「豪さ〜ん、何かあったら僕に言って下さい。誰でも刺しますから!」
吉田豪(以下:豪) 今日はよろしくお願いします! 中山さんメインのトークイベントはこれが初めてですけど、一度、ボクのイベントに乱入してもらったことはあるんですよね?
中山一也(以下:中) ああ、そんなことありましたね〜。
豪 中山さんがロバート・デ・ニーロに会いたいってずっと言ってて、遂にアメリカでアポなしで会ってきたからその写真を今すぐ見せたいって連絡が来て。ちょうどトークイベントの日だったから断ったんですけど、「そうか、イベントに乱入してもらえばいいのか」と思って。それで高円寺の路上で杉作さんとトークイベントに乱入してもらって。
中 ……あの、その前に、ちょっといいですか?
豪 (戸惑いつつ)あ、どうぞ、どうぞ。
中 (おもむろにスーパーの袋を取り出し)いまそこで「おやき」買って来たんで、皆さんで食べて下さい!
豪 ダハハハハ! わざわざありがとうございます!
中 10個しかないですけど。デザート代わりに(笑)。
豪 中山さんの気遣いですね(笑)。ボクが中山さんと初めて会ったのは、真樹日佐夫先生の『梶原三兄弟激動昭和史 すてごろ』っていう映画の打ち上げだったんですけど……。
中 そうでしたっけ?
豪 そのときは挨拶もしてないんですけどね。その映画に僕もエキストラ的に出ていて、出演者の方が前に出て順番に挨拶をしてたんですよ。で、中山さんが何を言うかと思ったら、「今回、監督に頭きたんで、刺そうかと思いました」って、事情を知ってる人も知らない人も笑えないギャグを飛ばして(笑)。
中 ああ、はいはい(笑)。
豪 ボクだけ爆笑してたら、誰も笑ってなかったんですよ(笑)。あれで感動したんですよね、この人すげ〜、って。かつて映画を降板させられたときに監督をナイフで刺した実績を知ってる人も知らない人も、普通は受身取れないですよ(笑)。
中 あれは、光石(冨士朗)って監督だったかな? まぁ、色々あったんですよ(笑)。
豪 その後、中山さんを取材して知り合ったわけですけど、その2年後ぐらいに別の打ち上げで会ったときも、中山さんがボクに近づくなり「豪さ〜ん、何かあったら僕に言って下さい。誰でも刺しますから!」って(笑)。
中 そんなの言ったっけ?
豪 言いましたよ!(笑)。あれは、ブラックジョークなんですよね?
中 ん〜、どうなんですかね〜(笑)。
「俺はリアリティがいちばん大事だと思うから、先に指を飛ばしておいたんだよね(笑)」
豪 今回、中山さんの新刊が出て(『シロ 腹切り役者は何度でもよみがえる』幻冬舎)、今までの出来事も全て書かれていましたけど、まぁ〜、凄い本でした!
中 そうですか、ありがとうございます!
豪 前に出した『刺されたいのか、主役はこの俺だ!』(永岡書店・現在は絶版)っていう、完全にどうかしてるタイトルの本も大好きでしたけど(笑)。あれが凄いレアな本で、東北の古本屋でようやく見つけて。
中 豪さんがその本の書評を書いてくれてね。その話を聞いたときに俺、すごく感動して。電話番号調べる「104」に100回位電話して、豪さんの連絡先を突き止めたんですけど、それが別の吉田豪だったんだよね(笑)。
豪 取材で初めて会ったとき、中山さんの携帯を見たら、もう「吉田豪」で登録されてましたね(笑)。
中 そう、豪さんと会うために、突き止めたその番号に100回位、電話したんだけど「これ、別の吉田豪ですよ」って(笑)。
豪 ボクも中山さんをずっと取材したいと思ってて、『IZO』って映画で20年ぶりぐらいに主演をすると聞いて、取材のいいキッカケが出来たと思って会いに行ったら、中山さんがすでにボクのことを知ってたから恐かったんですよ(笑)。
中 俺は真樹日左夫先生にお世話になってるんですけど、大山倍達がなぜ、あそこまでいったかというと真樹先生のお兄さんである梶原一騎の存在があるわけで、俺は豪さんに会った時に感じたんですよ、「吉田豪は俺にとっての梶原一騎になる男だ!」と。
豪 大山倍達と梶原一騎は、後に揉めましたけどね(笑)。
中 あぁ、そっか!
豪 決裂したまま、梶原先生が死んじゃいましたから(笑)。
中 だけど、豪さんは凄いですよ。この前、豪さんも取材したムツゴロウさんに銀座で会ったんで「指、大丈夫ですか?」って聞いたら、「(無い指を使って)グワシ!」ってやってくれて。
豪 ……あれ? 中山さんってムツさんと面識あるんですか?
中 全然、無いんだけど(あっさりと)。「豪さんの知り合いだ」と言って、名前も名乗らなかったし(笑)、で、俺も指一本落としたって話をして。
豪 ……え! 指をですか!?
中 まぁ、それはどうでもいいだけど(あっさりと)。
豪 どうでもよくないですよ! 落としちゃったんですか?
中 まぁ、これはね『探偵物語』って映画を見たことある人、いるかな?
豪 えぇ、三池(崇史)さんのやつですよね。
中 その映画の最後に指を落とすシーンがあるんだけど、俺は本当に指、落としてるんだよね(と小指を見せる)。
豪 あぁ、ホントだ! 知らなかった! それって撮影のために落としたんですか?
中 さかのぼると、三池崇史の『俺達は天使(カタギ)じゃない』って映画があって、その撮影の前に俺、指落としたの(あっさりと)。
豪 え! なんで?
中 色々あって(あっさりと)。
豪 そこ、教えて下さいよ(笑)! なんで、そんな凄いことを今回の本に書いてないんですか!
中 まぁ、これをネタに、デ・ニーロとかアル・パチーノとかスタローンとかに「俺は指、飛ばしたんだぞ!」って話をして。
豪 映画のためなら俺は指も落とすぞ、と(笑)。それはデ・ニーロ以上ですよ!
中 そう、俺はリアリティがいちばん大事だと思うから、先に指を飛ばしておいたんだよね(笑)。
豪 ……本当に撮影のためですか?
中 まぁ、それは色々あるから(笑)。とにかく指を落として、撮影が終わった後に、まだ付くかもしれないと思って、指を持って病院に行ったんですよ。でも、付かないって言うから次の日、多摩川に子供を連れて指を埋めに行ったんですよ。
豪 また、お子さんもすごいイベントに付き合いましたね(笑)。
中 そのときに「お父さん、何やってるの?」って言うから、「お父さんの指、ここに埋めたんだけど何年かしたら、ここに新たな指が生えて、でっかい指が育つぞ」って、記念で埋めたことにしたんだけど。たまに行くと、もう埋めた場所、忘れちゃってるんだよね(笑)。それがちょっと悲しいんだよな〜。
豪 指を落としたのは、何か大人の事情なんですか?
中 まぁ、言いたくはないんですけどね。本にも書いてるんですけど、社員寮の管理人をやっていた時があって、その当時、とにかく女房の金は使うわ、もう好き三昧やってて、その時に女房とあることがあって、台所に行って指を落としたんですよ。
豪 うわ〜!
中 でもね、普通の包丁じゃ指は落ちないの(あっさりと)。切腹した時もそうだけど、やっぱり『気合いだ〜』じゃないけどね、普通のだと薄いんだよね。
豪 指を詰めたい人には、いいアドバイスですね(笑)。
中 で、隣に出刃包丁があって、これだったらいくかなと思って、軽くポンと落としたら、ポンと指が取れて(笑)。だけど俺、素人だからさ。
豪 その世界に玄人は居ないと思いますよ!
中 ちょっと躊躇して、落とすポイントを間違えちゃったんだけど、まぁ、こんなもんでいいかな、と(笑)。切腹の時は、本にも書いてあるけど、結局アドレナリンが出るから気持ちいいんだよね。包丁を入れた感覚が、女性のあそこに入れた感覚と似てて。
豪 その感覚、なかなか理解出来ないですけどね。
中 あれは本当に、『オッパッピー』だったね。
豪 ダハハハハハ! なぜそこで『オッパッピー』(笑)。
中 だけど、ひとつだけ言いたいんだけど、俺は色んなことやってきたけど未だに出来ないことがあって、それは包茎手術なんだけど(笑)。
豪 それが一番、痛くないですよ!
中 切腹して指を落とした男が言うことじゃないけども、包茎の手術は恐くて出来ない(キッパリ)。
豪 杉作J太郎っていう人が包茎手術をやったんですけど、やったらチンコもでかくなるし最高だ、って言ってましたよ。
中 でも、俺はやっぱり『皮オナニー派』でね。
豪 ダハハハハハ! そうなんですか!
中 亀頭が出てる奴は、今でも敵だと思ってるから(笑)。(続く)
東北地方太平洋沖地震を受けて、中山さんよりコメントが届きました。
「管直人も渡辺恒雄も一度俺みたいに切腹させるか、刺されなきゃ駄目だな。俺は今、香港で自分の非力さにヒドク落ち込んでいる」