「ピッチャーって、自分勝手な人が多いんです」
(愛甲さん)
吉田豪(以下:豪) 愛甲さんとは一度イベントをやらせて頂いて(昨年5月3日「球界の野良犬・愛甲猛が吼える!吉田豪&掟ポルシェが訊く!」)、すごい評判が良かったんですけど、そんな愛甲さんも『ゴッドタン』の“ゲーセワニュース”が大好きらしくて。愛甲さんから初めて電話がきて、『吉田さん、面白かったよ!』って(笑)。
愛甲猛(以下:愛) 見てますよ〜! 僕、ああいう都市伝説とか、裏ネタ的な番組が大好きなんですよね。
豪 愛甲さんも、そういうネタをお持ちなんですか?
愛 そうですね、今日は正月早々なので斎藤佑樹くんのネタでも出そうかな、と(笑)。
豪 いきなりですか! どうぞどうぞ(笑)。
愛 ウチの娘がいま19歳なんですけど、その友達が早稲田の野球部の子とお付き合いしてまして、そこから仕入れたネタなんですけど(笑)。
豪 ネタ元がハッキリしてるんですね(笑)。
愛 そう、マジネタです(笑)。斎藤佑樹くんの「僕は何か持ってると人から言われてきましたが、持ってるものが今わかりました。それは仲間です」って発言があったじゃないですか。あれが、仲間内には不評だったらしいんですよ(笑)。
豪 何言ってんだ、と(笑)。
愛 ピッチャーって、自分勝手で自分の事しか考えない人が多いんです。だから、周りの事を考えずに、自分の成績のことばかり考えてたので「キャプテンらしくない」って言われてて。仲間内では、嫌われてるとかではないけど、あまり印象が良くなかったらしいんですよね。
豪 それが急に仲間うんぬん言い出して(笑)。
愛 そう、だから不評で(笑)。今年、福井(優也)ってピッチャーが、広島にドラフト一位で入ったんですけど、彼はいいですよ。プロで大活躍すると思うんですけど、試合中にエラーしたチームメイトを、見えない所で蹴っ飛ばしに行くらしいんですよ(笑)。そのぐらいカーッとなる。あれはプロ向きですよね。
豪 あ、そういう方がプロ向きなんですか!
愛 結構多いですよ、村田兆治さんもそうだったんですけど。
豪 見えないとこで殴ってたんですか?
愛 あの人、目が悪くてキャッチャーのサインが見えないんですよ。
豪 それって、ピッチャー的にはアウトですよね?
愛 そう、アウトです(笑)。でも兆治さんの時って、キャッチャーはノーサインで捕ってたんですよ。それで一度、兆治さんがすごくデカいホームランを打たれたときに、キャッチャーの袴田(英利)さんを呼び付けて『なんでお前、あそこで真っ直ぐのサイン出したんだ!』って、グローブをブン投げて怒ったんですよ。そしたら袴田さんが『ノーサインだろ、バカヤロー』って、レガース外しながらボヤいてて(笑)。
豪 そりゃボヤキますよね(笑)。
愛 俺はそのやりとりを近くで聞いてて、「なんだこれは」と(笑)。プロ野球選手同士の会話じゃないですよ(笑)。だから、斎藤祐樹くんよりも、福井くんの方が、性格的にも伸びしろが全然あると思いますよ(笑)。
「愛甲さんはエピソードの宝庫ですからね!」
(豪さん)
豪 さっき聞いたんですけど、愛甲さんの名著『球界の野良犬』(宝島社・刊)の文庫化が決定したそうですね。
愛 はい、有難うございます。もう発売中ですね。
豪 ホント皆さん、これは買った方がいいですよ。エピソードは文句なしで面白いですし、トリップ体験があんな克明に描かれた野球本ってないですよね(笑)。
愛 まぁ、自爆テロみたいなもんです(笑)。
豪 田代まさしさんに、「愛甲さんの本に、ボンドを吸うときビニール袋の上に小人がピョコンと出てくると効いてきた合図だって書いてありましたよ」って言ったら『そうそう、小人出てくるんだよ〜』って言ってました(笑)。
愛 あの感覚って人それぞれ違うのかなと思ってたら、結構同じような感じらしいですね。でも、あの本を出した後で一緒にシンナーやってた同級生から『名前は伏せて欲しかったなぁ〜』って言われて(笑)。
豪 実名が出ちゃってましたもんね(笑)。
愛 「事実だからしょうがねぇだろ!」って言いましたけど(笑)。内容的にはもうちょっと踏み込んで欲しかったなぁ、と思う所もありましたけどね。
豪 あれだけ好き勝手書いてるのにですか?
愛 やっぱりプロ野球のこととか。これだけは言ってはいけないご法度的なことを、もう少し入れ込みたかったですね。俺、広岡(達朗)のこと大嫌いですから!
豪 ダハハハハ! あの人は嫌われてますよね。江夏(豊)さんもボロクソに言ってました(笑)。
愛 俺、先輩で唯一呼び捨てにするの、奴だけですもん。
豪 性格が悪いんですか?
愛 性格というか、やる事が汚いんですよ。選手の中にスパイを入れたり。ロッカーで話してたことが、そのまんま伝わってたこともありますからね。監督には、愛甲は大酒飲みで門限も破るってデマを吹き込んで、監督室に呼ばれて物凄い形相で怒られたこともありますよ。でも、周りの人間は知ってるんですよ、俺がお酒を一滴も飲めないことを。
豪 今日もずっとお茶ですもんね。
愛 もうビックリしちゃって。終いには、俺を二軍に落とすために、一・二軍の選手の入れ替えをする権限を監督から剥奪して。そこまでやる男なんですよ。あの野郎、本当に金玉ちっちゃい野郎だから(キッパリ)!
豪 『球界の野良犬』では、長嶋(茂雄)さんとのエピソードも良かったですよ。「オナラまで神々しく聞こえた」っていう(笑)。
愛 あぁ。俺が高2の時、知り合いのトレーナーさんにマッサージしてもらってたら、そこに長嶋さんが来て、隣のベッドでマッサージ始めたら、ビックリするぐらいの屁をしたんですよ。俺、ものすごい感激しちゃって。他人の屁を聞いて感激したのってあの人だけですよ(笑)。
豪 長嶋さんとのエピソードが、それしか書いてないのも凄いですけどね(笑)。
愛 長嶋さんのエピソードって余りにも色々あるから。ただ、長嶋さんって、星野(仙一)さんよりも短気ですよ。ジャイアンツ戦でよく乱闘になったのも、ジャイアンツが仕返ししてくるからで、選手に聞いたんですけど、あれ全部、長嶋さんの指示らしいんですよね。星野さんも、あの頃の情熱が冷めてなかったら、今年のパリーグは面白くなりますよ〜。間違いなく自分の所の選手が当てられたら当て返しにきますから(笑)。それで当てられなかったら、間違いなく2軍に落としますから(笑)。
豪 『なんで当てられないんだよ!』って(笑)。
愛 中日は間違いなくそういうのがあって、俺が2軍に居た頃、1軍でバリバリやってたピッチャーが3人落ちてきたんですよ。「どうしたの?」って訊いたら、その前の日に福留(孝介)がぶつけられたんで、仕返しをしろって言われて、矢野(燿大)って選手に当てに行ったんですよ。でも、キャッチャーの中村(武志)と仲が良かったもんだから、中村が全部よけろって言っちゃって(笑)。そうしたら全員2軍に落とされちゃった。そのぐらいあの人は、やられたらやり返すんです。オリックスの監督の岡田(彰布)さんも短気なので、今年の楽天とオリックスの試合は、相当楽しめるんじゃないですかね。今、色んなライターの方たちに、こういう「球界のアンタッチャブル」を書きたいよね、って話をしてて。人の悪口とかじゃなくて、これだけは言っちゃいけないような話って結構あるんですよ。
豪 愛甲さんはエピソードの宝庫ですからね。是非、期待してます!