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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ジョン"スピードー"レイス(2003年8月号)-TRIBUTE TO ROCKET FROM THE CRYPT

TRIBUTE TO ROCKET FROM THE CRYPT

2003.08.01

BBQ CHICKENSやMAD3、さらにはeastern youthの二宮友和とfOULの谷口 健によるユニット=THE SPINSTERSなどなど、豪華かつ通好みなメンツが参加したROCKET FROM THE CRYPT(以下、RFTC)のトリビュート・アルバム『A CASE OF RFTC JUNKIES』を君はもう聴いたか? まだだという人にはすぐに買いに走ってもらうとして、ここでは6月21日に行なわれたアルバム発売記念イヴェントのレポートと、それに合わせて単身来日したRFTCのリーダーであるジョン"スピードー"レイスへのインタビューを掲載しよう。まずはイヴェント当日の渋谷クラブ・クアトロの模様から。出演バンドは、登場順にTHE FLY WHEEL (ex. ABNORMALS)、JET BOYS、RETRO GRETION、KEMURI(*当初出演が予定されていたbloodthirsty butchersの吉村秀樹は、直前の骨折事故により残念ながらキャンセル)。もちろん全て、先述したトリビュート盤への参加者だ。THE FLY WHEELがラウド&パワフルにのっけからブチかますと、JET BOYSは途中1曲スピードー本人に飛び入りで歌わせつつ、興奮のあまり(?)全裸となって暴走。ロカビリー・テイストをベースにオリジナリティを発揮するRETRO GRETIONのカッコよさには、初見だった筆者も大いに興奮させられた。そして、それら全ての勢いを引き継いだKEMURIがフロアを激しく揺らすと、会場の興奮はいよいよピークへ――。熱い熱いトリビュートを受けた張本人スピードーが舞台に上がるのと同時に、バックには超強力な面 々が! そのスペシャル・セッション・バンドのメンツは、SPIRAL CHORDのHIRAOとGENDO(前者は200mphとしても活躍、後者はもちろんex. COWPERS)、元NUMBER GIRLの中尾憲太郎、さらにNAHTのSEIKIというラインナップだ。こんな顔合わせのセッション、おそらくもう2度と観ることはできないだろう。前日の晩に2時間半リハーサルしただけだそうだが、立て続けに披露された5曲はおよそ急造バンドとは思えぬ 恐ろしくタイトでエッジの立った演奏で、決して見かけ倒しでは終わらぬ凄まじいテンションを放っていた。それぞれのRFTCに対する底なしの愛情の深さがあればこそ実現できたことだと思う。おそらくこの貴重な時間と空間を、スピードーも含めた全員が「バンドでロックを演奏する」という行為の原点を再確認する素晴らしい機会としたはずだ。インディペンデントなロックの歴史に刻み込まれるべき重要な一瞬だったと言い切ってしまいたい。では、興奮の一夜を終えたジョン"スピードー"レイスの話を以下にお届けする。

トリビュート・イヴェントはみんなからの贈り物だった

──さっそくですが、今回のトリビュート・イヴェントについての感想を教えて下さい。

11_1.jpgジョン:もう最高にクールだったね。とにかく、あの場所にいて、みんなからRFTCに対する愛情を色々と聞かされてさ。お世辞っていうのは場合によっては受け入れがたいもんだけど、ああいう場所で、RFTCが作る音楽がいかに自分たちの人生を影響したかっていう話を大勢の人達から聞くと、本当に名誉だと心から思うよね。その場でも『ありがとう』とお礼をしたけど、本当に昨夜のイヴェントは俺にとって特別 なものだったし、一生涯忘れることのない感動を味わえたんだ。そのことについてみんなにも知ってほしいな。単純にライヴをやったり、他のバンドのライヴを観るだけでも楽しかっただろうけど、それ以上にあの場に流れた空気、っていうか感情は……自分たちが何か“いいこと”をしたんだなぁって、初めて実感できたものだったよ。

──あなた自身も参加して行なわれた最後のスペシャル・セッションですけど、2時間半しか練習していないのにあれだけ強力な演奏ができたのは、参加したメンバー全員がRFTCに深い愛情を持っていたからこそだと思うのですが、あなた自身もステージ上で歌いながら、その愛を全身で感じていたのではないでしょうか?

ジョン:うんうん、もちろん。もう俺に対しての最高の好意を示してもらったと思うし、あんな素敵なプレゼントは生まれて初めてだよ。実は今回、イヴェントに参加する直前までは、バンドとして来れなかったのをちょっと気にしていたんだ。RFTCの曲を俺一人だけが他の人達とやるっていうことについてもね……というのもRFTCは俺一人のバンドじゃないからさ。だけど、そんなに真剣に考え込まずに“これはパーティなんだから思う存分に楽しもう”と気持ちを一新させて挑むことにしたんだ。で、いったんステージに上がってみんなと演奏した瞬間“これをやって良かった!”と心の底から思えたよ。

──なるほど、最初はちょっと抵抗があったんですね。

ジョン:うん。ただ宣伝のためにやりたくないことをやっている、と思われたくなくてね。そうすると今まで自分達がやってきたことを冒涜してるようなことになっちゃうんじゃないかって……とにかく今までRFTCが築き上げてきた伝統を汚してるように思われたくなかったんだ。他のメンバーなしでちゃんとしたライヴをやるなんて考えられないし、っていうか、そもそもタブーだよ、そんなことは。でも、今度のイヴェントはそうじゃなかったんだ。あれはみんなからの贈り物だったんだよ。現場にいた俺一人だけじゃなくて、たまたま別 のプロジェクトでツアーがあったから参加できなかった他のメンバーに対するプレゼントでもあったわけさ。このイヴェントが決まって呼ばれた時、最初は他のメンバーに『やっぱり断わろうと思うんだ』って話したんだよ。そしたら、全員から『いや、おまえは絶対に行くべきだ』って強く勧められて、それで来ることにしたんだ。

──いやぁ、本当に来て良かったと思いますよ。会場に来たオーディエンスもみんな楽しんでたし、イヴェントそのものも大成功でしたしね。

ジョン:そうだよね。あれ以上、最高になりようがなかったもんな。完璧だったよ。

俺達は人生を祝福するためにステージに上がっているんだ

──ステージ上から何回も“Celebration of Life”(人生の祝福)と繰り返していましたが、あれはまさにあなたの人生哲学じゃないかと感じたのですが。

ジョン:あの言葉は、とにかく何をも超越してるっていうか、“ロックンロールするぜ!”とか言うよりマシだろ(笑)。俺達はまさに人生を祝福するためにステージに上がってるわけだから。バンドにしてもファンにしても、音楽のスタイルや形式にこだわり過ぎるところがあるよね。些細な違いとかばっかり気にしてさ。だけど一歩下がってみると、その違いって大したことないんだよね。人間同士の違いなんて大したことなくて、実は共通 点の方がむしろ多いくらいなんだ。音楽だってそうさ。RFTCと、例えば最低なちんかすメタルをやってるバンドにしたって、その違いは微々たるものなんだよ。結局はギターと歌を使ってロックンロールの分身を演奏してるだけなわけだからね。だから、そういう微妙な違いを気にしなくなると、全体像が見えてきて、音楽の形式なんか超越したもっと高い場所を目指せるようになるんだ。そして“人生の祝福”っていう言葉こそ、なんていうか全てを整理してくれるような気がしない? だって、まさにその通 りで、俺達は“生きていて幸せだ”って思ってるし、今ここにこうしていられることについてだって、本当に嬉しいと感じているからさ。

──なるほど。さて、あなた方はメジャー・デビューする以前から来日も果 たしていますし、それ以降、日本のバンドとも厚い交流を持っているわけですけれども、この日本という国との相性の良さって、どういうところから来ていると思いますか?

ジョン:子供の頃から日本には惹かれていたんだ。おそらく、和食が好きになったっていうのが大きかったんじゃないかな(笑)。それで日本の映画とかを観るようになって、あと『仮面 ライダー』とか70年代の日本の特撮番組とかが好きでさ。特にどういうところが好きかっていうのは特定して説明したりはできないんだけど、なんか魅力的なんだよ、日本って。それから日本に来て嬉しいのは、こっちの方が他の国よりもRFTCというバンドに対する理解が深いような気がすることだね。日本でライヴをやるたびにそれは感じるし、そうやって言語の壁を超えてひとつのことを分かち合えると本当に特別 な繋がりだって思えるよ。RFTCは、人と人との繋がり、ライヴでのコミュニケーションというものを昔から尊重しているバンドなんだ。ライヴに来てくれる人々も俺達と同じぐらい、その場を盛り上げるために必要なんだってことを会場全体に判ってもらえるようなライヴをやってるつもりだから、それが言葉を超えて実現してしまえる日本でライヴをやるのは本当に好きだし、こんなに恵まれた環境でライヴをやれるってこと自体も本当に幸福なことだと思う。だから、もっと頻繁に日本に来れたらいいなって、いつも思っているよ。

──それは、我々にとっても本当に光栄に思います。ちなみに、日本の特撮ヒーローにハマったきっかけって、どんなことだったんですか?

ジョン:子供の頃、親によくロサンゼルスの中華街にあるおもちゃ屋さんに連れて行ってもらったんだけど、そこで日本のおもちゃを結構売ってたんだよね。マジンガーZの人形とかテレビ・ゲームとか、あと仮面 ライダーのシールとかを買ってもらってたんだ。その当時は『仮面ライダー』という番組どころか、キャラクターの名前すら知らなかったけどね。でも、とにかくクールなキャラクターだと思って、そのシールを集めていたんだよ。

──では最後に、この次はRFTCとしてのライヴも観たいので、次にバンド全員で日本に来れるのはいつ頃になりそうか、教えて下さい。

ジョン:もちろん俺達もすごく日本でライヴをやりたいんだけど、現実的には次のアルバムを作ってからの話になるね。新作を完成させて、ノリにノッてる時に来るのがベストだと思うしさ。それにしても、今回は本当に他のメンバーと一緒に来たかったな。別 にRFTCとして演奏しなかったとしても、このイヴェントの空間を体感して欲しかったね。でも、これからアメリカに帰ったら、俺が日本で受け取った感動をちゃんと全員に伝えて、ちょっとでも理解してもらうつもりだよ。

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