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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】唐沢俊一(2003年8月号)-唐沢紙芝居の出発点~ただ野郎が読んだのでは?

唐沢紙芝居の出発点~ただ野郎が読んだのでは?

2003.08.01

紙芝居。公園で不思議なおじさんが繰り広げるB級活劇。想像はたやすくとも実際に観たことは? そんな幻を復古させる企画「唐沢紙芝居大会」が開催。B級文化を愛してやまない唐沢さんの紙芝居に対する想いとは? (TEXT:斉藤友里子)

唐沢紙芝居の出発点~ただ野郎が読んだのでは?

13_5.jpg唐沢:声ちゃんやかわいい女の子に読んでもらったりしてレトロエロ朗読ライブ等、朗読のイベントやりましたが、ウン。うまくいくものだなと。しかし、こうして野郎がただ読むのはヤボってもんで図版なんか入れたりしてですね、絵物語をみてもらえれば。いっそのこと紙芝居をやろうじゃないかと思っていたんです。そこへ快楽亭ブラック師匠から「梅田佳声先生という面 白い紙芝居おじさんを見つけたんです。どうですか?一緒に紙芝居の会を」と誘いが。僕も以前、梅田先生の舞台を観てまして、大変面 白いと思っていたんです。この梅田先生というのは街頭で紙芝居をしていた人ではなくて、定年退職した後に紙芝居の舞台を始めた人なんです。もともと浅草の劇団にいたり、物売りをバナナのたたき売りとかああいう芸を趣味でやっていた。全く今までの紙芝居とは違う、話芸としての紙芝居というのを打ち出しているのですよ。そこにブラック師匠からの話がきっかけになって、それならば紙芝居を本格化したいな、じゃあロフトプラスワンでやろうっていうのが今回の会です。

紙芝居ってナンデモあり

──話芸。落語の延長線上に紙芝居をとらえてみようという感じなのですか?

13_2.jpg唐沢:そうです。紙芝居というのは、裏にセリフが書いてありますよね。例えば「いじわるな継母にいじめられた娘は」とだけ書いてあるんです。どういういじわるの度合いなのかは書いてない。そのセリフはおおざっぱな説明で終わって、演出するのは話し手次第なんですよね。話し方の抑揚や少しの言葉を足すだけで、全くお話が変わってしまう面 白さがそこにあるんです。形があってその形から入る、ただしその形の内ではどんなにデタラメなことをやってもいいという魅力があります。

──紙芝居って「どこからともなく現れたおじさんが、不思議な話を面白おかしく話して帰っていく」という想像がパターン化しているのに、実際に紙芝居体験者って? 感じなのですが。実際のところどんな歴史を持つものかとか詳しいことは全然知らないものの気がします。

唐沢:テレビの劇中でのすり込みじゃないかって思います。実は紙芝居の全盛期間って短いんです。戦後の混乱期・昭和20年から22、23年ぐらいにもの凄く数が増えて、その後テレビの時代に入っていく。そして映画ブームが到来する。娯楽のない時代にワッと増えたものだから、それが増えた時に衰退しはじめてしまった。話芸として確立されないうちに。

──逆に言うとこれから完成していく余地がある、と。

唐沢:そうですね、それに僕のいつものフィールド。B級である、安っぽい、ナンデモありな世界に惹かれます。

──そんなに紙芝居ってナンデモありなんですか?

唐沢:斉藤さんなんかもそうだと思いますが、紙芝居は幼稚園や小学校の課外授業なんかで体験してるでしょう? 教育紙芝居ってやつ。でも紙芝居はカタイだけじゃない。昔はエロもあったと梅田先生が教えてくれたのですが。「お座敷紙芝居」。芸者さんと遊んでいたりするでしょう。そこへ紙芝居屋さんを呼んでダンナと芸者さんがエロ紙芝居を鑑賞するというやつなんですが。今で言えばラブホテルでエロビデオを観たりっていうのに近い行為なのかもしれない。紙芝居がテレビ代わりだったのだから、御客の要求に応えていけば、エロもグロもあっておかしくないってことですよね。

──だからナンデモありだと。

唐沢:そうですね。僕の紙芝居の原体験はやはり幼い頃になるのですが。足が悪かったんでリハビリに通 ってましてね。少し離れた町に出かけていっていたんです。治療が終わったら迎えに来てくれていたんですが、それまでに時間があることが多くて、近くの公園で紙芝居を観て時間を過ごしたりね。紙芝居って結構エグいセリフ言うんですよね。「妾の子が!」とか。後で知ったのですが、その町って事情があって、実はつまり二号さんの子供が多く住んでいたらしい。ナンデモありというか、シュールというか、ナンセンスといいますか。

話芸としての紙芝居~日常への応用

──そういうイメージが唐沢さんの内にあって、再現したい気持ちがどこかにあるのかしら。

唐沢:そうかもしれないですね。あと、さっきもした話ですけど、様式があった上で、自由度のある話芸ができるんですよね。落語と似てますが、紙芝居は絵がある。落語が衰退したのは人の話を想像力で膨らませるってことをする人が少なくなったからっていうのもあるんじゃないかと思ってるんです。それができたら表現力も豊かになるはずなのにナァ。

──マンガとかテレビで映像を焼き付けることに慣れちちゃうと、それが面倒になってしまうのかも。私そうですねぇ。

唐沢:そういうところを絵でフォローして、話芸の楽しさを知ってくれたら。それは滅びゆくものを残す手じゃないかって。ってな難しい話はさておき、当日はキッチュでB級な紙芝居を女の子たちとやりたいな、と。

──水飴とかお菓子付きでやりましょうか。

唐沢:そう、そんな感じでやりましょう!

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