やぁ。
と現れた少しふっくらしたように見えるらもさん。「もう!らもさんっ」といじわる気な返答をした私に、「これから......シゴトしよう」と言った。牢屋生活は大変だったろうけど「ああよかった」と思ってしまった。きっとシゴトがあるならば、もうどこかに(しばらくは?)行かないのかもしれないと感じたからだ。
そんならもさんと話した一時間はこんな話。(TEXT:斉藤友里子)
──今年の初めの「らもはだ」が終わった時に、らもさんの顔を眺めてたら「うわ、どっかにいっちゃいそう」って漠然と思ったんですよ。まさか本当にそうなるとは。その直後に「らもはだ」と、らもさんのことをROOF TOPに書いたんですよ。読んでくれました?
中島:ん~~?
マネージャー:こないだ渡した冊子ですよ。
中島:んうん。
──……もういいですよ。牢屋に独りってどんな気分だろう? って考えながら書いたんですけど、考え過ぎてノイローゼ気味になりまして。や、それは私の勝手ですからね。らもさんにとったらただの仕事相手ですからね。ハイ。
中島:ははは……シゴトしようやぁ。
──はい、もちろん。9月13日に「らもはだ」ありますから。次はお休みなしですよ。チケットも売れてますし。
中島:うン。
──たくさん訊かれてると思うのですが、どんな気持ちで牢屋にいたか教えてもらえますか? 寂しい気持ちになったりするもんなんですか。
中島:ん~。寂しくはないよ。ただ、人間なかなかずぅーと、ボーっとできない。考えちゃうでしょ。俺は幸い何でもいい方に考えるからよかったんだけど。あれが悲観的な考え方する人やったら、独房つぅのはヒドいのやろうね。
──らもさんは悲観的な気持ちは出てこなかったんですね。
中島:考えなかった。 ……アノ拘置所っていうのは刑が未定なわけよ、全員。無罪か有罪かもわからへんし、執行猶予がつくかどうかもわからへん。ものすごい不安な状態。「俺はどうなるのやろ」って人ばっかりやから……。夜、眠れないしね。
──……少し健康にはなりましたか?
中島:いやあ、ずっと座ってんのよ。同じ場所にずっと。看守が見回りに来た時に見やすいようにナァ。で、たまにはぶらんと横になりたいやろ。アカン。横臥許可っていうんがいる。医者が出す。
──具合が悪いかどうか判断した上で、横になっていいよってことですか。
中島:そう。それが出るまでに二日かかんねン。
──横になりたい願いは、二日間寝かされると。
中島:まぁ、そんなトコや。
──誰のためでもなく、システムを守るために考えられたシステムと言うものなのでしょうか。人間性を思い切り否定するような場所へ、らもさんがいる。キツいだろうなぁって思ったんですけどね。
中島:マァ、動物園のライオンの気持ちはようわかったね。
──もうどっかにいかないで下さいね。
中島:ン……。
──もう……。同じ世界にいてほしいって思ってる人間がいるのは……イヤですか? 賢者に寄り添うように、その言葉を聞いたり知ったりしたい人いると思いますよ。ヒネたりしてる子供にとっては、人に不の気持ちを持たない安心お守りみたいにしてる部分あると思います。少なくとも私はそうで、ウザったいですけど。
中島:ウン。……昔っからねぇ、人になんか言うのは嫌いで。それは自分がそれほどのもんかって、気がいつもしてるから。そんな資格ないやろって思うてるから、若い人とかにね、あんまり何にも言いたくないの。言われてもねぇ、自分で解決したりするまで、わからへんのよ。言われた通りやってたら、アホやろ? あの時言われたことはこのことかってね。それに本当によう物をわかってる人というのは、何にも言わへん。
──だから、らもさんが何も言わなくなっちゃうのが怖いんです。最後に会った時のらもさん、ずっと何も言わない人だったじゃないですか。たまに微笑んだりして。そのまま消えちゃいそうだったんですよ。で、本当に(笑)。でも帰って来てくれたので。いいです。せめて、いてくれたら。でも「らもはだ」は本になるものですから、やっぱりお話してもらわないと困っちゃいますけど。
中島:バカ話はするけどなぁ。
──いじわるですね。
中島:そう?
こんなことを言っていたらもさんが、ふと漏らしてくれたことがある。 「ずっと同じ場所に座ってる時にな、もう輝かんばかりの太陽のように怒りが込み上げてきた。でもそれを人にあてたらアカンでしょう。だから作品をたくさん書こう思ったんよ」と。 次の「らもはだ」で、どんならもさんがいるのか。