゴから生まれた音楽であっても、聴く人が楽しめればいいわけで。
 
Keyossie:うん、自分のエゴと他人のエゴが共鳴するのが一番いいですよね。それが音楽のいいところだったりすると思うし。音楽に限らず、エンターテインメントっていうのはそういうものですよね。そうじゃなくちゃいけないと思う。
 
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