“宇宙一のシジミ汁”事件

【デリケートな話題ばかりなので吉田豪が質問したメインパートは全てカット！】

吉田豪（以下：豪）：では、お客さんの質問いきます。「ギターウルフ、セイジさんのイイ話が聞きたいです」。

増子直純（以下：増子）：あ、阿武（あんの）君の？ イイ話いっぱいあるよねぇ……。ま、“シジミ汁、大変だった”っていう話はあるけどね。

豪：シジミ汁？

増子：彼、松江（島根）が実家でね。オレらが松江でライブするって言ったら、「ライブ行く」って言い出して。「いやいや、いいよ。わざわざ来てくれなくても」って言ったんだけど、「いや、どうしてもね、松江でやるって言う時に、俺がいないと、ダメでしょ！」みたいなことを言われて（笑）。

豪：ダハハハ！ どういう責任感なんですか！

増子：「あぁ、じゃあ分かりました」って言って、“ホントに来るのかな”と思ってたら、当日、いるんだよ。もうちゃんとサングラスかけて、革ジャン着て（笑）。

豪：いつもの正装で（笑）。

増子：で、盛り上がって。ホントはツアーで次の日も移動があるし、打ち上げはしないつもりだったんだけど、「打ち上げ、オレに任せてくれないか！ 松江はオレの街だから！！」って言うもんだから、「分かりました」って。まあ普通の居酒屋だったんだけど（笑）。

豪：打ち上げをアテンドしてくれて。

増子：そこ行って飲み食いした後に、もう結構飲んでも、まだガンガン飲むんだよ。で、「よし！ 俺はね、みんなに、明日の朝、宇宙一のシジミ汁を飲ませたい！ 松江のシジミは、最高だ。宇宙で一番。その中でも一番なのは、ウチの実家だ。ぜひ、来てくれ。振る舞いたい！」って言うから、「分かりました。明日行きます」って、朝の７時（笑）。

豪：それだけ飲んでるのに（笑）。

増子：そう、朝７時に、俺らの宿にドンドンドン！ って来て、「今から行くぞ！ すぐ用意して出ろ」って言われて、あぁ、もう眠い。だって、ライブやって、飲みに付き合わされてだよ。で、機材車で行ったら、阿武君の実家が、住宅街の丘の上みたいなところにあるわけ。

豪：はいはい。

増子：で、入ったらさ、お母さんいて、壁に手書きの電話番号表が張ってあるの。“セイジ：03-XX……”みたいに書いてあるわけ。それ見て、“やっぱりお母さんなんだなぁ”って思って（笑）。しかも、ギターウルフのポスター貼ってあってさ。

豪：いい親子関係で。

増子：で、「さぁ！ シジミ汁を！ ウチのは最高だ！ 内々だから、さぁ、飲んでくれ！」って言われて、「じゃあ、いただきます」って言って飲んでたら、お母さんが「朝来るって聞いたから、朝ごはん作っといたよ」って言ってくれたの。「いろんな松江名物のモノを」って。そしたら阿武君が、バッ、っとお母さんを制して「メシはいらない！」……いや、いるよ！ いるから！（笑）。

豪：ダハハハハ！ シジミ汁に専念してくれ、と（笑）。

増子：メシ頼むから食わしてよ！ おかずも、もう見えてんだから！

豪：わざわざ作ってくれてるのに！

増子：作ってくれてんのよ！ でも「メシはいらない！」って言い出して。「いやぁ、でも阿武君、オレ、メシ食いたいんだけど」って言っても、「ダメだ！ 今日はシジミ汁だけだ！」って。マジかよ！ っていうさ。で、シジミ汁だけ何杯も飲んでさ、メシは結局ナシよ。

豪：酒を飲んだ後のシジミ汁は確かにいいだろうけど（笑）。

増子：作って並んでるおかずも、お母さんが「本当にいいのかい？」って聞いても、「いいんだ！」って（笑）。いや、俺らはよくないんだよ、食べたいんだけどさ、ホントは。でも、シジミ汁だけ飲んで、「どうだった？」って聞かれるから、「おいしいです」って言ったら、「そうだろう！！ ……じゃあ、もう帰ってくれ」って、それで帰らされて（笑）。

豪：ダハハハ！ それだけ！

増子：なんだよ、おい、っていうさぁ。すごいんだから、シジミが。「ウチのシジミは違うんだ！」って言ってたよ。

豪：おいしいのは間違いないんですね？

増子：メチャクチャうまいけど、「この大きさを見てくれ」って言うわけ。そう言われても、俺らはそんなにシジミを見てないから。そりゃあ飲むこともあるけど、そんなに分かんないんだ、シジミの大きさなんて（笑）。

豪：セイジさんといえば、そんな思い出（笑）。

セイジさんのサングラスを取りたい

増子：あと、もうやめたけど、U.Gがギターウルフに入った時の話があって。阿武君はサングラスを絶対はずさないから、薄いサングラスの時はあるけど、とにかくサングラスはずさないから、U.Gが「絶対にサングラス取ったところを見てやる！」って。

豪：気になりますからね（笑）。

増子：で、ツアーで、フェリー乗る時があったの。その時にフェリーの中の大浴場に行ったんだって。ザッパンザッパンすっごい揺れるフェリーの大浴場。そこ行った時に、阿武君が風呂に入ってくるのが見えたんだって。で、U.Gは、「よし来た！ これは見れるぞ！」と思って。

豪：風呂は最大のチャンスですよね。

増子：それが夜中だったんだって。“多分見られたくないから、夜中にきたんだな”とU.Gは思って。で、そーっと近づいて行ったんだって。でも近づいて見たら、サングラスかけたまま風呂入ってて、“おい、マジかよ！！”って（笑）。

豪：ダハハハ！ 幻想を守るなー（笑）。

増子：「サングラスはずさないの？」って聞いたら、「これは、はずさない」って。でも顔を洗う時どうすんのかと思ったら、サングラスかけたままで洗ってたって言うからね、マジで（笑）。

豪：本物ですよ！

増子：で、U.Gは“これはもう、絶対にはずしてやろう”と思って、「サウナで我慢比べしよう」って言って。

豪：あぁ、仕掛けてね。

増子：そうそう、仕掛けて。もう絶対、サウナでグダグダになって、サングラスはずすだろう、と。

豪：暑さで限界になって。

増子：でも、阿武君もギリギリまで粘って、もうぶっ倒れたんだって、水風呂の所で、バターン！ って、倒れた時に、両手でサングラスだけ押さえて、下は丸出しだったって（笑）。

豪：ダハハハ！ 守るのはそっちだった（笑）。

増子：ガシーッとサングラスだけ押さえて（笑）。

豪：下を隠そうっていう感覚は、もうないわけですね（笑）。

増子：そう、無い！ もう、全部、下出したまま、サングラスだけガシーッと押さえて。その時にU.Gは“これは男だ。もうこれは、サングラスはずすところは見れないだろう”と思ったってね。「まあ、他のモノは見たけど」って言ってたけど。さすがだよね（笑）。

矢沢永吉伝説

豪：他にバンドなり何なりで、“この人、人間としてデカいなぁ”って思った人はいますか？

増子：それはもう、永ちゃんとかね（尊敬の念をこめて、あえて永ちゃんと呼ばせて頂きます）。

豪：あぁ～！ それは確実にデカいです！

増子：いや、半端ないよ！ だってもう、モノマネの人にしか見えないんだもん。永ちゃんすぎて（笑）。

豪：なんか最近、完成度が高まってますよね（笑）。  

増子：そうそう、自分のモノマネ見て研究してるんじゃないの？ ってくらい、永ちゃんだったの。（YAZAWA風の身振りとで口調で）「あぁのさぁ～」って言うからね（笑）。

豪：ダハハハハ！ 動きと表情だけで、もう100点なんですよね。

増子：そうそう。しかもライブもスゴいしさ。で、やっぱりチャーミングだよね。あと、キレどころが分からないっていうのもイイね。相手に妙な緊張感を与えられるから。いや、すごいんだよなぁー。

豪：哀川翔さんと初めて会った時に、握手したまま30分、お互い睨み続けたって話が大好きで（笑）。

増子：なに考えてんだよ（笑）。

豪：昭和の漫画みたいだなあと思って。

増子：すごいよねぇ。でも、ホントにそういう人知を超えた人っているからね。ああいう人はやっぱり最初から違うんだろうな。

豪：永ちゃんも、インタビューする度にホント思うんですよ。ドンドン田中邦衛に近づいてるなって（笑）。

増子：あぁー、それはあるかも知れないね。

豪：動きとか表情とか。

増子：結局ああいうふうになってくるんだね、濃さが極まってくると（笑）。もう、顔だけで“ごちそうさん”だもんね（笑）。

豪：そうなんですよ。あれだけで100点で。

増子：すごい幸せな気持ちになるんですよ。田中邦衛は結局もう、田中邦衛の役しか出来なくなってたもんね（笑）。すごいよなぁー。

豪：どっちも最高ですよ！

増子：田中邦衛、俺も大好きなんだよね。もちろん『北の国から』もそうだけど、『浪人街』とかね。最ッ高なんだよな、原田芳雄とね。あれは憧れたね。

豪：永ちゃんもドンドン好きになりますね。

増子：なるね、知れば知るほど好きになる。なんて言うんだろう、予想を超えてるからだろうね、いろんな面で。自分の想像を超えてくれるから、面白いんじゃない？

豪：赤坂の永ちゃんの店によく行くんですよ。永ちゃんがやってるスタジオの隣に永ちゃんのカフェバーがあって、その２階で永ちゃんグッズが売ってて。グッズのセンスも尋常じゃないんですよ、犬のエサ箱とか、犬の首輪とか（笑）。

増子：犬は永ちゃん好きじゃないからね（笑）。飼い主は好きだろうだけど。

豪：変わったところにいくなぁっていう。あそこが“オデンスタジオ”っていう、日本で一番大きなスタジオなんですよね。

増子：そうそう。でっかいよー、何回か行ったけど。

豪：それが赤坂にあって。ライブの前にリハをやりたくて、巨大なスタジオ作ったらしいんですけど、作ってから気付いたらしいんですよ。“前の道が狭すぎて、機材を運ぶ大きなトラックが入れない”って（笑）。

増子：そうそう。坂道が狭いからね。あれ、もう１個作ったんだよね。

豪：そうなんですか、その後に？

増子：うん。それがもうすんごい、基地みたいなの。ただまあ、道路は狭いよ（笑）。

豪：やっぱり（笑）。

増子：あれはトレーラー入れない。ただ、リハやってると、永ちゃんが車で出動してきたりするよ。サンダーバードみたいにブァーーっと車庫が開いて（笑）。

豪：おぉ！

増子：「永ちゃん入った！」って。でも、いるのはイヤだよね（笑）。

豪：よくいるんですよね。取材もあそこだし。

増子：そう。いるんだわぁ（笑）。

豪：「なんでオデンスタジオっていうんですか？」って聞いたら、「和風がイイと思ってねぇ」って理由らしくて（笑）。

増子：さすがだよな（笑）。

豪：ダハハ！ さすがですよ！ 意味が分からない（笑）。

増子：俺、前になんかの雑誌でさ、永ちゃんが普通の住宅街にいる写真を見たんだけど、あの合成感っていうの？ 全然、普通の日常風景に馴染まないんだよね。メチャメチャ浮いてるんだよ（笑）。普通に住宅街を歩いてるだけなのに。あれはやっぱりスゴイね。

豪：別格なんですよね。

増子：ロックスターとか、そういう問題じゃないよ、もう。

豪：もっと違う次元。

増子：仮面ライダーとか、ウルトラマンとかが、あのまんまの格好で住宅街を歩いてたらそりゃあ浮くよ。それと同じだよ。光線が出ないぐらいじゃない？（笑）

豪：ダハハハハ！ 必殺技が出せないだけで（笑）。

増子：あと巨大化しないのと……。巨大化はありそうだけどね（笑）。