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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】新耳袋(2003年1月号)- プラスワン深夜のイベントの人気の所以はどこか?

プラスワン深夜のイベントの人気の所以はどこか?

2003.01.01

 現代百物語集 新耳袋。その執筆に際してこぼれてしまった話などを披露する場として、ロフトプラスワンでの深夜トークライブをはじめたが、かれこれ数年。すっかり深夜のトークライブとして定着し、根強い人気を誇る。その怪談をお裾分けしようと最近では有線のsHowtimehttp://www.showtime.jp/にてトークライブの抜粋を配信しているが、そちらも閲覧率は高いようだ。その人気の所以はどこか? もしかしたら怪談を語るという独特の「座の空気」ではないかと思う。この両人の関係性が醸し出すからこそ、面 白いのかもしれない。 (interview斉藤友里子)

あいつはNOと 言わないのを知ってる

──中山さんとのコンビネーションはご自分でどう思ってらっしゃいますか?
 
木原:適材適所がお互い判っていて、絶対に相手を裏切らないという安心がある。どんなことがあっても、あいつはNOと言わないって言うことがはっきり判っている。仮にディスコミニュケーションがあったとしても、あいつは待つし合わせてくれるのね。 創作臭さを射抜く能力を持っている
 
──中山さんは、木原さんに選ばれたとおっしゃっていましたが。
 
木原:同期のなかで最も映画を熱く語るのがあいつだったの、当時。大学に入った当時で、ビデオを300本~400本近く持っていて、サウンド・トラックのコレクションがおそらく2,000枚近く部屋の中にあったんじゃないかな。映画をそれだけ観てるせいか、ストーリーの欠陥を見抜くのが抜群だった。面 白い話を面白く書くことが出来る人間は、あいつしかいないなって思ったんですよ。あと一つの最大な理由に、怖いものをおどろおどろしく書くことをあいつはしてなかったのよ。なぜならば、彼は怪談を信じていなかったからなんだよ! 僕にとってみたら、信じていないということは、怪談自体の怖ろしいところをうまみにしていないことなんだよ。だって、本当に面 白いところを知っている人間は、創作臭さを射抜く能力を持っているんですよ。なぜならばっていうと、中途半端な怖ろしさっていうのは、創作くさいから。「こいつ創ったな~」とかなんか妙に話が出来上がっているだとか、まとまっていることとかをかぎ取る力を持っていたんですよね。僕らは映像学科にいたから、脚本の善し悪しっていうのに敏感で、そういう討論をしていたから。つまりこれは本があるって直感で判ってしまうんですよ。誰に向かって創られているのかっていうのが。そういう能力のある中山だから、一緒に新耳袋ができた。
 

怪談自体の怖ろしいところをうまみにしていない

──木原さんも中山さんも、「怖い話を聞かせてやる」みたいな言い方、絶対しませんもんね。言うとしたら「面白い話を聞いた」っていう言い方するだけで。
 
木原:そう。僕らはそれを絶対言わない。怖がらしたいって気持ちを全面に出したらそれこそ、興ざめするし、僕も中山も面 白い話をしてるつもりで怪談をしてるんです。
 

あいつが聞きたがる話をしてる

──すごく楽しそうに話してますよね、いつも。でもよく聞くとすごく怖かったり。お二人のその淡々さというか淡泊さが怖いんですよ。
 
木原:気持ち的に大阪芸大の頃から、中山と僕は変わってないんだと思いますよ。あいつが喜ぶような、聞きたがる話をしたい、そんなことを思いながら集めた怪談を語り合うんですもん。たぶん、誰よりも大切な相手だと思う。面 と向かって絶対言わないけど(笑)。
 

あいつに選ばれた

──なぜ、木原さんと怪談収集をはじめたのでしょう?
 
中山:僕が木原を、というよりあいつに選ばれた、という感じですわ。実は僕は全く、幽霊とかそういった類の話には興味がなくて。木原に会うまでは。二人とも大阪芸大の学生やったんです。僕の家がその学生たちの溜まり場になってて、その中に木原がいつの間にかいた。そんで泊まりおって、夜中になると怪談をはじめてね。最初は「なにをやっとんのかな」くらいにしか思ってなかったんですけど、「うわその話面白いわ」と思いまして、怪談に興味を持ちはじめたんです。また木原の独特の語り口がよくて、それも大きいですよ。だから木原がおらんかったら、僕は怪談を集めてないでしょうね。
 

怪談はこわい?

──「うわその話面白いわ」ですか。やっぱり中山さんの中で怪談は「こわいもの」じゃないんですかね?
 
中山:そうですね。「こわい」「恐ろしい」という感情は瞬間的に感じますけど、最終的には単純に「面白い」としてると思いますね。そうユニーク。ユニークな話を聞くのが、楽しい。
 
──カラカラしてらっしゃるんですね。
 
中山:僕はそんなトラウマとかないんですよ。家族とかもこわい話をしたりとか、全然しませんでしたからね。
 
──陽な感じなんですね。
 
中山:僕はね。ちょっと木原の方が陰な気質があるかもしれませんね。二人とも根っこのところは似てるんですけど、興味を持ってるフィールドが微妙に違っているから、二人でやっていて面白いんでしょうね。それに怪談を集める動機の一つに、あいつをおもろがらせよう、ってやっぱり最初に思っちゃいますからね。まぁ不可思議な奴ですんで、つきおうとると飽きませんよ。
 
──ロフトプラスワンのイベントは中山さん的にはどうとらえているのですか?
 

「語る」をぬきにはできない

中山:宿題。「来週イベントやんか」と思うと切迫してくるでしょう。だから、日常的に怪談を集めるようになりますわね。本にやっぱり人前で話すというのを怪談はしないと死んでしまうので、本に至るまでの行為にはしごく大事。
 
──やはり、新耳袋における怪談は「語る」という行為ぬきにはできない?
 
中山:全くその通り。僕ら、落語好きという共通項もあるんですよ。落語って同じ話でも話す人によって面 白かったりそうじゃなかったりするもんなんですよ。そういう気質を僕らは持っているせいか「語る口調」というのは重きにおいてますね。昔、木原が語った口調、そのスタイルは今も変わってませんけど。その独特の口調は今でも僕の文章に影響を与えてますし、「人に語る」という行為が面白いから、怪談が好きなんでしょうね。
 
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