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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ARB(2003年12月号)- もう言うしかない、歌うしかないんだ

もう言うしかない、歌うしかないんだ

2003.12.01

 結成25周年を記念して全国ツアーやフェスティバルへの出演など、これまで以上に精力的な活動を続けるARB。そして今度は待望のニューアルバム『KAZA-BANA』が届けられた。時代を映した激しい曲と心に響く深いラブソングから構成された新作は、ARBの四半世紀を飾るに相応しく、今まさに聴くべき一枚と言えるのではないだろうか。石橋 凌氏にお話を伺った。
(Interview:加藤梅造+椎名宗之)

俺はこう思うんだけどアンタどう思う?

──新作『KAZA-BANA』は全体的に非常にポジティヴな印象ですね。

 
石橋:例えば『EL DORADO』では未来、理想郷をテーマにもしていたけど、今回は意外と現実に近いところに寄ったんじゃないかな。今まで自分達が歌ってきたことを振り返ったり、あるいは自分が影響を受けてきた音楽を聴くと、やっぱりポジティヴになれるものがロックミュージックなんだと思う。僕が全く音楽を聴かなかった7年間の間にも様々な音楽のジャンルが出てきて、それはARB再開後に聴いてみたんだけど、あまり印象に残らなかった。音楽的にも歌詞的にも滅入ってくるような内省的なものが多いというか。それは時代が病んでいるからかもしれないし、まあ今も病んでると思うけど、本来、ロックミュージックの良さっていうのは、そういう状況でも、聴いた後に「負けてられないな」って思えるものだよね。いくら時代が変わろうが、簡単に慰め合わないで、俺は俺でお前はお前だろう、この状況の中でお前死ぬ の?生きるの?っていう切羽詰まったものが、俺にとってのロックだったから。
 
──内省的というか、もっと言えばひきこもり的なものは確かに時代がそうなっているからなんでしょうね。
 
石橋:確かにそういう、ひきこもった人を癒すための音楽は、それはそれで意味があると思う。でも、ロックミュージックの本質は何だといった時に、かつてはカウンター・カルチャーとして、体制がビビるぐらいのパワーがあったわけじゃない。それは日本にもあったはずなんだけど、いつの間にか丸いものになってしまった。だから今、体制がメチャクチャで、手練手管でいろんなことをする時代に、ロックに何らインパクトやアンチテーゼがなければ、結局、体制側は「小僧達がああいうロックで勝手に遊んでてくれれば、これでもっと政治や社会に対して無関心になってくれる」と喜ぶだけ。いくら刺青入れようが、髪とんがらせて革ジャン着ようが、そんなもん痛くも痒くもないはずだよ。
 
──自民党のコマーシャルでX JAPANの曲が使われちゃうぐらいですからねえ。
 
石橋:結局、小泉としては若い層にアピールするためにX JAPANの曲でも流そうかっていうぐらいのもの。オペラに行って文化人ヅラするのも、バカな文化人やオバちゃんに自分はカッコいいんだって印象付けたいだけだよ。そういう時に、ロックが内省的なものだけをやっていたら、よけいに若い奴は無気力になるだろうし、無思想になるし、そしたらむこうの思うツボだよ。
 
──そうした今の状況に対して、新作の「プロテストソング」では“不自由な自由に締め付けられていく”と歌っていますが、生まれた時から自由だと思っていた私達が実は非常に不自由な存在になってしまったというのは、なんとも皮肉な話ですね。
 
石橋:本当に自由であることとメチャクチャやることは違うよね。メチャクチャやってるだけで俺達は自由だって思っているのは、単純に甘えているだけ。そういう甘さっていうのは最終的に自分の首を絞めるってことを、どこかで伝えていくしかないと思うんだよ。それは俺達も昔言われたような「今時の若い奴は…」っていう単純な言い方じゃなくて、ある程度経験値のある人間が、無思想になることの恐さを伝えることが大切だと思う。
 
──凌さんが、そういった不自由さに気づいたのはいつのことでした?
 
石橋:やっぱり東京に来てARBを始めてからですね。日本の音楽業界に入ってそれを実感したのかな。それまでは音楽って自由なものだと思っていたのが、実は商売優先のものだということを実感した。そこで、自分のやりたい音楽を意識的にやっていこうとしたら、自分で現場を作ってやっていくしかなかった。そうした状況は今でも変わってないと思う。
 
──聴いている人の意識を高めていくようなメッセージが、聴く人にどのぐらい伝わっているのかは気になりますか?
 
石橋:いや、そういった不安やてらいはもうない。今の時代の、テロとか戦争とか日本の現状を見ると、もう言うしかない、歌うしかないんだと。昔はどこかでロックに思想を入れちゃいけないのかなっていう危惧もあったんだけど、今はARBが思うロックの本質を何のてらいもなく出していくしかないと思っている。ロックが他の音楽と差別 化できる所は意識の交換ができることだから。「俺はこう思うんだけどアンタどう思う?」っていうのがロックだと。そういうのは暑苦しいとか説教臭いとか言われるのかもしれないけど、もうそういうのは気にしない。そう思いたければ思えばいい。しょせん音楽はBGMだと言う人もいるけれど、たった3分間の歌で自分の生き方が変わる、そういう大切なものが含まれているっていうレベルまで持っていきたい。それを聴いた後のジャッジはその人の判断ですればいいわけだから。
 
──ARBの魅力ってまさにそうしたロックに対する確信なんだと改めて思います。
 
石橋:「プロテストソング」ってタイトルを見ただけで何をいまさらって思う人がいるかもしれないけど、俺はあえてそれを出しているわけだから。例えば(THEATRE BROOKの)タイジ君とかがピースウォークなどに参加しているのは素晴らしいと思うし、俺もチャンスがあれば出たいと思う。
 

メロディーという目に見えないものが確実に心に残るからこそ、人をひきつける

──ラストの「戦場のイマジン」は非常に重い歌なんですけど、やっぱり今、凌さんにとって「イマジン」が戦場に響く歌として聞こえているということなんでしょうか。
 
石橋:これはニュースで見たんだけど、日本のある記者がイラクで従軍記者として撮った映像で、ある兵士がCDで「イマジン」をかけてたんだ。それを見たときちょっと混乱してしまったのね。もしかしたらその兵士は自分を慰めるためにかけてるのか? 本当にその歌を理解してアンチテーゼとしているのか? 一体どいう心境で歌を聴いているんだろうかと思った。彼は兵士として戦場にいて、そこで「イマジン」を聴いているというすごく不思議な光景。それを僕は見たまま歌にしたんだよね。
 
──戦場という悲惨な現実の世界にイマジンという理想の歌が流れるというのはなんとも矛盾した光景ですね。
 
石橋:ジョン・レノンって人はたぶんそういう矛盾をずっと繰り返してきた人だと思うんだよ。さんざん悪さもしただろうし。たぶんYOKOさんと出会ったぐらいから、だんだん余分なものが削ぎ落とされていって、極力メロディーも詞もシンプルになっていった。YOKOさんに向けた個人的な歌の裏側に、世界中のことが見えてくる歌っていうのは、他にはなかなかないと思う。
 
──そういう意味では、今回のアルバムの「魂のハグ」という曲も個人的な人へのメッセージが同時に世界へのメッセージになってますよね。
 
石橋:僕はまだ観てないんだけど、ショーン・ペンの次の映画のタイトルは『21グラム』といって、人間が生まれた時の体重と亡くなった後の体重を量 り、科学的にデータを取るとどちらも21グラムということらしいの。それは何かというと、人間の魂の重さが21グラムということなんだね。そこまで科学的に解明していけば、自分の損得や金儲けという発想だけじゃなくて、本当に人にとって何が一番大事かということを考える人がもっと出てくると思うの。人間というのは目に見えるものだけじゃないということがわかれば、目に見える現象だけで戦争を起こすという理論も崩れていくと思う。
 
──以前、凌さんは「音楽は、想いが波動となって魂に届く」と言っていましたが、そういうことに繋がる話ですね。
 
石橋:そう。ジョン・レノンの歌をみんながまた歌うようになったこと自体が、僕にとって驚きだった。70年代ならともかく、死んでから何十年もたってから「イマジン」や「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を歌うっていうのが不思議でならなかったんだ。だから音楽はCDという物質にも残るけど、メロディーという目に見えないものが確実に人の心に残っているからこそ、ああいうふうな形でみんなを引きつけていく。それは波動以外の何ものでもない。だからミュージシャン側も人を不幸にしてやろうという歌を作れば聴く人もネガティヴになるだろうし、逆に、本当にポジティヴになりたいし、人にもなってもらいたいという波動を送れば、多分そうなっていくんじゃないかな。こういうことを話すと胡散臭く捉える人もいるんだけど、実はもう宗教だけじゃなくて、科学的な解明も進んでいるんだと思う。そうなっていけば、戦争ということに対しても捉え方が変わっていくだろうし、それにいち早く気づいたのがジョン・レノンだったんじゃないかと思う。
 
──物質面だけみると人間は戦争を起こすものだけど、もっと精神的な視点があれば、戦争が人間にとっていかに不自然かってことがもっとわかるかもしれないですね。
 
石橋:そういう大事なことを、俺は、学校や親からじゃなく、ロックミュージックから教えてもらったんだ。人間はこういうふうに生きていくもんだとか、こういうふうに生きた方が素晴らしいということを。
 
──凌さんがロックから教わったことは、ARBの音楽としてまた次の世代に引き継がれていくと思います。次回作も今から楽しみです。
 
石橋:次回作って、まだ『KAZA-BANA』が出たばかりだよ!(笑)
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