1999年の再結成以来、TAISEIの個人プロジェクトとして活動してきたSAが、正式メンバーとしての新メンバーを迎え、バンドとしての新たなスタートを切った。新生SAはこれからどうなっていくのか!? TAISEI、NAOKIの両氏に突撃インタビューを敢行した。[interview:北村ヂン]
SAをやっとバンド形態にできた
——今までのSAはTAISEIさんの個人プロジェクトみたいな感じだったわけですが、今回NAOKIさんの加入を機に今までのメンバーを一旦解体みたいな感じで、新メンバーを迎えてのバンド形態になるわけですよね。
TAISEI:そうだね。俺自身、前からバンド形態でやりたいっていう欲求はあって、でもそれは今までのメンバーとだと不可能っていう部分があったんで。NAOKIくんが入ったのをいい機会にしてなんとしても実現させたいなっていう感じで、NAOKIくんからの紹介とかもあって、新メンバーを入れてやることになったんですよ。
——TAISEIさんとNAOKIさんのそもそもの出会いは、いつ頃なんですか。
NAOKI:COBRAが再々始動したちょっと後に、SAが岐阜で1回限りの復活イベントみたいなのをやったんだけど、そのイベントにCOBRAも出て、その時初めて観たんだよね。とにかくライブ観た時の印象はすっげーなっていう感じで。その翌年からSAも本格始動して、ちょくちょく一緒にライブやるようになったんだけど。
——その頃から一緒にやったらもっとすごい物が出来るんじゃないかという思いはあったんですか。
NAOKI:まあ、その時は一緒にやる事になるとは思ってもみなかったね。SAがTAISEIの個人プロジェクトで、サポートメンバーとどれくらいのスタンスでやってるのかっていうのも全然知らなかったんで。でも一緒にライブとかやるようになって、打ち上げなんかでしゃべってたら段々SAの頭痛のタネみたいのが見えてきて、時を同じくして俺もCOBRAの方で頭痛を抱えてたんで。
TAISEI:前のギターが去年いっぱいでやめるっていう話になってて、さあギタリストを探さなきゃっていうのはあったんだけど、その段階ではNAOKIくんっていう発想はなかったんだよね。やっぱりNAOKIくんはCOBRAでずっとやってく人だと思ってたから。でも色々話してみたら「実は…」って感じで、「じゃあ一緒にやんない?」って。
——どっちかというと今までのSAに新メンバーが加入するっていうよりは新たにバンドを立ち上げた、みたいな感じですよね。
TAISEI:そうだね、俺的にはその方が美しいかなっていうのがあったんで。これによってやっと次のステップに進めるっていう感じで。
——バンド形態になったことで、気持ち的に変化はありましたか。
NAOKI:やっぱり精神的に、メンバーそれぞれがSAとしての自覚があるのかないのかっていうのは大きいんじゃないかな。サポートメンバーとして関わるんじゃなく、内側に入り込んでやってくからには、これから色々言い争いとかもあるだろうけど、音を出す時の気合いは今までとは全然違うと思うよ。
TAISEI:俺も十何年バンドをやってきた人間だから、バンドであるっていう事に対しての愛着心もあるんで。SAをやっとバンド形態にできたって事で、俺自身も心の入れようが違うよね。
——バンドでこそ生み出せる音ってありますからね。
TAISEI:やっぱり、そういうのが好きだしね。4人のメンバーがひとつのものを、ああでもないこうでもないって言って作っていくみたいな。
——そういうのがロックバンド、パンクバンドのあるべき姿ですからね。
TAISEI:そうだね。今までのSAって、見え方として「一人なんだけどバンド」みたいな不明確な部分があって、その中途半端な部分にストレスがあったのは事実だね。あとは、具体的なところでいうと、メンバー全員が一つの物に向かってる分だけ、音に厚みと力強さが出たと思う。俺がよく言うところの「美学の共有ができてる」っていう事なんだよね。
——メンバーそれぞれがSAを背負う覚悟を持ってやっているって感覚なんですかね。
NAOKI:まあ、そこまで深刻な感じじゃないんだけど、とにかく楽しんでSAをやってますね。いい歳こいてっていうのも変だけど、やっぱパンクは汗流してなんぼみたいな部分があるじゃない。ライブでは当然なんだけど、リハでもそれが出来てるからね。本当にこんなバンド他にあんのかなっていうくらい。「とりあえずやろうか」じゃ絶対できないよね、リハから真剣勝負だよ。
大きなムーヴメントに変に迎合はしたくない
——僕は再始動前から音源ではSAを知ってたんですけど、再始動ライブを観てすごいビックリしたんですよね。昔の曲をやってるんだけど、新しい物を観せてもらったみたいな感覚で。いわゆる今の主流のタイプのパンクではないと思うんですけど、ちゃんと現代的なサウンドになってるし、その上ものすごいパワフルで。今のパンクシーンにこういうバンドはいなかったから。
TAISEI:いわゆるメロコアとかが流行ってる時に、パンクを聴いてなかったから、俺メロコアを知らないんだよね。だから浦島太郎的な感じでパンクを再びやるって時に、俺のパンク論をそのまま出しただけなんだけどね。それが、今パンクと呼ばれている人たちには無かった物なのかもしれない。それが俺の武器だよね。だからこれからもあんまりああだこうだって考えないで音楽を作っていこうとは思うね。
NAOKI:大きなムーヴメントに変に迎合はしたくないからね。だって俺らのリアリティーって、70年代、80年代のあの時代の音楽を聴いて本当に熱くなったことだからね。恥ずかしげもなく今もそれをやればいいんだよ。
TAISEI:本当にそう思うね。格好いいと思った美学というのがあるんだったら、それを曲げる必要はないんだよ。
——自分のルーツから自然に生まれてきたものをそのまま出せばいいと。
TAISEI:うん、それに対して音楽的に幼稚であるとか、単純であるとかっていうのは関係ないんじゃないかな。
NAOKI:やってる奴らが本気かどうかって問題だからね。こんな恵まれた国に生まれてても、ぶつかる壁はあって「コノヤロー」みたいに思うことはあるわけで。それを叫びたい気持ちこそがパンクなんだと思うよ。ただ単に音楽ファンが音楽やってるだけじゃ、そこにリアリティーはないんじゃないかな。なんで俺が音楽をずっと続けてきて、今も捨てきれずにいるのかっていうと、スタイルとしてパンクをやってるんじゃなくて、もうこれしかできないからなんだよ。
TAISEI:俺も色んな音楽を吸収してきた上で、今またパンクロックっていうものをやってるわけだけど、やっと本質が見えてきたっていうか、子供の時に聴いたあの衝撃を、ノスタルジーなんかじゃなく、今やってもいいんだなって自分で思えたっていうのが嬉しいね。
NAOKI:まあそういう血が自分の源流として流れているんだよね。長い間音楽続けていく中で売れないことへのストレスとかもあって、それで時代の主流を取り入れようとした事もあるけど、そこにもやっぱりストレス感じて。だから音楽をやることに対してどんどん、売れる売れないとか関係なくなってきたな。音楽さえできていればいいって感じで。
——色々経て、より純粋に音楽と向き合える様になってきたって感じですか。
TAISEI:もう、そういう事じゃない気がするんだよね。売れる、売れないじゃなくて。まず、音楽に真剣に取り組みたいっていうか、音楽をやりたいって言うのが先に立ってる感じなんだよね。そこに計算がないっていうか、すべては結果 でしかない。すごい単純な事だけど、楽しまないと良い物が出来ないだろうし、良い物ができなけりゃ売れないだろうし。とにかく、ある意味腹くくった所はあるかもしれないね。
NAOKI:でも、ヤケクソなわけじゃないよ。本気で楽しんでるんで。
TAISEI:うん、とにかく楽しみたかったんだよね。端から見たら、こういうのって本当に不器用に見えるかも知れないけど、これも俺なのかなって思うね。昔は、もっと頭良さそうに見せられるんじゃないかな、とか色々余計なことを考えたりもしたけど、そんなのはどうでもいいんだよな。それが自分自身なんだから。
SA are... Vo.TAISEI G.NAOKI(ex.COBRA) B.KEN Dr.SHOHEI