ワニシャンの悲劇!
前山田健一(以下:前) そろそろ今度出る、ももいろクローバーZのニューシングル「労働讃歌」のC/W「サンタさん」(作詞・曲:前山田健一/現在は発売中)の話をしようかと思うんですが。
吉田豪(以下:豪) えぇ、どうぞどうぞ。
前 僕がももクロちゃんに書く歌詞ってほとんど意味がないんですけど、今回もないです(あっさりと)。
豪 でも、クリスマスソングではあるわけですよね?
前 そうなんですけど、歌詞はスッカスカですね(笑)。
豪 「ココ☆ナツ」級?
前 「ココ☆ナツ」級です(笑)。その曲の2番でメンバーの“高城れに”を物凄いフィーチャーしてる所があって。
豪 最近、高城さんを飛び道具として使うことが多いですよね(笑)。
前 そうですね(笑)。でも凄いですよ。PVの内容もさっき聞いたんですけど、もうアイドルの仕事じゃない(笑)。
豪 本人としてはどうなんですかね? 普通に歌ったらメンバーの中で一番いい声だったりするじゃないですか?
前 そうなんです、実はメンバーの中で一番「アイドル声」で、My Little Loverのakkoさんにも声が似てて、凄く好きな声なんですよ。曲によってはセンターに起用することもありますし。でも、最近は(百田)夏菜子が多いかな。夏菜子が上手くなっちゃったから……。
豪 なっちゃったから、ってあまり嬉しそうじゃないですね(笑)。
前 いや、喜ばしいことなんですけど、褒めたら褒めるほどアイツは無口になるんですよ。
豪 基本、大人を信じないですもんね。
前 まぁ、散々なことされてますからね〜(笑)。
豪 歌い出しとサビは有安(杏果)率が高いですよね?
前 「ワニとシャンプー」という曲がありまして、深夜アニメのタイアップが付くという話だったんですよね。ということは、ももクロのことを知らない人も多いだろうから、アニメ層に訴求するために、一般的にガツンと歌える子を最初に聴かせたいという狙いがあったんですね。「行くぜっ!怪盗少女」もまさにそうで。
豪 ツカミはまずガツンと聴かせる、と。
前 そう、だから自分の曲でも全部そうなんですけど、1A(イントロから歌い出しまで)に関しては物凄くこだわる。ツカミをしっかりしなきゃいけないから、有安を持ってくるんですよ。
豪 アニソンって短い曲の中でいかにインパクトを与えるかだから、最初が重要なわけですよね。
前 そうなんです、で、「ワニシャン(ワニとシャンプー)の悲劇」というのがありまして……。あの曲って、頭に有安をガッツリ持ってきて、その後、(高城)れにちゃんのカワイイ声を持ってきて、って感じにしたら、「すみません、タイアップ60秒になりました」って言われたんで、60秒バージョンを作ったんですよ。そしたら「すみません、30秒になりました」って言われて。もうサビしか残んないから、有安に「ごめん」って言って削ったら、「すみません、15秒になりました」って言われて(笑)。それ聞いて「15秒ってCMじゃん、逆に新しい!」と思って(笑)。
豪 もはやアニメのエンディングテーマの尺じゃないですね(笑)。
前 で、結局、(百田)夏菜子の所だけ残ったんですよ。あれは驚きましたよ〜(笑)。
豪 前山田さんって曲を作る時に、メンバーにインタビューしたりもしますよね。あれで、思い入れの差とか出てくるものなんですか?
前 ん〜、最近は、歌詞を書く段階でパート分けしてるんで、ここはこの子が歌う、ってことを想定して、カスタマイズして書いてますね。次の「サンタさん」にしても、その次に出る新曲にしても、その人にしか歌えないパートになってます。
豪 その「次に出る新曲」って、どんな感じなんですか?
前 これがね、いいんですよ〜(嬉しそうに)。いいというか、革命的ですね〜(更に嬉しそうに)。これ以上言うと、楽屋に居る人から怒られるんで言えないんですけど(笑)。「サンタさん」に関して言うと、ライブは盛り上がりますよ〜。こんな楽しいクリスマスソングを僕は聞いたことがない、って位の仕上がりになってますんで。一方、同じ日に、僕(ヒャダインとして)の新曲が出るわけですが……。
豪 クリスマスを否定する歌(ヒャダイン3rdシングル「クリスマス?なにそれ?美味しいの?」/現在発売中)ですよね。
前 だから、まいったんですよ。「次はクリスマスソング、お願いします」って言われて、「え、オレ、クリスマスをdisってる曲、出すのにどうしよう?」と思ったら、「あ、大丈夫ですよ。何の意味もない歌詞にしてくれれば」って言われて。すごい発注ですよね(笑)。
14歳位の少女と9歳位の男子が心の中に!
豪 ももクロって、いい意味で「素人感」を失ってないですよね。
前 そうなんです。ももクロはキャリアも付いてきたんですけど、プロ感が全く無いんですよね。それは百田(夏菜子)と、玉井(詩織)のお陰だと思ってるんです。
豪 ホントにリーダーでもある百田夏菜子の存在が大きいですよね。
前 百田と玉井は、握手会とかで皆さん触れ合った機会があると思うんですけど、裏でもあのまんまです。
豪 ただ遊んでるだけですもんね、どこにいても。
前 そう、それが他のメンバーにも凄い影響を与えていて、朱に染まれば、じゃないですけど、強いカラーの子がいれば、そうなっていきますよね。
豪 子役からやってる人達が、そっちに引っ張られるんですよね。
前 そうなんです、あーりん(佐々木彩夏)にしても(有安)杏果にしても、そっちに引っ張られて伸び伸びやってますよね。百田の全力感とかハンパないですよ。玉井さんは、まぁアレな性格なんで(笑)。
豪 常に全力は出してないけど、底知れない実力はあって(笑)。
前 なので、ホントにいいグループ、いい色が付いてきたな、と思っていて。レコーディングしてる時も凄く楽しいですよ。僕、精神年齢が異常に若いんで。
豪 前にインタビューした時に、心の中に少女が入ってる、って話をしてましたよね。
前 そう、14歳位の少女と、9歳位の男子と、31歳の実年齢が居るんで、今一番好きな漫画は9歳の男子感で、『でんぢゃらすじーさん邪』(「月刊コロコロコミック」「別冊コロコロコミック」にて連載中)ですからね。中身が本当に“おこちゃま”なので、だからももクロちゃんとも話が合うんですよ。
豪 大人扱いされないで済む感じがあるわけですよね。
前 そう、レコーディングの時に話し込みすぎちゃって、よくスタッフから「早く始めて下さい」って言われるんですけど(笑)。この前もイベントで、ももクロちゃんと共演する機会があって、楽屋が近かったんで遊びに行ったら、皆、宿題をやってたんですけど、(高城)れにちゃんだけ何もやってないんですよ、「どうしたの?」って聞いたら、いつもの笑顔で「なくした〜」って(笑)。
豪 高城さんって、最年長なのに一番幼い感じが凄いですよね(笑)。
前 で、なぜか夏菜子が詩織の宿題をやってるんですよ。「なんで〜?」って聞いたら「よく分かんないけどやってる〜」って(笑)。で、「分かんない所あるから教えて〜」って言われて、僕、家庭教師もやってたんで、教えるのには自信があったんですよ。中2の方程式で、凄く丁寧に説明したつもりだったんですけど、夏菜子が「んああっ〜〜」って錯乱して終わりましたね(笑)。
豪 僕、「試練の十番勝負」ってももクロの本を作って、川上さん(ももいろクローバーZ/チーフ・マネージャー)とメンバーとの対談の最後のページに、玉井さんが川上さんを蹴っ飛ばしてる写真が載ってるんですけど、あれ実は何の指示もしてなくて、スタジオに入ってきた瞬間、玉井さんが川上さんのことを蹴っ飛ばしながら「遊び連れてけよ〜」って、ずっと言ってて(笑)。
前 あ〜、言いそうですね〜。
豪 それを川上さんが耐えるポーズでずっと蹴りを受けてて、何だコレと思って(笑)。それをカメラマンさんが撮っただけなんですよ。それを何の説明もなく載せて。
前 玉ちゃんはほんと自由。等身大の16歳って感じですよね。
豪 玉井さんって、あのグループの中だと大人っぽい方じゃないですか。でも夜、寝る時は、親子で川の字で寝てるって話を聞いて、いい意味で子供っぽさをキープ出来てるのかな、と。
前 親子で言うと、れにちゃんのママもいいキャラの人で、れにちゃんが「行くぜっ!怪盗少女」の衣装のまま家に帰った時があって、次の日の朝、ママがその衣装を着て部屋まで起こしに来たという。よっぽど着たかったんでしょうね(笑)。
夏菜子、“LED”分からず!
豪 そろそろ最後ですけど、何か言い残したことありますか?
前 ん〜、じゃあ最後にひとつだけネタバレすると、新曲「サンタさん」の中で、「青 白 LED!!」って歌詞があるんですけど、「夏菜子、LEDってモチロン意味、分かってるよね?」って聞いたら、「当たり前じゃないですか〜、赤!」って(笑)。
豪 “LED”じゃなくて、“RED”ですよ! イメージカラーが赤の人が、綴りも分かってない(笑)!
前 締めにいい話でしょ(笑)?
豪 最高です! 有難うございました!