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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】PULLING TEETH(2003年6月号)- 誰が為に歯が抜かれる?

誰が為に歯が抜かれる?

2003.06.01

新メンバー加入がもたらした変化

──前作『PULLING JOKE』はクリックを使い、前のめりな激しさというよりも、アルバムとしてきちんと聴ける作風を意識していたと思うんですが、その流れの中で今作も自然と出来たという感じなんですかね?

スズキ:そうですね。クリックを使ってやるのが、今の自分たちには一番やりやすいやり方なんで。やっぱ一発録りでやった時のリズムの不安定なところって、自分たちで聴いててもまずいなぁと思うところが過去の作品にあったんで。そういう部分でも正確なリズムに合わせられる限り合わせて。だから、そういう不安定さもないし、安心して聴けると思うんですけど。

──PULLING TEETHに激しさを求めている人にとっては、今作の後半にはそういう曲もありますけど、ものすごく激しい曲というのは割と少ないじゃないですか。

スズキ:うん、そうですね。例えばアルバム1枚激しいというのは…聴く側は自分の好みで選べばいいんですけど、やってる側はキツイですからねぇ。そこまでうるさいものは普段も聴かないし、やるのもどうかなぁと。次にアルバムを出した時にまた曲調も変わるかもしれないし、何とも言えないんだけど。でも割と今回のアルバムに関しては満足感はありますね。“よくやったなぁ俺”って、褒めてあげたい心境で(笑)。かなり満足してます。何かアルバムというよりは1曲1曲で、“あ~よく作れたなぁ、こんな曲”って、ニヤニヤしたりして。いつも頭の中で曲を作るんで、アルバムの何曲かがそのイメージ通 りに出来たんで、今回はいい点を与えたいなと自分的には感じてて。

──渋めのフレーズも増えてきましたよね。だからPULLING TEETHが今後どういう方向に向かっていくのか、訊いてみたいなぁと思っていたんですよ。

スズキ:また多分、変わったことをやりたいなぁと思うだろうし。どこに向かっているというのは、あまり考えてないですからね。どう変わるかは判らないけど、感覚ですよね。“これ、今までと違うなぁ”というのがあれば。

──バンドとして3人であるという部分で、その“らしさ”を追求していくという意識はあるんですかね。楽器の編成自体もPULLING TEETHは他のバンドとは違いますし、海外を見渡してみてもオリジナリティがあるバンドだと思うので。

タイジ:
まぁ、意識してどうこうというのはないんですよね。今回変わった部分もありますけど、多分もとから入っているものですよね。こういうバンドがいて、こういうバンドになりたいという感じでやっていないんで。ちょっと渋めのギターにしても、今までスズキさんの中にあったものが出てきたというだけで。

──もちろん最初から持っていた要素かもしれないですが、じゃあ、なぜ今回のタイミングでその部分が大きく出てきたのかなぁと思うのですが。それによって曲のニュアンスも変わってくるわけじゃないですか。

スズキ:まぁ、それはたまたまという感じですかねぇ。

タイジ:ノリが変わったのは、ドラムが替わったせいだと思いますし。やっぱ今までのドラムとはまた違うノリを持ったドラマーなんで。音的にはそんなところですかねぇ。

スズキ:今がやっぱベストですからね。

──元SPACE COMBINEのトモヤさんが加入したいきさつは?

スズキ:それは遡ると、初期のドラマーがやめて誰にしようかという時に、“COMBINEのトモヤはどうしてるのかなぁ”って。探そうとまではしなかったんですけど、ドラマーを誰にしようかという時に、奴は2度ほど名前が上がってるんですよ。COMBINEが終わった直後くらいだったと思うんですけど、その2回目にドラマーを探している時に、“トモヤどうしようか”って思ってたら、ハウリング・ブルの社長が「いや、ヒロシでいいだろう」って。で、社長がヒロシを連れてきたら半年でいなくなってしまって。「どうすんだよ、やめたじゃん、社長のせいだよ~」とか言いながら(笑)。まぁ、3度目の正直で居所を探し当てて連絡して、トモヤに決まったという。

──実際にトモヤさんとやってみてどうでしたか?

タイジ:最初はやっぱ今までとノリが違うんで戸惑いもありましたけど、こないだのベスト盤のツアーをやってからは、だいぶいい感じにはなってますね。

スズキ:トモヤは割と演奏が正確なタイプで、俺らは前は勢い勢いという感じだったから。

タイジ:3人が3人とも突っ込んでいくタイプだったんですけど、それをいい感じで抑えてくれるというか、まとめてくれるというか。

スズキ:トモヤがいたら、「PULLING TEETHってこんな曲やってるんだ」って言われたもんね。「やっと曲が判ったよ」みたいな(笑)。

タイジ:それを言ったのも社長なんですけど(笑)。

──トモヤさんが入って正確なドラム・プレイになったことで、スズキさんとタイジさんが前のめりではなく抑えた上での勢いみたいな部分をちょうど求め始めていた頃で、タイミング的には結果 いい流れだったんじゃないですか?

スズキ:そうですね。でも、まだやっぱたまにノリきれない時もあるんで。この前、8ヵ所ツアーを回った時になじんだなぁとは思ったんで、今は不安とかはないですね。ステージで演奏中にアイ・コンタクトをとって、いい感じでやれてるんですよね。それは重要なことだと思うんですけど。目を見ただけで、“次はこういくぞ”みたいなのが伝えられるんで。それを短期間でできたんで、それは財産というか、やっぱりいいなぁと思いますね。 音楽性の広がりにより濃くなったバンドの核。

──ヒロシさんがドラムだった頃に年間150本のライヴをこなして脱退した時、スズキさんがかなり落ち込んでいたのが印象として残っているんですが。今回トモヤさんと1回ツアーを回っただけで意思の疎通 ができるようになったのは、なぜなんでしょうね?

スズキ:何かたまたまそういうのがある人間だったんじゃないですかねぇ。今までにいなかったタイプの人間ですからね。何だかんだ言って、ドラムが基本的な部分を担っていますから。ノリが変われば、印象はガラリと変わると思うし。自分らではあまり気付かなかったけど、ウッド・ベースのスラッピングとかが前に出るような(ドラムの)叩き方なんですよね。それがいい感じで絡んできているなって。

タイジ:本人(トモヤ)意識してたんですかねぇ、そういう絡み的なことは?

スズキ:してないんじゃないの?

タイジ:たまたまですかねぇ(笑)。

──タイジさんは、ドラムとの絡みは意識しました?

タイジ:俺は“ここでスラップするよ”っていうのは、曲の流れの中で決まってますね。それを表に出すか出さないかはドラムの人の叩き方ひとつ、フレーズひとつなんで。

──確かに各楽器がぶつかり合うことなく曲が流れていますよね。

タイジ:そうですね。

スズキ:あと変化という部分においては、曲作りの時点での話ですから、アルバムというのは最終的なもんですからね。この12曲そろったから、このアルバムっていう。それが一番表現しやすいですからねぇ、こっちとしても。曲順に関しても「1曲目はこの曲」って決めてたんですけど、ほかの曲に関してはマスタリングの前の日にタイジに電話して、「曲順決めとけよ」って言って、「マジっすか?」とか言って。曲順はエンディングとド頭がいい感じで合えばOKという感じだったんで。

──結構アバウトなんですね(笑)。

スズキ:そうっすよ(笑)。今回こういう雰囲気でいいですね、というのはありがたいけど、それは偶然で。

──1曲1曲雰囲気があるので、全体的にそういう印象を持つのかもしれません。それに今回インストの曲も多いじゃないですか、だからアルバムに流れも感じる。

スズキ:インストにしても3曲あるんでどこに入れようかって、結局三等分して入れただけで。インスト3曲というのは多いといえば多いけど、例えばアルバム1枚で10曲あったところで、ライヴでやらない曲も出てきますし、まぁ、そういう曲で歌詞を作るのに苦労するんだったら、インストで聴かせる曲があってもいいじゃないかという考え方で3曲にしたんですよ。

タイジ:自分ではそこまで意識しては思わないけど、『PULLING JOKE』からの流れですよね。インストや静かめの曲もやってたんで。まぁ、時間が空いてるんで急に変わったことをやろうという意識はなくて、この1年半ちょいくらいで自然と変わっていったんじゃないですかね。自分の好みとかも変わってきたし。

スズキ:まぁ、この1年でドラムが2人ほど変わったんで、それが影響しているかは判らないけど。今回は本当いいと思いますよ。

──今作はPULLING TEETHの核はそのままに、曲調に変化が表れている作品だと思うのですが、アプローチの変化が出ているんじゃないかと。PULLING TEETHの場合、バンドのカラーは確固としたものがあるし、曲のテンポが落ちたとしてもバンドらしさは消えないと思うので。

スズキ:自分ができないような音楽を聴いた時に何かが沸いてくるんですよね。自分から進んでは聴かないですけど。自然と耳に入ってくる音楽を聴いたり、それは小さい頃に父ちゃんが聴いていた演歌だったりとか、“こんなメロディで何かできないかなぁ”と思うこともあるし。俺も演歌は昔のものなら嫌いではないですけど。極端に和風なメロディを弾いて、それにスラップ・ベースを入れたらどうなるかを考えたらワクワクしますよね、誰もやってないだろうし(笑)。

──音楽性の幅が広がれば、核にある部分は確実に濃くなっていきますしね。今回歌詞はどんな感じなんですか?

スズキ:歌詞は言ってみれば独り言みたいなものですからね。歌詞の内容どうこうというのは必要ないっていうわけじゃないけど、基本的にはロックンロールなんで。暴れて汗をかいて楽しんでもらえればいいかなって。あと、3曲目の「メッセージ」はタイジ初の作曲なんですよ。6年目にしてやっと持ってきやがったっていう(笑)。それがもうレコーディングぎりぎりぐらいになって作ってきやがって。しかも未完成で。どうすんだよ? って。

タイジ:だから、歌詞に「死ね!」なんて(笑)。

スズキ:はははは。それは別にタイジに向かって言ってるわけじゃないんですけど(笑)。あれはあれで俺が作れないような曲なんで。

──今後は、今作からの曲を中心にライヴはやるんですか?

スズキ:今回のアルバムから全曲はやらないんで、気分次第って感じですね。

──今作が出たことで、いろんなタイプの曲が出そろった感があるので、またライヴは緩急がついて楽しみですね。

スズキ:そうですね。ちょっとは休める曲もやらないと(笑)、体力がもたないんで。

──今作のツアーに向けて、何か考えていることがあれば。

スズキ:特に考えてないよね?

タイジ:そうですね。ライヴ1本あたりの時間は長めでやりたいなと。

スズキ:今までが20分くらいだったから、次のツアーでは1時間半くらいやろうかなと(笑)。

──えっ、ほんとですか?

スズキ:いや、そんなに曲はないですけどね(笑)。まぁでも、時間は長くやりたいんですよね。そういう欲はあって。1時間は無理にしても、40、50分はやりたいんですよね。

──それでもかなり長いですよね。

スズキ:長いですよね。いつかはワンマンでやりたいと思ってるし、ワンマンで30分だったらねぇ…。もしかしたら、客ももっと観たいと思ってるかもしれないし。

──最後に6/27にLOFTで行われるCD発売記念ライヴに対する意気込みをお願いします!

スズキ:6月27日のレコ発ライヴ? そんなの気合いバリバリに決まってるよ。俺らは今ツアー中で、どこ行っても寒いライヴばっかりなんでかなり鍛えられたからね。ビッシビシ行くんで、よろしく~! …こんなもんでどうでしょうか?
 

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