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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ROCK'N'ROLL GYPSIES(2003年8月号)- このバンドは4人が自然と普通 にやれて、いつでも合わせられるところが凄い

このバンドは4人が自然と普通 にやれて、いつでも合わせられるところが凄い

2003.08.01

関西人がこの中に入っても絶対無理

──下山さんはこの3人と今まで何度も活動してるから、同じ北九州の人だなと思ってる人が多いですが、実は全然違う東北の人なんですよね。

井上:でもこの中の誰よりも九州人の仲間が多いよね(笑)。

──10代~20代から地元北九州で一緒にバンド活動を始めて、こうやって25年経った今も一緒に活動してる3人の中に入ってやるのは、実は大変だったり合わせづらかったりすることはないんですか?

下山:確かに北九州独特の感覚ってのはあってね、感情的なところとか独特の話の持っていき方とか。だからルースターズ入って最初の1年か2年の時は“大変だなぁ”と思ったりもしたけど。

花田:すいませんねぇ(笑)。

下山:でもオレ結構楽天的なんで、それをすぐに楽しんじゃう方に持っていったの。“ああ面 白れぇ”って(笑)。それにその前に元々ルースターズ聴いててホントにファンだったから、すんなり入れたんだよね。でも逆に関西人ならこの中に入ったら絶対に無理だろうな、とは思ったけどね(笑)。

井上:それに元々ルースターズって、幼なじみの友達同士が集まって組んだとかってバンドじゃなくて、バンド組むために必然的に集めたメンバーだったんですよ。

──確かに、最初ルースターズは「R&Bのバンドをやろう」という明確なコンセプトありきで大江さんがメンバーを集めたバンドだったという話を前に聞いたことあります。

花田:そう、コンセプトありきで。そう言えばそうだった(笑)。 リハ見とったら大江が「唄いたくなった」って言い出して。

──で、今回注目すべきは何と大江さんが3曲詞を書いてることなんですが、これはどういういきさつで?

花田:レコーディング中に小倉で大江くんに久し振りに会うことができて、その時に話して。「詞書いてみる?」って訊いたら本人も「やりたい」っちゅうことで、それで3曲書くことになって。

──意外とあっさりしたやりとりだったんですね。

花田:いや、あっさりっちゅうか、それから毎日詞をFAXで大量に送り続けてきたよ。

──へぇ…………。

井上:それで火がついたというか、凄いスピードで1日で曲が出来上がってく感じでした。

──それと気になったのが、大江さんのクレジットが歌詞を3曲提供しているだけなのに“コンポーザースタジオキャプテンディスク”っていうクレジットで。

全員:(笑)

──色々あの意味を考えてみたけどよく判らなかったんですが、どういう意味なんでしょう?

花田:あれは大江くんが自分で書いて送ってきたんよ、だから本人しか判らんね。

下山:コンポーザースタジオってのがあって、そこのキャプテンなんじゃないの?(笑)

──(笑)で、先日下北の251でこのアルバムのレコ発ライヴをやった時に、何とアンコールで大江さんが飛び入りして数曲唄って大変な騒ぎになったそうなんですが。

池畑:大江も少しずつやれるようになるとイイね、っていう話は去年くらいからしとって、それで今回詞も書いたことやし、大江に「遊びに来たら?」って言ったら遊びに来て、それでリハ見とったら「唄いたくなった」って大江が言い出して。

──じゃあ、全く決まってたことではなかったんですね?

池畑:うん、全然。というかオレは唄えないと思ってたからね。10年くらい唄ってないんやし、急に声も出んやろうし。だから軽い曲ならできるかも? って思っとったら大江が「恋をしようよ」と「レッツ・ロック」と「撃沈魚雷」をやりたいって自分から言ってきて。

井上:全然軽くない(笑)。

──(笑)リハの時の目撃者の話を聞くと、大江さんも含むみんなで昔のルースターズのCDを聴いて記憶を思い出していたということですが。

下山:でも急にやるって言った割には(大江が)一番ちゃんと曲の構成覚えてたよ。

池畑:楽屋に行ったらその3曲の歌詞カードが置いてあって、大江が「これをやるんだ」って(笑)。

──池畑さんは解散ライヴとかで大江さんとのセッションはありましたが、ルースターズを脱退したのがもう何と20年も前で、久し振りに大江さんのバックで演奏してどうでしたか。

池畑:まぁ、昔みたいにすぐにガンガンに叩いてトバしていけたらいいんやろうけど、大江も現役ではない訳だし、正直言って上手くフォローできたらいいなって感じやったのと、オレも曲を間違わんようにしようというのもあったし(笑)。でも演奏中後ろから大江見てると何か昔とあんまし変わんない感じになったね。

──現在のライヴではジプシーズの曲の他にルースターズの曲も多数演奏してますが、あれは誰が選曲するんですか?

花田:ルースターズの曲はオレが唄いたいなと思う曲を選んでやってます。

──なるほど。僕以外にも長年のファン達としては、現在ルースターズ時代の曲もよく演奏するし、そこに先日の251でのライヴのようなハプニングが起こってしまったので、やはりどうしても「ひょっとして今後大江さんが何かまた関わってくるようなことがあるのでは!?」と余計な詮索もしてしまうのですが……。

井上:それは“ある”も“ない”も何もないというか、“ある”とか“いや絶対金輪際ない”とか、そういうことで全然決めてることは何もない。

池畑:ただジプシーズってことで言えば、たまにゲストで誰かが入ったりしたこともあったし、今後もやることがあるかもしれないけど、花田が唄ってオレ達この4人で演奏するっていう形で始めることを前提にやってるバンドだから、それに関しては何とも言えない。

井上:大江復帰を目指すためにやりだしたバンドじゃないからね。

ツアー・タイトルは“ピース・メンテナンス”(治安維持)

──判りました。では最後にベタな締めくくりですが、夏のRISING SUNへの参加から今年いっぱい全国ツアーがありますが、それに対しての意気込みを。

池畑:今回のアルバムはオレも凄い大好きな作品なんで、そのCDをまた上回るくらいのライヴ演奏ができたらいいなぁと思ってます。

下山:意気込みは別にないけど、東北とかに行くの久し振りだし、楽しみにしてる人も多いみたいだし。

井上:まぁ、場所が変わったからってジプシーズが変わったりってことはないけど、とにかく初めてバンドとしてアルバムを作った訳ですから、そういうのをみんなで観て楽しんでもらえればいいなってのと、あと酒税をかなり払うツアーになると思うので(笑)、そういう意味ではかなり国に貢献したツアーになると思いますけど。

花田:ツアー・タイトルが“ピース・メンテナンス”(治安維持)というタイトルなんで、そういう感じで。やっぱコンセプトありきで(笑)。  

──個人的な話で恐縮だが、オレは中学生の時にルースターズに出会い、それから人生が変わってしまったような人間である。だから今回のこのインタビュー、しかも4人揃っての初のインタビュー(しかも全員無口・笑)ということで、マジで人生最大レベルの緊張で挑んだ訳なんだが、いざ始まってみるとそのあまりにも普通 で自然な4人の佇まいと、こちらの勝手な強い思い入れや幻想を抱いた質問にも淡々と、そして素直にあっさりと答えて頂けて、逆にオレは益々この人達はやはり心から信頼できるミュージシャン達なんだなという思いを強くした。さらに今回確信したのは、この4人はルースターズでは今はもうなく、やはりジプシーズという新しい4ピースの最強バンドであるということだった。
 インタビュー場所に選んだレストランパブの個室でインタビュー前、メンバー以外誰もいないオレ一人きりの目の前にこの4人が座ってるという夢のような光景を見て、オレは「ああっ……もしもタイムマシンがあったら今すぐ高校時代のオレをこの場所に連れて来てあげるのにっ!」と訳の判らない独り言をボソボソ言ったり、ただのバカになってしまっていた。

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