ファン同士の交流で志磨が仮想敵に!?
吉田豪(以下、豪):前にじっくり話をしたのが、もう5年も前なんですよね。
志磨遼平(以下、志):そうですね。毛皮のマリーズでメジャーデビューした頃だと思います。
豪:その後、『夏の魔物』で再会した時に「マリーズの最後の2枚のアルバムが大好きなんですよ!」って話をして。
志:そうです、そうです! すごくフワ〜ッとした話になりますけど、僕ってなんの界隈になるのかな? ってすごく考えるんです。周りからはサブカル系とか、ロキノン系とかって言われたりするんですよね。それで、食物連鎖というか、じゃんけんのグー・チョキ・パーじゃないですけど、ロキノン系ってサブカル系に対して、ちょっと畏怖の念があるんですよ。だから豪さんとかはロキノン系からすると怖い存在なんですよね。
豪:それはなんとなく感じてますね(笑)。『ROCKIN'ON』系列の本にはほとんど出たことなくて、タレント本の書評家として『SIGHT』のブックガイド本に呼ばれた時も編集の兵庫慎司さんに「吉田さんは絶対ウチのこと嫌ってるかと思ってました」って言われました。ボクは「嫌うとかなく、普通に買ってましたよ!」って返したんですけど。
志:だから、豪さんは日本のバンドをあんまり褒めてないイメージだったんですよ。でも『夏の魔物』で褒めていただいた時には「ギャー!」って喜んでしまって。……あれ、なんの話をしてるんだろう? ま、嬉しかったなって話なんですけど(笑)。
豪:毛皮のマリーズの最後の2枚(『ティン・パン・アレイ』『THE END』)とか、ドレスコーズの新作『1』とか、いろんな事情でひとりで作らざるを得なくなってしまったという、女々しい感じのアルバムが大好きなんですよ。
志:なるほど……なるほど、なるほど! 申し訳ないんですけど定期的に出ますんで、それ(笑)。
豪:ダハハハハ! これからも定期的にひとりになる可能性が?
志:はい。だから「今回のアルバムはちゃうな〜」と思っても、2枚ぐらい待っていただければまた出ると思うので。実は昨日も炎上したところなんですよ(笑)。
豪:あ、そうなんですか!?
志:今度のフェス(5/4『JAPAN JAM BEACH 2015』、5/9『森、道、市場 2015』)でバックバンドを全員女の子にしてやろうかなと思ってて。それと、ちょっとした実験なんですけど、ツイッターとBBSみたいなのが合体したようなサイトをスタッフに作ってもらって。
豪:「dresscodes#」ってやつですよね。
志:よくご存知で(笑)。今日とかも多分そうなんですけど、我々のお客さんって「ぼっち」な人が多いんですよ。で、スタッフが「お客さん同士で交流を持ったらいいんじゃないですかね?」って話をくれて、いざ作ってみたら……まぁ、なんていうんですかね……。
豪:ファン同士で予想外の交流が生まれちゃったんですか?
志:そうですね。僕が仮想敵みたいになってます(笑)。
豪:え! 刃がこっちに向かったんですか!
志:僕をバッシングすることにより、一体感が生まれてますね(笑)。
豪:ダハハハハ! どういうことですか、それ!
志:「バンド名がドレスコーズやのに、好き勝手やりやがって! だったら外でやりやがれ!」って(笑)。
豪:ああ、なるほど。メンバーチェンジの結果、2ちゃんねるでオーケンさんが叩かれまくってた一時期の筋肉少女帯を思い出しますね。
志:できたばかりの2ちゃんを見て解散を決意したっていう有名なエピソードですよね。たしかに、お客さんのバッシングが羅列されてて、それをモロにアーティストが目にするっていうことって、それまではなかったことでしょうからね。
波風立たないとダメなんじゃない? とすら思う
豪:今回の件は、それはそれで面白いことになったと思います?
志:思いますね〜。僕はパンクが好きなんですけども、パンクの持ってる頭脳ゲームみたいなところ、ロジック、とんち、そういう部分に影響を受けてるんです。僕が中学2年生の時にセックス・ピストルズが95年に来日してるんですよね。
豪:ああ、ボクはCLUB CITTA'も武道館も行きましたよ。
志:そうなんですか! いいな〜!
豪:全然良くなかったですけど!(笑)
志:いやいや! この話には続きがあって。半分想像なんですけど、ピストルズが来る! ってことで、ガーゼシャツにボンテージパンツでスパイキーヘアのパンクなお兄ちゃんたちが武道館に詰め掛けたわけじゃないですか。そしたら当時で言うサイバーパンク系みたいな格好をしたジョニー・ロットン改めジョン・ライドンが出てきて、ピストルズの往年のナンバーを連発して「さぁどうぞ、みなさん歌ってください! あのヒット曲です!」ってシンガロングを煽る。これにお客さんたちは「それがパンクかよ!」ってカチンときたと思うんですよ。
豪:はいはい。
志:話は飛んで、僕が行ってた高校に非常に音楽の好きな変わった先生がいまして、僕がその先生に「ピストルズの来日、先生はどう思った?」って聞いたんです。そしたら「いや、僕はあれがパンクだと思うんだ」って言うんですよ。「みんながパンクだと思って革ジャンで行ったら、全然違う格好で現れて、みんながやってほしくないことをやる。で、『気分はどうだい?』。セックスピストルズはあれがいいんだよ」って。これを聞いた時に、「そういうことなんや〜!」って頭がパッカーン!と開いたんですよね。
豪:裏切ることがパンクであるなら、裏切り続けなきゃいけない、っていう。
志:もう完全にロジックで、音楽よりもまずそれが快感でしたね。だから、極論ですけど、ピストルズの映画『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』みたいなことがやりたくてバンドやってる気もします。
豪:『ザ・グレイト〜』のサントラとしてピストルズ解散後にジョニー・ロットン不在でアルバムを出したんですけど、実はあっちのほうが『ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス』よりボクは好きなんですよ。
志:僕も、もちろん曲を書くのも好きなんですけど、固定概念みたいなモノの鍵をガチャッと外してみんなが慌てるっていうのはすごく面白い。それで僕もついついいろんなことを仕掛けたくなっちゃうんですよ(笑)。
豪:ダハハハハ! 波風は立ったほうが面白い! っていう。
志:波風立たないとダメなんじゃない? とすら思っちゃいますね。だから、ロックファンの思考回路ってプロレスファンと近いと思うんですよ。
豪:騒動を起こす方が面白いっていう発想はすごくわかるんですよ。ボクも基本的にそういうのが好きだし。
志:豪さんは大丈夫なんですか? 身の危険とか。
豪:今のところは大丈夫ですね。脅されたりはするけど、実際には来ないですし。何かあっても、すぐ「今こんなこと言われました!」って表に出しちゃうから(笑)。
志:そうすると来ないんですか!?
豪:脅しの電話とかはたまに来ますけど、留守電に脅しを残してたりするから全部保管してるし、そういうことをオープンにしていくと脅してる方が誰かに怒られたりして、知らない間に収まってたりする(笑)。だから結局は落ち着いて対処すればなんとかなるな、と思ってきましたね。
志:スゲ〜! 豪さんのリツイートやツイートで人の指の1本や2本は飛んでる可能性がありますよ!
豪:ダハハハハ! どうだろう? どんなヤバいことでも、だいたいネタになるっていう発想なんですよね。
志:僕はそこまで闇の深い部分に足を踏み入れたことはないですね……。
豪:踏み込みましょうよ。どうせなら岡田斗司夫問題で!
志:それは傍観者でいいです!