生放送で実験を……
吉田豪(以下:豪) そういえば地上波のFM局で根本さんのレギュラー番組が始まったという、衝撃的すぎる話について聞くのを忘れてました!
根本敬(以下:根) あぁ、InterFMでね(「ドントパスミーバイ」、12月25日を以て一旦放送終了)。いま二回目(2010/10/19当時)なんですけど、いろいろ実験的なことをやってんですよ。湯浅学とスタジオを使ってどういうことが出来るかという。「ポンチャック」って言葉を使った「ポンチャッ・ファイズ」っていう造語を作って、それをテーマにしてですね……。
豪 番組をいかに実験的かつマヌケな方向に持っていくか、と。
根 そう、ポンチャック化していくか。で、番組自体をひとつのスタジオワークとして、湯浅はゲストの人と喋りながら、俺は持ち込んだ白黒テレビで競馬中継を流したりとか、ポンチャックをいい所で流してたりとか、あるいは二回目の放送中に前回の放送を流したりとか……。
豪 え! 前の放送の同録を番組のBGMとかして流してるんですか?
根 そうそう、それで時々いい所になると音量を上げたりとかね(笑)。
豪 じゃあ、三回目には、一回目のも被っている二回目の放送をまた更に後ろに流している、ってことですよね。だんだん合わせ鏡みたいな状況になってきて(笑)。
根 (唐突に)そっか、思ったんだけど、俺、手持ちマイクで三回目からやればいいんだ。番組を聞いてもらえば分かるんだけど、俺はとにかくさ、マイクと離れた所から声がするんだよね(笑)。
豪 ああ、スタジオの中をウロウロしながら大声で喋ってるらしいですね(笑)。
根 そうそう。ず〜っと動いてるから!
豪 それ、ustreamでもやらないと全然分からないですよ!
根 (鞄の中から同録のCDを見つけて)うん、まぁ、ちょっと聞いてみましょう。
豪 (全員で聞きながら)……これ、何曜日の何時にやってるんですか?
根 え〜とね、土曜日の三時から一時間。
豪 深夜ですか?
根 いや、昼(あっさりと)。
豪 あ、昼なんですか!
根 そう、生放送で(あっさりと)。
豪 『小島慶子キラ☆キラ』とかと同じような時間に(笑)。
根 この後に30分の番組を一個挟んで、その後に尾崎豊の息子の番組があるんで。
豪 え〜〜〜っ!
根 そう、この前も番組の後半にわざと坂上弘さんの「卒業」を流して。尾崎豊の息子の番組を目当てに聞いてる人もいるじゃないですか。
豪 早めにラジオ点けてる人もいますからね。
根 そう、そういう所に気を配ってるんで(笑)。だから、もっぱら番組を進行するのは湯浅さんに任せて。
豪 根本さんは自由にやってるわけですね。
根 そう。でね、番組中に色んな実験もやってみる訳ですよ。例えばこの前やったのは、まず「新座頭市物語」の挿入歌で、「野良犬」という石原裕次郎が歌っている曲があるんですけど、まずこれを45回転で掛けてもらっていいですかね?
豪 オリジナルバージョンですね。
根 (レコードを聞きながら)まぁ、凄くいい曲なんですけどね。これ多分、勝新が歌うハズだったのが、裕次郎に「まぁ兄弟、お前歌ってみろ」って歌わせたんじゃないかと。で、勝新って、歌手として、若い頃の「いつかどこかで」とか、「シーサイドヨコハマ」とか、あの辺って裕次郎を意識してたと思うんですよね。それを閃いたんで、番組の本番中にこの曲を33回転にして流してみたんですけど、そうしたら勝新が現れたんですよ(聞いてみると、裕次郎のゆったりした声が、まるで勝新の声のように!)。まぁ、こんなことを番組中に試してる状況です(笑)。
豪 家で実験しないで、番組で実験してるんですね。
根 そう、番組中に生で実験する、そこがいい所で(笑)。
村崎さんはアナログ電波の人だった
豪 お客さんから結構、質問で来てたのが、やっぱり村崎百郎さんのことで、「DOMMUNEの追悼番組でも話せなかったことがあれば教えて下さい」と。
根 それ〜、話したいんだけどさあ……。話せないことなんだよな〜。
豪 「電波系のファンへの対処法について」という質問もありましたけど、それも繋がってきますか?
根 そうだよね、まぁ、少なくとも、村崎さんを刺した人ってさ、こういうイベントに来てた人でしょ。
豪 で、昨日でしたっけ? 判決が出て、無罪ってことになったんですよね。
根 ……無罪ってことはすぐ、娑婆に出てくるんですか?
豪 そういうこと……なんですかね?
根 おぉ〜、それは願ってもない(世にも恐ろしい表情でニヤリとしながら)。ヘっヘヘ……。
豪 まぁ、色々と計画があるということですね。その計画は、まだ言えない感じですか?
根 そうだね、あの〜、公の場で語るんじゃなくて、口コミ的に広めようってことでね。今、考えてる計画を、DOMMUNEの宇川直宏くんに話したら「マジっすか!」「そりゃ本当にヤバイっすよ!」って、凄く喜んでくれましたからね〜。でも、「もう、やるしかないじゃん」「折角、これだけ条件が揃ったんだからさ〜」って伝えて。
豪 僕もさっき聞きましたけど、もう運命みたいな話ですよね……。ちなみに、「村崎さんは本当はどんな人だったのか教えて下さい」って質問も来てますけど。
根 本当は? ……ん〜、まぁ〜、色んな側面がありました、ということですかね。だから、イメージ通りの所もあればね、全く真逆の所もあって……。
豪 というと?
根 ん〜〜〜、村崎さんとの因縁話ってのもな〜。すると色々、差し障りがあるからな〜。出会う以前に出会ってた、みたいな所があるからね。
豪 根本さんの話って、ホントに全て因縁になってきますもんね。
根 村崎さんの話で言うと、今回、僕が出した「生きる2010」って本に、テレビが一杯出てくるんですけど、必ず上にアナログって書いてあるんですよ。
豪 えぇ。書いてました。
根 で、これは7月23日に、描き下ろし部分の99ページ目を書き終えて、遂に最後の100ページ目にいくぞって時に電話が鳴って、村崎さんのあまりにも突然な死を知って、さすがにその日は何も出来なかったんですけど、でも気分を変えて、最後の1ページだから書き上げて……。で、翌朝の新聞を捲るとさ、「作家・村崎百郎さん刺殺される」って記事が載っててさ、で、他のページを開くと、「来年の本日をもって、地上アナログからデジタルに変わります」って、広告が載ってる訳ですよ。
豪 微妙なシンクロですよね。
根 本の中に、作る時は意識しなかったんだけど、「頑張れ!」って話の中に、お墓が出てくるんですけど、そこに書かれている日付が平成23年(2011年)7月24日で……。地上デジタルになる一年前に、村崎さんがああいう目に遭ったってことは、あぁ、村崎さんはアナログ電波の人だったんだな〜、と思うわけですよ。そういう意味でも象徴的だなと思ってね。
豪 電波は電波でもデジタルではない、と。
根 だからこう、作っていく内に、意味のようなものが出てくるんだな、と。まぁ、それを人は後付けと呼ぶのかもしれないけど……。別の言い方で言えればいいけどね……。理由は全てにあるんですよ。意味っていうのは後からついてくる。で、意味っていうのは変化もするしね。
豪 その時は分からなくても、ですね。
※根本さんの「ある計画」とは、先日、刊行された文庫版「人生解毒波止場」(幻冬舎文庫)の巻末、町山智浩氏の解説文の中に記載されています。是非、ご一読下さい。