前山田さんの音源試聴会!
吉田豪(以下:豪) 今日は前山田さんが作った曲のデモ音源を流すってことしか決まってないんですよね?
前山田健一(以下:前) はい、基本ノープランです(笑)。
豪 でも、それを純粋に聴いて欲しいんですよね。以前、大阪で前山田さんとイベントをやった時に、MilkyWay「タンタンターン!」とか、ももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」の前山田さんが歌うデモ音源が、最初のバージョンからどうやって変化していったのか色々聴かせてもらったら、それがすごい面白かったんですよ!
前 あ〜、やりましたね〜。
豪 曲がどうやって出来ていくかの流れって面白いじゃないですか? 一旦リセットされる感じとか。
前 「行くぜっ!怪盗少女」の時は、ガラッガラ変わりましたからね。
豪 「怪盗少女」も最初のバージョンでほぼ完成してたのが、なぜか途中で全く違う歌詞になるんですよね(笑)。
前 そう、「元気だせよ〜」とか「頑張れよ〜」とか。
豪 その歌詞のやる気の無さが凄いんですよ! 本当に変えたくなかったんだなっていうのが、すごい分かりました(笑)。
前 そう、やっつけ歌詞でしたね〜(笑)。じゃあ、これから聴いてもらいますか。ドン!
【あーりんこと、佐々木彩夏(ももいろクローバー)のソロ曲「だってあーりんなんだもーん☆」のデモ音源が会場に流れる】
豪 ……これは、変更点ほぼ無いですよね?
前 いや、オタさんなら分かると思うんですけど、この曲はもっとメロディーがあるんですが、彼女が音程を外した時のミラクル感が凄いので(笑)、そっちを採用しました。
豪 それは前山田さんのリクエストで?
前 勿論です。ディレクションの時に、じゃあアレもコレもって何回もやってもらうのが、もう楽しくて楽しくて(嬉しそうに)。でも、他のスタッフから怒られるんですよね〜。
豪 そこまでやんなくていいだろ! 趣味だろ! って(笑)。
前 もう時間ねぇんだよ! って(笑)。
豪 この曲を中野サンプラザで初披露した時に、僕の隣に前山田さんが座ってたんですけど、この曲が始まった瞬間、ノリノリで一人オタ芸を始めて、コールも延々やって(笑)。
前 だって世の中で僕だけですよ。あのとき、この曲でオタ芸とコールが完璧に出来るのは(笑)。サイリウムもピンク(あーりんのイメージカラー)だけ買いましたからね(笑)。
豪 お客さんからの質問で結構来てたんですけど、前山田さんって、男性アイドルにはほとんど曲書いてないですよね? それはやっぱり、女性の「声フェチ」だからですか?
前 そうですね〜。特に「キャットボイス」が大好きなんで、歌が上手過ぎない子が好きなんですよ。だからDIVA(歌姫)的な人には何の魅力も感じない(笑)。キャットボイスで言うと、最近のアイドルワークの中で僕のベストは、小倉唯のソロなんですよ。
豪 分かります! すごい良かったです!
前 おぉ、分かって頂けましたか?
豪 小倉唯のソロってハズレないですもんね。『怪盗レーニャ』の主題歌「盗んだハートはココですよ?」も最高だったし。
前 そうなんですよ〜。ももクロオタの方は初めて聞くかもしれないですけど、僕のキャットボイス好きがここまできたぞっていうのを、ちょっと聴いて下さい。
【小倉唯「キュッ!キュッ!CURIOSITY!!」が会場に流れる】
前 あ〜、萌える〜〜〜(笑)
豪 ダハハハハ! ボーカリストとして100点なんですよね。僕、最近HMVでアイドルのコンピを出したんですけど、実は小倉唯さんを入れようとしてNGが出て……。
前 あぁ、その背景、全部聞きました(笑)。あれ、勿体ないですよね〜。
豪 そうなんですよ。収録しようとした「盗んだハートはココですよ?」は配信のみで、ちゃんと音源化されてなかったんで、是非入れたかったんですけどね。じゃあ、次の曲、行きましょうか。
ライブで発表するまでは完成度60%!
前 はい、次はですね、デモ音源じゃないんですけど、ももクロの妹分で「私立恵比寿中学」というのがおりまして、彼女たちも随分伸びてきたんですが、“キングオブ学芸会”と言われるくらい、随分素人臭いんですよ、それが売りなんですが。その彼女たちとある意味、真逆の存在なのが、今回、アレンジとボーカルディレクションで参加させて頂いた「でんぱ組.inc」でして。
豪 メンバー自身も秋葉原のディアステージって店で働くオタの人たちで、小池雅也さんが作った、いわゆる電波ソング的なものを歌うグループですよね。
前 そうです。彼女たちが先日メジャーデビューをしまして、歌入れしてビックリしたんですが、彼女たちもオタなので、歌い方がオタに特化してるんですよね。すごいオタオタしい歌い方をする。
豪 変な声の台詞を入れるのがテーマですもんね。
前 変な声で言うと、エビ中に関しては安本彩花というメンバーが特に象徴的なんですが(笑)。素人感というポイントで、安本とは真逆で面白かったので。とりあえず、でんぱ組.incのデビュー曲を聴いてみて下さい。
【でんぱ組.incのデビュー曲「Future Diver」が会場に流れる】
豪 いいですね〜。前山田さんとでんぱ組って、絶対に相性いいと思ってたんですよ。
前 そうなんです。ここまでオタオタしいことを今回はチューンナップしてやってみようと思ったんですよ。初めて聞いてもどこでコールするとか、分かりやすくなかったですか?
豪 でんぱ組って、曲もお客さんもオタ芸に特化してますからね。
前 ですね。なので、今回、僕のリクエストでオタ芸を入れたバージョンもCDに入れてくれと。
豪 あ、あらかじめコールが入ってるんですか(笑)。
前 そう。「ライブミックス」って名前なんですけど(笑)。
豪 それ絶対アガりますよ!
前 「ハイハイハイハイ〜」とか入ってるんですよ(笑)。ももクロとかエビ中だと、それをやるとやり過ぎになるんですよね。僕はアイドルを総合芸術だと思っていて、曲だけじゃなくて、ルックス、歌声、キャラクター、歌詞、アレンジ、振り付けとか色々なものが合わさっていて、その中に、オタさんの存在もあるんですよ。オタさんがどこでコールするか、盛り上げるか。だって「世界のももクロナンバーワン」(ももいろクローバー「あの空に向かって」でのコール)ですよ。何なんですか、あれ!
豪 ダハハハハハ! 何なんだと思ってたのが、段々あれで感動するようになってきちゃいましたからね(笑)。
前 そうなんですよ、曲ってオタさんが作るものでもあるんですよね。
豪 一回それで慣れちゃってからスタジオ音源を聴くと、何か寂しいことになるんですよね。
前 そうなんです、アイドルのアルバムが売れないと言われているのは、そういうこともあるのかと思ったら『バトル アンド ロマンス』(ももいろクローバー1stアルバム)は結構売れちゃって、これは凄いことですよね(笑)。それで特にオタさんが曲を作っていくんだなと痛感した曲があって、これを流すのは本日2度目なんですが、前列の方、特にご協力をお願いします!
【再びあーりんこと佐々木彩夏(ももいろクローバー)のソロ曲「だってあーりんなんだもーん☆」が流れる。コール&オタ芸を打ちまくるお客さん達】
前 ……ね? でしょ(笑)?
豪 ただ、中野サンプラザで初めてこの曲を披露した時、前山田さんがやってたコールと、いま定着しているお客さんのコールとでは微妙に違ったじゃないですか?
前 そうなんですよ。それは予想してなかった。
豪 前山田さんが想定していたコールがあったわけですよね。
前 全然、想定外ですよ(笑)。だから総合芸術なんです。曲を作ってライブで発表するまでは完成度で言うと60%なんですよね。そこからオタさんがどう作り上げてくれるかというのが、アイドルソングの魅力だと思ってるんですよ。なので、あーりんミックスを考えてくれた人、ほんと有難う!
豪 ダハハハハ! 自分が考えてたのを超えられた感じですか。
前 でも、自分が考えてたコールを打ってくれないという、もどかしさもあるんですよ(笑)。例えば、ももいろクローバーZの「Z伝説〜終わりなき革命〜」で、「強く気高く楽しくうるわしく歌い続けよう」の後の“ジャジャジャ”の部分って今コールが何もないんですけど、そこでメンバーの名前をコールして欲しかったんですよ。「れにちゃん! ももか! あ〜りん! しおりん! かなこ〜」で、「も〜も〜い〜ろ〜クロ〜バ〜」なんですよ! だから“ジャジャジャ”入れておいたのに(笑)!
豪 そういうことが多々あるんですね(笑)。
前 多々あるんですよ! ここで入れてくれ〜っていうのが(笑)!
【以下、後編に。後編は前山田さんの「ももクロ愛」について掘り下げます!】