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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】杉山オサム(スタジオインパクト) ('04年2月号) - インパクトは全部自分の手が届く範囲にあるから凄く仕事がやりやすい

インパクトは全部自分の手が届く範囲にあるから凄く仕事がやりやすい

2004.02.19

(取材・文:椎名宗之)

アーティストの立場になったアドバイスと雰囲気作り

 スタジオインパクト下井草は、新宿ロフトや下北沢シェルターなどを経営するロフトプロジェクトが放つ良心性と使い勝手の良さを追求するレコーディング・スタジオである。メイン・エンジニアである杉山オサムは現役ミュージシャンとしての長い経験を生かし[現在は元the zuluのサトウヨシヤとのユニット“NON-POLY”で活躍中]、普通のエンジニアとは一味異なる個性的なミックスをする。アーティストの立場になった実践的なアドバイスやレコーディングでの雰囲気作りも非常に得意とし、“バンド・サウンドをミュージシャンと同じ目線で作り上げる”敏腕エンジニアだと言えるだろう。

 そもそもミュージシャンとして活動していた杉山が、現在のようなエンジニアの仕事を始めるきっかけとはどんなものだったのだろうか。

杉山:20代の時にいろいろバンドをやっていて、その時に知り合ったアレンジャーの人が今の宅録の走りみたいなスタジオを作っていて。そこで彼が録ってきた新曲を2人で完パケするみたいな、そんな仕事を20代の頃に始めてたんです。その前に専門の学校には行ってたんですけど、学校を出ても音楽の活動がしたかったのでそのまま録音の道には進みたいとは思わなくて。インパクトには、スタジオとして機能するっていう段階でシゲさん(小林茂明/ロフトプロジェクト代表)に呼ばれて、たまたまIn the Soupが録ってみようって話になったのが最初で。かれこれもう5年くらいになるのかな。

 インパクトのメイン・エンジニアとして活躍する一方で、彼には専門学校東京ビジュアルアーツの音響学科の講師としての顔もある。音楽の道を志す学生の豊かな感性はよい刺激にもなり、エンジニアの仕事だけでは決して得ることのできない貴重な経験の場であるという。 

杉山:もともと出身校なんですよ。最初は“無理だよ、人に教えるのは”なんて言ってたのが、もう10年くらい続いてるし、結構向いてるじゃん、みたいな(笑)。面 白いし勉強になりますよ。最新の機材とか、情報収集の場としては逆にこっちが得してますし。学生に“今どんなの聴いてるの?”とか訊けてリアルな本音を得られるし、スタジオに籠もってると見えなくなってしまうような大事なことも知ることができますからね。

必ず納得させるだけの仕事をします!

 In the Soup、フジファブリック、メレンゲ、moss、Dachambo…ロフトプロジェクトが擁するレーベルのアーティストはこのスタジオインパクト下井草を利用することが多い。インタビューをした時点では、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのサンボマスターのレコーディング作業と格闘の最中だった。合計4つものブースがあることからバンドもののリズム録音には最適な環境にあり、プロトゥールズ24Mix Plusを導入し、PLUG INNも無数という各種機材のクオリティも万全だ。

杉山:しかも今は新春キャンペーンでレコーディングパックが激安(笑)。マンション改造型スタジオだからそれほど大きくはないけれど、バンド系にはあのくらいのサイズがちょうどいいと思います。僕が一番気を使うのは、音に関しては当たり前の話として、録ってる時の雰囲気とか流れなんですよ。音とは直接関係ないけど、居心地って凄く大事だからね。ブースで分かれていても各々の顔色を空気から読み取らなくちゃいけない。その意味でも、インパクトは全部自分の手が届く範囲にあるから凄く仕事がやりやすいんですよ。

 日進月歩のレコーディング機材の発達により、全くの素人でもプロ・ミュージシャン並みの演奏力を取り繕えるようにまでなった。誰しもが同じように充実した環境でレコーディングできるのは結構な話だが、それは同時に音楽の没個性につながる危険も孕んでいると思うのだが…。 

杉山:だからこそこれからは、+αの工夫の部分がエンジニアとしては一番大事だと思うんですよね。去年手掛けたSwinging Popsicleはメンバーが自分で録ってきて、そのハードディスクをプロトゥールズに移植してミックスだけやったんですけど、どんなリクエストにも応えられなければいけない。アーティストの素材を最大限に引き出すためにも、レコーディングの初日の音出しで自分がある程度まで理解しなければダメだし。ドラムに関して言えば、スネア一発で判るじゃないですか。そういうやり取りも結構楽しいんですよね、たまにいい意味で裏切られたりもして。

 今やどこのスタジオも機材環境の充実やローコストを謳うほぼ横並びの状況だが、スタジオインパクト下井草の最大の“売り”は、杉山オサムというバンド・サウンドをより効率よく作れるこのメイン・エンジニアの存在にあるのかもしれない。

杉山:インパクトを利用してくれる人に必ず納得させるだけの仕事をしますよ。同じような規模の競合するスタジオと比べてみても、ホント納得させる自信があるので、ほんのお試しでもいいから一度是非インパクトを利用してほしいですね。

杉山オサム/主なエンジニア作品

★In the Soup  アルバム『東京野球』(コロムビア)他シングル3枚、インディー盤2枚
★フジファブリック  ミニ・アルバム『アラカルト』(SONG-CRUX)02/10/21発売
ミニ・アルバム『アラモード』(SONG-CRUX)03/6/21発売
★PEZ STOMP アルバム『pez bacchanal』(スクールバスレコード)02/11/20発売
★MIX MARKET アルバム『treasure land』(K.O.G.A Records)03/3/15発売
★ネコベッド マキシ・シングル「What is Love?」(スクールバスレコード)03/4/9発売
★白☆星 アルバム『マーチ』(spm disc)03/11/19発売
★V.A. アルバム『MARCHING PUFFY PUFFY COVER ALBUM』  “「サーキットの娘」by SUPER NAZZ”“あたらしい日々」by MIX MARKET”
★THE JET BOYS アルバム『JET PATROL』04/2/18発売 <NON-POLY・DISCOGRAPHY>
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