目からうろこ! “振りつけ”に対する掟ポルシェの見解
吉田 豪(以下、豪):PANTAさん、今日はよく分かってないままここに来たみたいですね。
PANTA(以下、P):そうなんだよ。今日は別の予定があったんだけど、「プラスワンのほうが面白いから来ない?」って言われて、「いいよ」って答えてたのね。それでホームページを見たらゲストに俺の名前が出てるじゃん!
豪:ダハハハハハ! 急遽決まったイベントなんですよね。
P:全然知らなかったよ! 知ってたら前に告知しといたのに! まぁでも、豪ちゃんとじっくり話すことってあんまりないからね。
豪:そんなわけで、今日はじっくり話をしてみたいんですけど。
P:でも、いきなりアイドル云々の話は……。
豪:ええっ!? どうしてですか?
P:この前、『別冊少年チャンピオン』の掟ポルシェのページで取材を受けたんだよ。
豪:ああ、掟さんがPANTAさんを取材するって言ってたんで、ボクが「アイドルの話を聞くべきだ!」ってアドバイスしたんですよ。
P:そうだったの? いきなりアップアップガールズ(仮)の話から始まったんだけど、そこでちょっと自信なくしちゃったんだよ、俺(笑)。
豪:そこは気にしちゃダメですよ!
P:で、掟ポルシェとアイドルの話になったわけだけど、最近のアイドルって、俺からすると振りつけがうるさいんだよね。とくに乃木坂46!
豪:ダハハハハハ! いきなりピンポイントで乃木坂が!
P:綺麗で、美人たちが揃ってるんだけど、やたら手を使ったアクションが多いじゃない。あれが邪魔なんだよな〜。うるさいよお前ら! ちゃんと唄えよ! 俺は古い人間だから、アイドルと言えばフランス・ギャルとかシルヴィ・ヴァルタンなわけね。彼女らは、マイクを持って、なんかの時に横に体を揺らすぐらいで、振りつけっていうのはその程度でいいの。あとはメロディをしっかりして欲しい、音の分量をしっかりして欲しい、ちゃんと音楽としてアレンジして欲しいっていうのがあってね。特に地下アイドル系に不満は多いんですよ。
豪:明らかに音楽面で手を抜いてるグループってハッキリ分かりますもんね。
P:手を抜いてるのか、才能の限界なのか。ま、そんなようなことを掟ポルシェと喋ってたわけ。そしたら、目からうろこな答えが返ってきたわけだ。掟ポルシェから!
豪:なんですか?
P:「PANTAさん、歌は頑張ったら上手くなっちゃうじゃないですか。彼女たちは曲を書いてるわけじゃないし、詩を書いてるわけでもない。頑張るところは振りつけなんですよ。あの手の振りをみんなと合わせて『みんなで頑張ってる』というイメージになるんです。そうすると、頑張ってる彼女たちを見てるファンも応援したくなるでしょ? だから、手の振りが大事なんですよ」って言ってたんだよ。そうかぁ〜、と思ってね、これは目からうろこだったね。
豪:フリコピしやすくなるっていうのもありますよね。ただライブで見てるだけじゃなくて、手だけでも合わせられる。
P:俺の勝手な持論なんですけど、1983年にマイケル・ジャクソンの「スリラー」という曲が出て、この曲のミュージック・クリップが非常に長かったんですよ。あれは革命的でしたね。素晴らしかった。あれから音楽は「見せる音楽」になったんですよ。
豪:それでMTV時代に入っていきますよね。
P:だからアイドルもそういうふうに変わってきたのかな? っていう持論があるんだよね。
直接的じゃない表現だからエロティシズムが増す
豪:そう言えばPANTAさんと初めてお会いしたのが、ロフトプラスワンの控え室だったんですよ。
P:なんの時だっけ?
豪:PANTAさんが打ち合わせかなんかで来てて、その時に「TBSラジオ『ストリーム』聴いてます」って言われたのと、『三億円少女』(Berryz工房主演の劇団ゲキハロ第9回公演)見た?」って言われたのは覚えてますよ(笑)。
P:そんなこと言ったっけ?
豪:言われましたよ! それとボクが大好きな話が、アプガが中野サンプラザでワンマンをやった時にPANTAさんが来てたんですよ。そこで「豪ちゃん! 今日は反原発のデモに誘われてたんだけど、こっち来ちゃった!」って言ってて(笑)。
P:アハハハハ! 正しい選択だったかもね(笑)。
豪:この前のアプガの野音もいらっしゃってましたよね。
P:さすがに握手会とかには参加しなかったけどね。
豪:終演後、関係者をお見送りしてたんですけど、アプガのメンバーが水着だったんですよね。だからボクとか嶺脇社長とかは挨拶しないで逃げたんですけど(笑)。
P:あれは行けないよ! でも、豪ちゃんは行きたかったでしょ?
豪:行けないですよ!
P:握手会とかは参加したことあるの?
豪:基本、行かないですね。
P:「基本は」でしょ? 例外もあるでしょ?
豪:10数年前に行ったのが最後だと思います。METAMOっていうチェキッ娘の流れにあるグループのイベントに行ったら、知らないうちに握手会の列に入ってて。その時「ボクには無理だ」と思って、それ以来、握手会は行かないようにしてます。
P:握手会はね、ズルイよ! 両手で手を握られて、目を見られるんだよ。くるでしょ?
豪:え!?
P:きちゃうでしょ? かなり?
豪:……なにがですか!?
P:あれはね……相当な猛者じゃない限り心を奪われるよ!
豪:ダハハハハハ! 心が揺れ動く?
P:揺れ動くよ〜! どんな話をしていいか分からないじゃない。彼女たちのこともよく分からないし、「今日は寒いですね」なんて言ってもしょうがないしさ。豪ちゃんならどういう話する?
豪:それが分からないから無理だと思ったんですよ。結局、近いところで仕事している側の人間だから、いざその時になると「お疲れ様です!」しか出てこないんですよ。
P:そうだよね! 握手会はズルイよな〜。きちゃうもん。
豪:アプガ野音の時に印象的だったのが「豪ちゃん! 俺が今、制服向上委員会の黒幕だと思われてるんだけど、違うんだよ! 俺の誤解といてよ〜」って言ってて(笑)。
P:そうなんだよ! なにかって言うと、「裏にPANTAあり」って言われてるんだよ! この前、日本外国特派員協会で制服向上委員会が会見したんだよ。その時に、画面にコメントがいろいろ出てくるじゃん。
豪:ニコ生の中継ですかね。
P:そうそう。それでボロカス言われてるんだよ。酷いんだよ。そこで、何回「PANTA」って言葉が出てきたか! 彼女たちは真面目に一生懸命やってるのにさ。
豪:なぜかPANTAさんが黒幕だと思われてますよね。
P:そうなんだよ。でも、俺はかわいい歌を唄って欲しいだけなんだよ。
豪:そうなんですよね。実際クレジット見たら分かるけど、PANTAさんはかわいい曲を作ってる担当なんですよ。歌詞はPANTAさんが書いてるわけじゃないし。
P:そうですよ。あんなに直接的な歌詞は書けません!
豪:ダハハハハハ! 制服向上委員会の「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」が騒動になった時に、初台ドアーズでPANTAさんと会ったら、「あの曲は歌詞がストレートすぎるよ! ジョン・レノンも、もうちょっとぼやかしたよ!」って言ってて、頭脳警察なのに! 「銃をとれ」って唄ってたのに! って思いましたよ(笑)。
P:アイドル・ソングはオブラートに包んでこそだから。でも、あの曲は悔しいぐらいイイ歌なんだよ。あのポップさが大好きなんだ。
豪:PANTAさんならあそこまで露骨な歌詞は書かない?
P:たとえばフランス・ギャルがセルジュ・ゲンスブールの作った「アニーとボンボン」を唄って、すっげーいやらしい歌なんだけど、直接的じゃないからこそさらにエロティシズムが増すってことはあるよね。でも、全然話が飛ぶけど、「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を彼女たちが唄ったからこそ、今のSEALDsとかがあるのかもしれないからね。どんどん活動がエスカレートしていけば、面白い動きになるのかなぁとも思うんだよね。
豪:制服向上委員会のメンバーとPANTAさんの話になると、「車の運転してくれたり、ボイス・トレーニングしてくれる優しいおじさん」って感じなんですよ。だから「みなさんにとってはそういう人かもしれないけど、あの人はステージでオナニーしたりする人だから! 清く正しく美しくがキャッチフレーズのグループにはふさわしくない人なんです!」って何度か注意しておきましたよ(笑)。
P:ちょっと、それは言わないでよ!