「人間プログラム」って言葉がありそうな気がする
──「臭い」って言葉をきいて思ったんですが、New Albumのタイトルの『人間プログラム』って、「人間」という臭いのする言葉と「プログラム」という無味無臭の言葉が一緒になってますよね。そう考えると、プログラムという言葉がすごい皮肉として感じられますね。
松田:皮肉もあるし、人間という2文字の言葉に、プログラムっていう言葉を付けることで、人間の意味がより強力に出るんじゃないかという意図もあります。人間プログラムとはもちろん造語ですが、俺、最近「人間プログラム」って言葉がありそうな気がしてるんだよね。なんか「人間魚雷」みたいな。
──確かに「人間プログラム」ってなんか恐い言葉ですね。どこかで密かに使われてそうな。
松田:見えない兵器?
──そう考えると、今の戦争という状況と妙にシンクロしますね。意味のある偶然の一致というか。さらに言うと、ラストの曲『夕焼けマーチ』が絶望の中で希望を示す内容を歌っている所がとても意味があることだと思います。
松田:僕らは決してネガティヴな所から出発しているわけではないですから。もちろんトータルで見ればそういう部分はあるけど、たとえネガティヴな言葉を使っていたにせよ、結果的に感じ取れるものがポジティヴなものだったら、どれだけ残酷で危険な言葉でも使ったかいがあると思う。
──きれいな言葉を並べるのは簡単ですからね。
菅波:それほど嘘臭いものはないと思います。
──だから、今回の戦争についてみなさんどう感じているかっていうのにすごく興味があるんです。
松田:もちろん無関心ではいられないですね。かといって、本気でなんとかしようとか、今すぐ何か行動を起こそうというのはないですが、そこで感じた事は重要だと思うし、少なくとも自分なりに考えていこうと思ってます。
──もちろん人によって行動の仕方は違うでしょう。ジャーナリストはジャーナリストなりの行動の仕方があると思うし。僕が思うのは、ミュージシャンはこういう状況において、すごくメンタルな領域で表現をしていくことができるんじゃないかと思うんです。
菅波:それには鈍感じゃだめだと思うんです。どんな仕事をやってるにせよ、敏感に空気を感じ取っていないと。もし作品と社会がシンクロしているとしたら、やっぱりそこにはムードとして漂っていた何かがあったわけで、それを敏感に感じることができれば、その時代の表現としてフィットするんだと思います。ボケたら終わりですよね。
──かといって、BACK HORNは流行を狙ったり、時代を追いかけるタイプのバンドじゃないですよね。
菅波:時代を追いかけるのってカッコいいとは思えないですよね。夢を追いかけるのなら素敵だと思うけど。ある表現者を好きになるっていうのは、その人の中に自分に理解できない宇宙が広がっていて、それをのぞいて見たくなるってことだと思うんです。だから表現者っていうのは、(表現の)対象に没頭していかないと弱いと思うんです。
松田:昆虫の不思議なところは解剖していけばある程度わかるかもしれないけど、人間ぐらい複雑になると心の中までわからない。わかんないぶん、おもしろいんだろうけど。そうだ、「THE BACK HORN研究所」っていうのを作って研究しようか。心理学とか解剖学とかいろいろ(笑)。
──なんか、だんだん人間プログラムっぽくなってきましたが(笑)。ところで、このジャケットの絵って誰が書いたんですか?
松田:それは俺が。まあ賛否両論ですけど。どう思います?
──巧いとは思わないけど、インパクトがすごいですね。一度見たら忘れないというか。
松田:一番残念だと思うのは、自分の許容範囲を超えると嫌いとかダメっていう反応をされることですね。
菅波:理解できないと怒るやつとかいるよな。
──戦争が起こる一因としてそういうのがあるんじゃないかな。例えば、イスラム教ってなんか理解できないから奴等はおかしいっていう思考回路みたいなのが。昔の日本人もそう思われてただろうし。
松田:音楽や絵とかって、理解できないからダメってものじゃないと思うんです。もっと複雑なものだと思う。
──理解できないからこそ面白い。
松田:そう。映画にも一回観て面白いものと、何度も観て面白さがわかってくるものがありますからね。それはともかく、このジャケットの絵は、今までで一番プレッシャーを感じて書いたんです。
菅波:初めて見た時、いいのができたと思ったよ。
松田:これはROOFTOPにだけ明かす秘密なんだけど、ジャケットの謎を言っていい?
──それは是非。
松田:この地球の絵って、実は地球の写真を見て書いたんです。
一同:…。
──それって秘密にしておくほどのこと?(笑) ちなみにこの地球は後から付け足したんですか。
松田:そうです。ここに地球がないと、こっち(群衆が砂時計になっている部分)が地球と思われそうで、それはイヤだなあと。
──ああ、それはいい作成秘話ですね。BACK HORNの静かなメッセージが込められている感じがします。では、最後にライブにむけて一言。
菅波:とにかく12月21日は来てください!
松田:すごい気合い入ってますから。実は3バンドの中で、俺らが広報担当になっているんで、どんどん宣伝して下さい。BACK HORNは今年最後のライブなんで、ホントよろしくお願いします。