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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】SION(2003年7月号)- 孤高の吟遊詩人が再びTHE MOGAMIと組んだ会心作を発表!

孤高の吟遊詩人が再びTHE MOGAMIと組んだ会心作を発表!

2003.07.01

 待ちに待ったSIONのニュー・アルバム、鉄壁のバンド"THE MOGAMI"とのレコーディングによる作品『ALIVE ON ARRIVAL』が6月25日に遂にリリースされた。前作同様、各々メンバーによるアレンジ、さらに今回は斉藤ネコ編曲によるストリング・セクションとセッションを行うなど、前作よりさらに充実した内容になっている。静かな語りの中にも随所に笑い話を挟んでくるSIONさんにアルバムの製作秘話を緊張しつつも伺いました。(interview:梶川功一/photo:Chisako.Y)

生きて着くぜ、生きて到着するぜ

──まず、今回のアルバム・タイトル“ALIVE ON ARRIVAL”の由来についてお聞きしたいのですが。
 
SION:生きて着くぜ、生きて到着するぜ、生きてそこに行くぜ、みたいな感じかな。25年くらい前の、スティーヴ・フォーバート(1978年にデビューしたミシシッピ州出身のシンガー・ソングライター)という人のアルバムがこのタイトルだった。当時、ボブ・ディランとかを教えてくれた先輩が「SIONに顔が似てるぞ」って教えてくれて。で、今回タイトルの話になった時、なぜかこのタイトルが頭に浮かんで。何でやろね。タイトルを無理に横文字で付けようとしたからやろうか(笑)。
 
──今回もTHE MOGAMIでのレコーディングですね。
 
SION:前回のアルバムを作った時点で、次もTHE MOGAMIで行こうかなぁって。ここ3年ぐらいカチッと今のメンバーでやり出して…いいんですよ。腕が良くて、個性的な顔して、気立てもいい人たちなんてそうはいないんだよ。で、前回いい感じにできたから、これはもう他のメンバーがイヤじゃなかったらオレの音楽をやる真ん中にいてもらいたいと思って。今回は1曲MOGAMI以外でやっているんだけど、そういうのはそういうのでありで、オレの中ではやっぱりTHE MOGAMIが真ん中にいてもらいたいと……好きなんだね、嫌いだけど(笑)。
 
──音楽的に絶対の信頼があるんですね。
 
SION:「ええやん」って言える人と言えない人とやっぱりあって、“そうじゃねぇんだけどなぁ”っていう時は「そうじゃねぇ」って言うでしょう? だけどその“そうじゃねぇ”って事実より、それをやってしまったその個性が勝つんだよね。だったらいいじゃん! っていう気にさせてくれるのかな、みんな。
 
 
──アレンジを前回同様メンバーに振り分けるやり方でレコーディングをやったそうですが。
 
SION:普通アレンジというと汲み取り過ぎるぐらい汲み取ったり、かなり決めてくる人がいるけど、誰かに任せるというような大まかなアレンジもあるわけですよ。オレらぐらいの年になると、みんな意地悪するわけでもなく“きっとこうなんだろう”とか“もしズレていたらこっちじゃねぇのか”とかサッと支える人がいたりするからね。
 
──信頼があるから任せられるんですね。ところで松田 文さんがバンマスでMOGAMIをまとめてるという感じなんですか?
 
SION:まとめるも何も、どうもこうもね。「じゃあそういう感じで“送信”!」って言うからね、もう“送信”されたらみんな「ハーイ』」って感じ(笑)。
 
──誰にどの曲をアレンジしてもらうかはどうやって決めてるのですか?
 
SION:唄を何曲か持って行って、EMIのディレクター達とツル(鶴山欣也/SIONマネージャー)を交えて、まず“この曲をレコーディングしたい”というのから始まって、その次がアレンジで、“この曲はこの人でしょう?”とか、そんなに外れることはなく自然と割り振りがイメージされる感じ。
 
──メンバーで唯一、池畑(潤二)さんのアレンジした曲はないんですね。
 
SION:今回池畑さんは別のバンドでハワイか何かに行ってらっしゃってたからねぇ。畜生(笑)。そんなこんなで、時間も取れんかったし。次はまた頼もうと思ってるけど。
 
──SIONさんは曲作りをどこでやってるんですか?
 
SION:全部、家。使い方がよう判らんMTR(笑)に簡単なバッキングを入れて、あとはギターを何本か入れて…結構ソロ巧いからね、オレ(笑)。しびれるヤツを一杯入れとんやけど。(細海)魚は判ってくれるんだよなぁ。「かっこいいー!!」って(笑)。
 
──今回の曲はいつ頃作られたのですか?
 
SION:今回のは去年のアルバムの唄を書いてる時に、書いてたら面白くなってそのアルバムとは関係なく書き続けてたのが結構あって。それとあとは去年の11月とか12月。
 
──レコーディングは毎日“店長制”(アレンジする人が店長)でされていたそうですが、どんな感じで行われたか聞かせて下さい。
 
SION:これまでのレコーディングは、楽器のチェックができた時点でその日の店長がアレンジしてきた曲のテープをみんなで聴いて、そこで初めて譜面 が渡されて…2回やった頃にオレがスタジオに行く。で、オレが行ったらもうブースに入っちゃって本番になるから。でも今回はね、もう前もってみんなアレンジしたのを聴いているはず。っていうか、聴きたいという人がいて。だけど、多分オレ間違ってないと思うけど、まず聴いているヤツはいねぇ!(全員爆笑) 何か“みんなどういう案配にしてるんだろう?”って見たかっただけで…つうことはいつもと一緒か。
 
──SIONさんは基本的に一曲一回しか歌わないんですか?
 
SION:そのつもりで歌ってる。もちろん自分もみんなも、“もう一回かな?”っていうのはあるけど。
 
──各メンバーのアレンジなのですが、細海 魚さんの場合はプリプロの時点でいつもそのまま出荷できるレヴェルだと聞いたのですが。
 
SION:もうしびれるよ、本当に。歌はまだないじゃない? だけど、嬉しくなる。聴いてて歌いとうなる、自分で。あとは、こう来てくれたら、“オレちょっとこれ書き直してぇなぁ”って気持ちになる。何かこう、あの塊がダーンって来ると“ウワ!”ってなる。歌は書いた時点でレコーディングするまでは止まってるんだけど、一瞬この音のところまで行きたくなるんだよね。実際に〈はじめまして〉は変えた。
 
──それは凄いですね。そんなプリプロを作る魚さんは繊細な方なんですか?
 
SION:もちろん繊細だけど、魚はMOGAMIの中で一番男らしいと思う。華奢に見えるけど胸毛が凄い(笑)。いやそうじゃなくて、ホント、ぶっとい男だよ。
 
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