だから……信用してる人の作ったものじゃないと食べられないですね。
山脇:(ココアを注文したのをみて)コーヒー飲めないんですか?
溜口:飲めないんです。嫌いなんです。
山脇:苦いのが? すっぱいのが?
溜口:いや、あのね、僕の父親が煙草吸う人で。その直後にコーヒー、ていう、煙草とコーヒーをセットで好む人で。その口が臭くて「あー絶対こういう大人にはなりたくないな」って。本人は「臭くないだろ」っていうんですけど。気づいてないんですよ。
山脇:自分では。
溜口:だからそれは絶対ダメだ、って。
山脇:小耳に挟んだんですが、潔癖性なんですか?
溜口:潔癖です、潔癖です。他人がつくったごはんが食べられなくて。
山脇:他人っていうのは、友達のお母さんとか?
溜口:小学生の時に、友達の家に遊びに行ったら、おにぎりが出てきたんですよ。そしたらおにぎりに、毛が入ってて。
山脇:ああー。
溜口:「うわーきもちわりい、なんだよ」って。そもそも、夏休みに他人の家で出てくる麦茶の味が……あの味が、なんか違うのがまず許せなくて。そこにプラス、おにぎりに毛が入ってて。で、トイレいったらそこも汚くて。「最悪だ、ここの家の衛生面クソだな」って。
山脇:衛生面っていう、そんな観点が子供のころから。
溜口:「きもちわりい、へんなもの体内にいれちゃった」ってそこから、ちょっとした味の変化とか、味付けの違いとかに敏感になっちゃって。
山脇:へえー。
溜口:だって、ひとんちのお母さんって、いっちゃえば、おばさんじゃないですか。おばさんの手から出るエキスって、ちょっと気持ち悪くないですか。いやでしょ?
山脇:まあ、ラップして握ってくれてたらいいなーとは思います。
溜口:そう。ラップしてたらいいんですけど、毛が入るってことは、直にいってるんですよ。だから、それが「あーだめだなー」ってなって。そこから潔癖性ですね。
山脇:そっかー。
溜口:味が違うのが……「知ってる味じゃない」ってなると、もうだめですね。
山脇:チェーン店とかの方が好きですか?
溜口:お金を払って食べるお店だったら、あっちも責任があるじゃないですか。『お金を頂いている』っていう責任が。だからお店はいいんですよ。
山脇:素人がいやなんだ。
溜口:そう。おふくろの味を提供するお店だったら全然いけるんすけど。リアルなおふくろ、友達のおふくろの味は全然ダメ。カップ麺のほうがうまいって思っちゃう。
山脇:でも、そういう場合って大抵は良かれと思って作ってくれるじゃないですか。どうやって断るんですか?
溜口:一応、食べるは食べるんですけど。僕お酒が好きだから、そこでも結構言い訳できるんですよ。お酒飲む人ってあんまり食べないイメージあるから。「もうこれだけで充分」みたいな感じの「呑む時は飯食いません」みたいなタイプのふりをする。めっちゃ腹減ってるのに。
山脇:呑み助のふりをするんですね。
溜口:だから……信用してる人の作ったものじゃないと食べられないですね。
山脇:野生動物みたいですね。食べてくれたら信用してくれるってことですよね。
溜口:本当そうです。恋人とか家族とか、そこらへんは全然いけますけど。
寝てる間は無防備だから、知らないうちに何か入れられてる可能性ありますよ。
山脇:主に食べものに関する潔癖ですか?
溜口:食べものですね。それの延長で、ひとんちに泊まれないってのがあるんですよ。人の家に朝までいるなら、もうずっと起きていたい。
山脇:寝ないってことですか?
溜口:寝たくない。
山脇:朝までいたら一緒じゃないですか、寝るのも、いるのも。
溜口:いや、でも2、3時間だったら起きてられるじゃないですか。
山脇:寝たらいいのに。
溜口:寝てる時に、知らない間に、埃だとか汚い空気みたいな、知らないエキスが鼻とか口から入ってるっていうのが嫌なんです、僕は。想像したら気持ち悪くなっちゃう。
山脇:能動的に息を吸ってるのは平気なんですか? 寝るとだめ?
溜口:起きてる時は生きてるから。だって、寝てる間は無防備だから、知らないうちに何か入れられてる可能性ありますよ。
山脇:いやー。
溜口:そんなことないと思うじゃないですか。でも入ってるんですよ。わかんないけどね。
山脇:まあ。他人の家に泊まると、体調壊したりはしやすいですね、確かに。
溜口:喉がイガイガになったら、乾燥かなとは思うけど。もしかしたら、変な何かを……って可能性もありますよ。
山脇:でも、もう泊まらないですね。人の家に泊まってたのって、大学生とか、20代中頃くらいまでで。
溜口:いけます? 雑魚寝みたいなのって。
山脇:劇団時代、ヨーロッパ企画にいたときは事務所に住んでたんですよ。2階に部屋が住み込み用の部屋があって。
溜口:ヨーロッパハウスですか?
山脇:そうです。二畳半くらいの部屋をあてがわれてて。作業がたてこんで帰れなくなった男子は横の大部屋で寝てたりとかしていて。
溜口:えー。
山脇:あとは、名古屋の七ツ寺って劇場が、2階が泊まれるようになってたんで、ツアー中はそこで雑魚寝したりしてました。当時は20代だったんで、ワイワイ、みたいな楽しさがあって。
溜口:そっか……雑魚寝だと、足の臭いとかあるじゃないですか。ねえ、そこらへんが……
山脇:今は自分のコンディションがあるから、ホテルとりますよ。
溜口:でしょ、絶対そうでしょ。雑魚寝で、誰かの足の近くで寝てて「うわ。くさいな、いやだな」と思ってても、寝ちゃったら気にせずどんどん入ってきちゃう。そのくさいのが。
山脇:嫌がることもできずに。
溜口:そう。起きてたら、抗うことはできるんだけど、寝たらもう、無防備じゃないですか。そういうことなんです。目の前に汚い生ゴミとか臭い靴下とかやられても、気づかないでしょ?
山脇:気づかない、かなあ。
溜口:怖くないですか? そういうことですよ。
スプーンはそのひとの身体じゃないですか。
山脇:そしたら……私はそこまで潔癖じゃないかもしれないです。
溜口:えーじゃあまわし飲みは全然いけますか?
山脇:それは……どうかなあ。
溜口:人によるって感じ?
山脇:状況による……あ、この人はいやだな、っていうのはもしかしたらあるかもしれないですけど。
溜口:どこらへんがいやですか、誰ですか。女の子同士はいけます?
山脇:女の子はいけます、けど、まわし食べでアイスクリームとかは「いやだな」って思うかも。
溜口:アイス、わかる。わかります。
山脇:なんか。粘着質だからかな……
溜口:アイスとか、カレーでしょ?
山脇:あ、そうそう。
溜口:ちゃんと、こう取るやつでしょ?
山脇:ねぶるやつ。
溜口:スプーンでねぶるやつ。あれはやだ。
山脇:ラーメンの麺とかは、まだ、分離があるから、いいかな。
溜口:そう、鍋はいけるんですよ、直箸とかでも。スプーンごとねぶるやつは、その人ごといってる感じありますよね。スプーンはそのひとの身体じゃないですか。
山脇:一回入ってるから口に。
溜口:考えすぎだろっていわれるんですけど、考えちゃうんですよ。想像しちゃうというか。
山脇:今、おいくつですか。
溜口:今は32歳で、1月で33歳になります。1984年、1985年生まれの学年です。
山脇:うちの夫より一個上になるのかな。
溜口:弟?
山脇:あ、夫です。
溜口:夫? え? 結婚してるんですか? 知らなかった! えー!
山脇:『硝子細工の如く』の稽古が始まって、もうだいぶ経つのに。
溜口:あー、知らなかった。結婚してるんですね。
山脇:してます、してます。4歳下の夫がいます。
溜口:えー!
山脇:まあ、とにかく、してるんですよ、結婚。
溜口:ヨーロッパ企画には、10年くらいいて、やめて。何かあったんですか?
山脇:約7年いたんですけど。本公演にずっと出続けてて、グローブ座も本多劇場も出たっていうので、私の中でちょっと糸が切れた、ていうのはあったかもしれないです。
溜口:ある程度やりたいことはやった、と。
山脇:20歳くらいのときに、松尾スズキさんの『悪霊』を本多劇場で観て、「あー本多に出たいな」って目標にしてて、それが叶って。
溜口:山脇さんはもともと関西だったんですか?
山脇:出身が栃木で、大学から東京……わたし早稲田なんですよ。
溜口:え? 早稲田からヨーロッパ企画入るために京都に?
山脇:当時よく観にいってたら、上田さんにヘッドハンティングされたんです。
溜口:わざわざ京都までいってたんですか?
山脇:東京公演があれば観にいって、学生だからキャピキャピしてて「めっちゃおもしろかったでーす」って。そうこうしてたら。
溜口:早稲田の頃?
山脇:はい。最初は客演で、夏休みだけ期間限定で。それで「あー楽しい!」と思って、移住しました。
溜口:東京にいたい、っていうのは、なかったんですか。
山脇:なかったです。その頃はなぜか、そんな東京至上主義じゃなかったので。
溜口:面白いものを、って。
山脇:ヨーロッパ企画が一番面白いな、って。
溜口:逆輸入的な感じですね。
「これはちゃんと”芸人”と名乗らないといけないな」って。
山脇:溜口さんは、劇団・拙者ムニエルに入ることになったのはどういういきさつで?
溜口:日大藝術学部だったんですけど、就職するのか、このまま役者の道に進むのか、周囲のみんなも選び始めてたのが、20歳の時期で。
山脇:進路を考える時期が。
溜口:僕、阿部サダヲさんが大好きだったんで、「あんな風になりたい」って小劇場のオーディションを受けてて……それこそ大人計画とか、第三舞台とか。で、兄貴が演劇大好きだったんで、拙者ムニエルも名前を聞いてて「あ、聞いたことあるから応募してみよう」って、そしたら受かって。だからそんなに、特別そこに入りたい、というのではなくて。
山脇:就職活動みたいな感じで?
溜口:そんな感じです。進路を決めたかった。
山脇:20歳だと……12年前だから……
溜口:2005年とか、2006年くらい。
山脇:同じ頃、小劇場界にはいたんですね。
溜口:そうですそうです。ヨーロッパ企画ももちろん知ってたし。でもなんか、やっぱ尖ってたんで……演劇界で20歳やそこらってあんまいないじゃないですか。だから「よっしゃ、これ絶対売れるじゃん。こんなに若くて、僕でも知ってるような有名な劇団に入れてるから、もう絶対、将来勝った」って思ってて。結局、劇団の事務所が倒産……まあ、たたむ、ってなって。「どうしよう、新しい事務所探さなきゃ」ってところに、キングオブコントが始まって。
山脇:はい。
溜口:それで、ネタ作ったりやったりする場所がほしいから、ってことで今の事務所、ASH&Dコーポレーションにネタみせにいってたら、じゃあうちで預かりするか、ってなって。
山脇:ラブレターズの相方、塚本さんとの出会いは……?
溜口:もともと知り合いだったんです。同い年なんですけど、むこうが一浪してて、大学の先輩後輩で。ずっと連絡とってなかったんですけど、キングオブコントのときに連絡したら、「ちょうど俺も溜口さん誘おうと思ってて」みたいな。
山脇:ええー。ご縁。
溜口:ASH&Dも、お芝居をしてもいいし、芸人ももちろんやっていいし、っていう事務所で、僕の中で条件がすごくよかったんで。
山脇:なるほど。
溜口:だから最初、『お笑い芸人』ってあんま言ってなかったんです、僕。演劇にまだ気持ちが残ってたから『お笑いユニット・ラブレターズ』って(笑)。
山脇:一時期めっちゃありましたね、『ユニット』って表現。
溜口:今考えたら、すげえだせえなって思うんすよ。ユニットってちょっと、逃げ道つくってる感じがださいな、って。やっぱり本気でやってる芸人さんを横で見てて、かっこいいなと思ったんで、「これはちゃんと”芸人”と名乗らないといけないな」って。
不思議でしかたないですもん。家族でもなんでもないんですよ、だって。
溜口:やっぱり不思議ですよね。まったくの赤の他人で……結婚相手でも恋人でもないのに、横に相方がいるんですよ。映画とか、CMとかドラマとか、今回の舞台とか出たときに、相方は相方で、コンビとして仕事ができなくなっちゃうわけじゃないですか。
山脇:ああ、そうか、そうですね。
溜口:うち、稼ぎは折半なので……なんでこんな赤の他人のことを考えながら生活しなきゃいけないんだって思うと、不思議でしかたないですもん。家族でもなんでもないんですよ、だって。
山脇:芸人の方とお話しする機会が増えて、改めて『コンビ組む』ってすごいな、って。劇団はそこまで、ぎゅっとしてないじゃないですか。団体の中に所属してる同士、みたいな。
溜口:言っても各々、個人事業主ですからね。
山脇:でも、コンビ組むって、それこそ『結婚する』みたいな。
溜口:いや、本当そうですよ。
山脇:よくその人を選んだなー、とか。なんでその人を選んだんだろう、とか。その後を左右することですし。
溜口:かといって、契約書を書く訳でもないし。
山脇:やめる場合の条件とかも決めてないし。不思議な結びつきですよね。
溜口:不思議ですよ、ほんと。
山脇:だからコンビ組む、っていうのは私にできないな、やきもち妬いちゃうだろうなと思ってます。相手の動向すべてが気になって。
溜口:相手が売れたら、嫉妬しちゃうし?
山脇:嫉妬もするし、知らない人と仲良くしだしたらすっごい嫌だと思う。
溜口:そっかそっか。逆に自分が、相方より売れてたらって考えるとどうですか?
山脇:「私の稼ぎで食ってる」とか言うかもしれないなあ、って。
溜口:すっげえ嫌なやつ!
山脇:「努力しなよ」とかいいだすかもしれない……
溜口:すっげえ嫌な奴ですよ。
山脇:だから向いてないです。
何もしてないのに仕事がきたりとか、それは相方がすっごい頑張ってくれてるからで。
溜口:コンビって、マイナスな面も……マイナスっていうのもあれですけど。自分の稼いだ物や作った物があっちの手柄に、ってこともありますけど、でも絶対に逆もありますんで。何もしてないのに仕事がきたりとか、それは相方がすっごい頑張ってくれてるからで。だから、楽なときは楽なんですよね。何もしないでも、ネタ書いてくれるから、それをやったらキングオブコント決勝行けたし。「わ、すげえ」って。あっちが有名にしてくれたんで、そう考えたら、やっぱり……
山脇:持ちつ持たれつ、みたいな。
溜口:そう。映画とかドラマとかCMのオーディションとかって、なかなか受からなかったりするじゃないですか。自分の力じゃないのに、番組とか出られるのって、やっぱ、あーこれは、すごいなって。
山脇:でもそれを「自分の力じゃないのに」と思える謙虚さが、私にはないかもしれない。
溜口:どうします? これが営業的なトークだったら。
山脇:ええ!
溜口:いや、そんなことないですけど。ほんとに、ネタに関してはなんにもやってないんで。100ー0で向こうが書いてるから。
山脇:ロフトプラスワンでやったUFM(アルティメット・ファニー・モノローグ)独り言バトルに出てらしたときは……あれは1人でマイク前でネタをやる、っていう大会でしたけど、あのときのネタは自分で考えたんですか?
溜口:あれは、自分ですね。
山脇:どうでしたか、やってみて?
溜口:もう……無力さを……。1人で舞台に立ってネタをやるってことがないので……ツッコミもないし、逆にボケてくれないし、ああもう不安で仕方ない、やだやだ絶対無理だ、って。こんなに自分ってつまんないんだ、無力なんだ、って。
山脇:え、おもしろかったですよ。
溜口:いや。30歳すぎて、こんな無力さを痛感するって思わなかった。天狗だったんだな、って。
山脇:え、天狗だったんですか。
溜口:天狗になってました、軽く。「自分でも何かできんだろ」って思ってましたから。
山脇:見ててそんなふうに思わなかったですよ。楽しそうにやってたな、って。
溜口:ほんとですか。じゃあよかった。
ガチガチに「この台詞が面白いんで、これをこのままやってください」はいけるんですか。
山脇:どっちがネタ書いてるか、って実はあんまり知らないな、っていうのもありますよね。
溜口:興味ない人は、どっちがつくってるかって、そんなに興味ないですもんね。山脇さんは、どっちタイプですか。作る側か、そうじゃないかだと。
山脇:つくりたくない、ですね。恥ずかしくなると思う。自分がつくったものをやるなんて、っていう。人から言われたことを一生懸命やって、いい効果が出たらいいなあ、って。
溜口:でも、ガチガチに「この台詞が面白いんで、これをこのままやってください」はいけるんですか。
山脇:それが面白いって信じられれば……「このひとすっごく面白い」って思えてたら、いいです。
溜口:いきなりコンビ組んで、そういう相手に当たるかどうかはわかんないじゃないですか。意見しあった方が面白くなる可能性もあるわけじゃないですか。でもやっぱ、言われたことをそのままやる感じですか?
山脇:本当に相手によるかなあ。でもどっちかいうと、言われたことをやる方が……。自分の作為が好きじゃないんですよ。こうしてやろう、とか自分のスケベ心がすごい嫌いだから。
溜口:だから、言われたまんまやる、ってことですか?
山脇:はい。スケベになりたくないんですよ。こう見えたい、とか考えるのが。
溜口:むちゃくちゃいい役者さんじゃないですか。
山脇:若い時むちゃくちゃ怒られたからですよ。北区つかこうへい劇団の研修生時代に、スケベな芝居すんな! 身体揺らすな! 真っすぐ立っとけ! って。
溜口:「言われたことをそのままやれ!」って。
山脇:「それしかねえんだ、お前らは」ってボコボコに言われてたので。
溜口:僕もつかこうへい劇団にいたから、山脇さんは先輩なんですよね。
山脇:溜口さんは何期の研修生ですか?
溜口:えー、何期だろう、まったく覚えてない。
山脇:私たち花の10期です。
溜口:花の?
山脇:成河がいた代なので。
溜口:あー、成河さん!
それで、音楽流れたりするんですよね(笑)。
山脇:研修生の課題の戯曲、『熱海殺人事件』でした?
溜口:熱海です、熱海です。犯人役でした。でも、全然記憶がないんだよな、いい思い出がないから。
山脇:大学の時に、つかこうへい劇団にいってたんですか?
溜口:そうです。僕、大学があんま好きじゃなくて……みんな、授業サボってディズニーランドとか行くような、日藝入ったらハイもうここで終り、みたいな人ばっかりだったから。
山脇:日藝って、ちょっとポップなイメージですよね。
溜口:授業とかやってても、カリキュラム的に「これ、うまくならないだろうな……」っていう、うっすい、ガワの授業しかやらないんで。
山脇:動物のモノマネの授業があるっていう、あれは都市伝説ですか?
溜口:あー、そんなのもあったかもしんない。ほんと網羅するんですよ。戯曲もやるし、コンテンポラリーダンスも、日舞も洋舞も、タップダンスも、全部やるんですよ。でも週に一度くらいしかやらないので、それだけだと身にならないな、っていうんで、学校終わって、そのまま北区の稽古にいって。
山脇:私も大学時代に研修生だったんですけど、やっぱしんどかったですか。
溜口:しんどい。思いっきりビンタされるじゃないですか。気合い入ってない、とかって。
山脇:あと、稽古開始時間に汗をかいてないと怒られますよね。
溜口:え、俺それ知らない。
山脇:早めにいって、ストレッチしてダンスして、汗ドロドロで「よろしくお願いします」って。そうじゃないと「やる気あんのか」って言われてました。
溜口:えー。
山脇:だから『硝子細工の如く』で『殺陣師 左近』のコントやってると記憶甦ってくるんですよね。
溜口:あのときの、あの感じの。
山脇:全然コントじゃなくて。トラウマです。
溜口:あれありました? ダッシュで往復、行ったり来たりするやつ。
山脇:ありました。あと、自分の名前をとにかく叫ばされるっていう。
溜口:そうそう、何期! なんとかかんとか!
山脇:「10期! 山脇唯!」とかいって。
溜口:それで、音楽流れたりするんですよね(笑)。
山脇:そこからダンスが始まる。それが決まってないと「そんなんじゃ音が出ねえよ!」って音が流れない(笑)
溜口:「ハイ、はじめから!」って連帯責任で。もう軍隊みたい。
山脇:いやほんとに。懐かしい。
溜口:僕、そこから、喉が弱くなったんですよ。
山脇:嗄れてもやらなきゃだめですからねえ。
溜口:卒業公演で最後の方、喉とばして。シャアシャア言いながら、ほとんど台詞聴こえない状態で最後までやって。あれでだいぶ声変わりしました、僕。
あれ以上しんどい思いしないじゃないですか。
溜口:やっぱりつかこうへい劇団にいく人って、芝居を根底から変えたいって人ばっかりじゃないですか。
山脇:はい。私もちょっと頭おかしかったですもん、あのとき。
溜口:でしょ? 芝居中に何回も思いっきりディープキスとか、おっぱい揉むとか。ああいう芝居だから。
山脇:まだ20歳になるかならないかで、色気なんてあるはずないのに、「根岸季衣さんは稽古場にいた男性全員を勃起させたんだ。お前はできてない!」とか言われて。「そんなのできるわけねえだろ」って思うんですけど、「お前は足りてない、足りてない」って。言われまくって、20人くらいいる研修生の男子全員にキスしては突き飛ばされるっていう地獄のエチュードがあって。
溜口:なんだその稽古。
山脇:全員分それやったあとに「じゃあさっきの台詞言ってみろ」、ってなって、言ったら「よし、それだぞ」って。
溜口:お芝居自体が、ちょっと、もう、男に恨みとか、なんか、女の強さを出したりとかね、そういう芝居だから。
山脇:そんなの出るわきゃないよ、20歳で。
溜口:でもやったんですね。
山脇:やってました。
溜口:でもやっぱり、1年通ったらそれなりに自信もつきますよね、あそこはやっぱり。
山脇:2度とあれ以上の現場はない(笑)。
溜口:そうそう、あれ以上しんどい思いしないじゃないですか。
山脇:逆に、ほかの若者たちをぬるく感じてしまうっていう弊害もあって。「なに? あんな目にあってないのに舞台立つの?」って。
溜口:わかる、わかる、ほんとそうです。あとね、1人だけ声量がでかかったりするんですよ、よその舞台行ったら。普段からずっと叫んでるから。
山脇:会話劇に戻れない。「そんなに前向かなくていいよ」ってよく言われてました。
溜口:みんな藤原竜也みたいな芝居してるから、ね。「なんでだー!!」みたいなね。普通の、こういう会話も大声だし。
山脇:もっと声だせ! って怒られてね。普通の会話なのに? って。
溜口:でもそれがつかさんの芝居だから、観てて、面白いことは面白いんですよね、すごく。
山脇:観てられますよね。面白い。
溜口:やってるほうはしんどいですけど。あれは、だいぶ良い経験でしたね。
山脇:あれより辛いことはないですもん、たぶん。
溜口:頭も使いますしね。口立てでばんばん台詞変わるじゃないですか。だからそこらへんも鍛えられますよね。相方に直前に台詞変えられても、「あ、いいよ」って言えますもん。
山脇:若かったからできたんだな、って。
溜口:じゃあ、あそこからヨーロッパ企画って、ほんと楽園ですよね。
山脇:「こんなに頑張らなくていいんだー」って。素直にやってたら、上田さんの脚本が面白いから、勝手に面白くなるから。いいなあ、って。
溜口:本多さんとか、見てたらすごくいいですよねえ。
山脇:無理してなくて、いいですねえ。
たとえばコントを観て「この人のお芝居いいなー」とか「すごいな」とか思う人います?
溜口:芸人さんのお芝居……たとえばコントを観て「この人のお芝居いいなー」とか「すごいな」とか思う人います?
山脇:あー、芸人さんのお芝居だと……私、しずるの池田さんがいいなあ、ってすごい思うんです。
溜口:ああ、いい! すごくいい!
山脇:ちょうどいい、良さというか。
溜口:そう、わかる、わかります。
山脇:コント過ぎない、演技すぎない。ちょうどいいバランスのところでやってて。
溜口:漫画にも見えるし、でもお芝居にも見えるし。
山脇:いる人に見える。ちゃんと存在してる感じがあって。声も特徴あるし。
溜口:すっごいわかる。厭味がないですよね、『やってる』っていう感じがないから。
山脇:あと、鬼ヶ島のアイアム野田さんは、それこそ『熱海殺人事件』とかやったらどうなるのかな、って興味あります。
溜口:確かに、ちょっと怪演しそうですよね
山脇:すっごく輝きそうだな、って。それこそ犯人役とか。
溜口:全力を出すところが野田さんのいいところだから、合ってるかもしれないですね。純粋で、根っこがクズで、純粋ゆえに、愛のために人を殺しちゃう。いいですね。
溜口:芸人さんの舞台とかは、けっこう観てるんですか。
山脇:観させてもらってます、はい。
溜口:ASH&Dだと、ギースさんと、ラブレターズと……?
山脇:しっかりご挨拶できてないんですけど、阿佐ヶ谷姉妹のお姉さんと高校が一緒なんですよ、宇都宮女子高校。
溜口:え、頭がいいところじゃないですか。
山脇:そうなんですよ。
溜口:そんな、自分で言います? 進学校なんですか?
山脇:中学で上位だった女子が行く県立高が宇都宮女子高校です。
溜口:江里子さん、教員免許持ってますしねえ。山脇さんは、最初から早稲田志望だったんですか。
山脇:日藝も受けたかったんですけど……高いじゃないですか。
溜口:受けるのも高いし、学費も高いし、ずっと高いんですよ。
山脇:だから親が「日藝はだめだ」って。
溜口:お父さんは何にならせたかった、とかあるんですか。それこそ教師とか。
山脇:とにかく大学に行かせたかったんですね。その後のことも考えてくれたんだと思いますけど。私は演劇の専門学校に行くつもりで、勝手に試験受けて、夏くらいに「進路決めた」っていったら「そんなのだめだ。今から卒業までの時間をどう過ごすんだ。受験勉強は絶対しなさい」ってんで、「じゃあ記念受験で早稲田」って。
溜口:記念受験でいけるとこじゃないでしょう。行く気なかったんだったら、勉強だってしてないのに。
山脇:病的に集中して。ちょっとそういう病気なんですよ。マシーンのように早稲田の赤本だけをやり続けて。
溜口:天才じゃないですか。
山脇:でも、文学部は試験も国、英、小論文だけなんですよ。数学とか理数系は壊滅的。
溜口:いやー、すごいわ、それは。
自転車乗って帰ってたら、バッて横から倒されて、チャリ奪われて。
山脇:溜口さんは、ご出身が埼玉ですよね。
溜口:埼玉です。
山脇:学生時代は、どんなだったんですか?
溜口:それは……もう、イケてない……
山脇:どうして急に目を伏せて。さっきまで目をキラキラさせて話してたのに。
溜口:死にたくなるような学生時代だったんで。いじめられてたんで。
山脇:ああ……。
溜口:中学校が一番ひどかったんです。単純に身長も低いんで、いじめられやすい対象、っていうのと……野球部に入ってて。他のみんなは少年野球出身だったんですけど、僕はリトルリーグで、本格的なクラブチームに入ってて。
山脇:違いは、何かあるんですか。
溜口:軟式と硬式の違いです。少年野球は軟式、リトルリーグは硬式。で、中学校の部活動で、みんなと一緒に軟式をやるんですけど、そこでなんか「あいつ硬式上がりだぞ」って。監督からも好かれてたんで、もう気に食わない、みたいな。
山脇:そういう、ちょっと目につくところから。
溜口:すぐレギュラーになったし、「なんであいつが」みたいな。みんな同じ小学校だし、地元一緒で仲良いんで。
山脇:中学校ってそういうのありますよね……
溜口:しんどいですよ。もう、2階からカバンとか教科書バンバン投げられるのは当たり前だし。僕、自転車で通ってたんですけど、自転車乗って帰ってたら、バッて横から倒されて、チャリ奪われて。奪った奴がガーッて漕いで、ピョン、て降りるんですよ。そしたら自転車だけ、その先にある川に突っ込んで。
山脇:ひどい。
溜口:週1くらいでそれがあって。部活終りで、ズボンまくって自転車とりに川に入って。
山脇:漫画の世界みたいですけど……。
溜口:ガチのやつです。
「全部応えてやるのが、最高の仕返しだよ」って。
山脇:その頃の同級生には今、会ったりするんですか?
溜口:会います、会います。たまに地元帰ったら、駅とかでばったり会ったりするんですよ。みんな地元の奴ら同士で結婚してるから、そこから出ないんですよ。
山脇:どんな感じなんですか。
溜口:「あー久々じゃん、テレビ観てるよ」とか。それこそテレビ出たときは、誰から調べたんだ、ってくらい、知らない番号から連絡きたりとかして。
山脇:へえー! 臆面もなく。
溜口:最初はずっと無視してたんですよ。でも、一番最初にキングオブコント出た時に「知らない奴からどんどん連絡きて困ってるんですよ」って大竹まことさんに言ったら、「無視するのは本当の仕返しじゃないな。連絡とって一緒に飯いったりとか、結婚式のコメントとか、全部応えてやるのが、最高の仕返しだよ」って。
山脇:かっこいい。
溜口:かっこいいですよね。「いじめられてた人間が、今は地元で『すげえ奴』になってるって、それってかっこいいだろ」って。ああ、そういうことか、って。
今もこうやって山脇さんと喋るのも、もしかしたら本名だとしんどいかもしれない。
山脇:高校はどうだったんですか?
溜口:「地元に絶対いたくない」って思って、離れた学校で高校デビューしたい、ってちょっと頑張って勉強して。もともと女子校だった、最近共学になったような高校を受けて、合格して。40人クラスで男子が7人しかいないっていう。
山脇:女子が多いと、けっこうおだやかな世界だったんじゃないですか。
溜口:おだやかじゃないんですよ、それが。その高校は普通科、外国語科、情報処理科ってあって、僕は情報処理科だったんですよ。パソコンとかやる、みたいな。だから集まった奴ら、7人みんなオタクみたいなのばっかりで。
山脇:7人のオタク。
溜口:そう、まさに7人のオタクで。埼玉県中の弱いやつが集まった学校だから、女子の力がどんどん強くなってて。ほぼ女子校だから、体育の時間とか、男子がいても、普通に着替えたりするんですよ。僕らなんて雑魚だから、別に見られてもいいでしょうし。
山脇:そういう時はどうしてたんですか。見ないふり?
溜口:見てないふりっていうか、廊下で着替えるんですよ、僕ら。
山脇:気遣いを。
溜口:掃除の時間も毎回怒られるし。「そこやっといてよー!」って。
山脇:大変な思いをしてきたんですね……苦労、じゃないですけど……
溜口:なんですかね。でもそれが、原動力になってることはなってるんです。
山脇:だからなのかな……溜口さんってちょっと年齢不詳ですよね。
溜口:ほんとうですか?
山脇:何歳なのかわからない。
溜口:どっちにも見えるって感じですか?
山脇:若いですけど、若々しくもないかな、意外と落ちついているというか。浮き足立ってないよな、っていう。
溜口:僕、『溜口佑太朗』って芸名なんですよ。それで最近思ったんですけど、けっこう芸名なのがでかいな、って。
山脇:でかいっていうのは?
溜口:自分を隠して7、8年やってるから。
山脇:7、8年、溜口佑太郎という……人格で。
溜口:本名、澤口佑樹っていうんですけど。だから、溜口になることで、一個のっけて喋れるというか、今もこうやって山脇さんと喋るのも、もしかしたら本名だとしんどいかもしれない。
山脇:これは全然スピリチュアルな話ではないんですけど、確かに今、本名を名乗ったときに、輪郭がふわっと弱まった感じが。
溜口:本当ですか? え、本当に?
山脇:別の人が……
溜口:いる感じします?
山脇:しました。
知らない貝にいる感じなんですよ。
溜口:これもスピリチュアルというか、かっこつけてるわけじゃないですけども、たまに自分が、こう、俯瞰で見えてきたりするんですよ。幽体離脱じゃないですけど、「こいつ、どういう人生でどういう死に方するんだろう」とか「こいつ絶対結婚できないだろうな」とか。
山脇:なんか……不思議ですね。バキバキに名前っぽい芸名を名乗ると、なんかそうなっていくのかな……
溜口:本当に、ヤドカリみたいなもんで。知らない貝にいる感じなんですよ。
山脇:へえー。
溜口:だからもう、この世の中に澤口佑樹はいないんですよ。
山脇:え、そんな、世にも奇妙な物語みたいなことを。
溜口:世にも奇妙、ほんとにそんな感じ。家に帰ったら、ばっと「あ~」ってなるんでしょうけど。今は……
山脇:人格が2つある、みたいな感覚……?
溜口:なんですかね……。でも役者さんとか音楽やってる方も、スイッチが入るっていう感覚ないですか?
山脇:どうだろう……。写真を撮ってるゴメスくんも、PANORAMA FAMILYって名前で音楽とか写真とかをやってるわけだけど……
(PANORAMA FAMILY:ライブの時と違うねっていわれたりはするけどねえ。)
溜口:常にそんな感じで、それで7、8年いたら、なんかわけわかんなくなっちゃうっていうか。
山脇:だからかなあ、今、その、過去を聞きましたけど、なんかこう……不思議と、結びつきにくいというか……
溜口:魂が宿ってないんだと思います。
山脇:なんか不思議な感じありますもんね。
溜口:言ってても気持ちが入ってないな、っていうのがすごいわかるんです、自分でも。
山脇:パーソナルなことを聞きたいんですけど、それは本当のパーソナルなのか、溜口佑太朗としてのパーソナルなのか、っていうとこまできちゃった。
溜口:本当にそうだと思います。気持ち悪いですよね。僕も気持ち悪いんです、だから。
山脇:ご結婚の予定とかって……
溜口:ないです、ないです。多分できないと思います。
山脇:何故できないってご自分で言うんですか?
溜口:いや、もう想像が、できないです。
山脇:ああ、でもそれも、溜口さんが結婚するのか、澤口さんがするのか、っていうことにもなるのか。
溜口:確かにそうかもしんないです。澤口は、地元の、初めて好きになった子と結婚する感じなのかもしれないですけど、僕は僕でもう、アッパラパーな感じだから、なんならグラビアアイドルとか、いくのかな、とか思ったりもするんです。わかんないけど。気持ち悪いでしょ。
山脇:溜口さんのなかに、マネージャーの目もある、みたいな感じですかね。「この人を、これからどうしていけば面白いのかな」みたいな目が。
溜口:だから、わかんないです、僕。幸せになれるのかな、とか……。なれないだろうな、っていう感じ……
山脇:大変ですね。
溜口:大変は大変だけど……
山脇:おもろいですか。
溜口:そうですね、はい。
全員を好きでいたいですもんね。
山脇:じゃあ好きな音楽はなんですか?
溜口:え、それは……どっちに聞いてます?
山脇:えっと、じゃあ、溜口さんは。
溜口:僕、アイドルが好きなんです。
山脇:そういえば、ももクロがお好きだって。どこがお好きですか。
溜口:なんだろうなあ。本当に人生をまっすぐ生きている感じというか。目の前のこと、壁を一個一個乗り越えてる感じ。
山脇:健康な感じですかね。
溜口:そうです。ちゃんとまっすぐ、プロデューサーとかスタッフに言われたことに取り組んでて、裏を考えていない感じ。それがいいなって思うんです。自分にはない感じで。「君のために、僕が笑顔にする」とかいう歌詞があったりするんですけど、それが本気に聴こえるんですよね、ももクロは、ちゃんと。
山脇:誰が、じゃなくて箱で好きですか。
溜口:箱で好きですけど、僕はしおりんが好きですね。
山脇:黄色の子ですね。
溜口:他にも色んなグループいますけど、やっつけでやってるようなアイドルもたまにいたりするじゃないですか。
山脇:何かのステップなのかなーとかが見えるような。
溜口:はい。そういうのがなくて、本気でグループのことを考えている子たちなので。
山脇:人数が少ないのも良いかもしれないですね、ぎゅっとしてて。
溜口:みんな同じ事務所だったりしますしね。山脇さんは、アイドル好きですか?
山脇:もともとハロプロが好きで。ハロプロの『女子校の強い部活』みたいな感じが好きなんですよ。AKBグループは『共学でミスコンやってる』みたいなところがちょっと苦手です。個人戦というか。
溜口:あれはあれで、個々の力や個性が磨かれて、っていう良い面もありますけど、チームとして、ってなると、チームを応援する気持ちが芽生えなさそうですよね。勿論あそこまで売れるのもすごいことだと思うし。ああいうやり方もあるんだとは思うんですけど。
山脇:最近だとlyrical schoolが好きです。
溜口:あ、イベント一緒だったじゃないですか。
山脇:そうなんですよ、アフタートークやイベントで可愛いな、と思って。で、PANORAMA FAMILYと共通の友人達がlyrical schoolの音楽を作ってたりするんで、こないだライブいったんですけど……すごい良かったんですよ。やっぱ5、6人ですよね、アイドルって。
溜口:ベストの人数。全員を好きでいられる。
山脇:そうなんですよ。
溜口:全員を好きでいたいですもんね。人数いっぱいいて、その中の1人だけ応援するって結構しんどいですよね。その子が出てなかったり、目立ってなかったりするとしんどい思いしちゃいますもんね。
山脇:本当に良かったです。
溜口:lyrical school、どういうところがいいですか。
山脇:可愛いし……曲もいいし……個々が、素直に、リリスクをやりたくてやってそうなところですかね。
溜口:リリスクで大きくなって、みんなで大きい舞台に立ちたい、ていうね。
山脇:そういうの、見ててわかりますもんね。
溜口:わかります、わかります。
『下北とか歩いている所を誰かに見られたい』っていう気持ちがあって(笑)
山脇:お洋服とかどこで買うんですか?
溜口:(笑)それ聞きたいんですか?
山脇:みなさんに聞いてるんですよ。
溜口:僕、基本、下北沢です。古着屋さんとか。でもそんなに……適当ですね。
山脇:いつもわりと可愛い格好をしてらっしゃいますよね?
溜口:そう、ですね。やっぱりサブカルが好きなので……。
山脇:カルチャーの感じ。
溜口:サブカル好きだし……なんだろ、これもあれですけど、『下北とか歩いている所を誰かに見られたい』っていう気持ちがあって(笑)
山脇:(笑)はい。
溜口:ビレバン入って本を選んでいるところを、誰かに目撃されたい、とか。
山脇:ええ。
溜口:今はもう、本当に好きだから、雑貨屋さんとか、色んな所に行きますけど。昔は、ただただ”下北憧れ”があったんで、ビレバンいって、古着屋さん行って、ディスクユニオン行って、無駄にレコードをこうサクサクやって、ジャケ買いするぞ、みたいな。なんかいいジャケットのないかな~って探す、みたいな。全然楽しくないのに。
山脇:楽しくないんですか!
溜口:全く興味なかったから、その頃は。でも、『下北いる感』をみんなにアピールしたかったから「これやってるところを誰か見てくれ」って。知り合いの人とか、ライブ観に来たお客さんとか、誰か声かけてくれねえかな、とか思いながら、やってたことはありました。
山脇:多少、自己プロデュースみたいな目を持ってるんですよね、やっぱり。
溜口:それはあるかもしれないです。本当に……自分が、本当にどこにいるのか……あれですよねえ。気持ち悪い。でも好きは好きなんです、本当に。
山脇:でも、こう話をして、そういうことがわかったら、距離が縮まった気がしたんですけど……
溜口:本当ですか? 本当に?
山脇:本音がどこにあるのかな、っていうのがあったんですけど。
溜口:ああ、今までは?
山脇:どんな人なのかなあ本当は、って思っていたんですけど、こういう人なのかあ、って。
溜口:わかってくれました?
山脇:やや、わかったような、気が。
溜口:それは、ありがたいですね。
山脇:溜口さんのパーソナルな部分って、そんなにネットとかにも残ってなくて。
溜口:全部、偽りだったり、脚色だったり、よく思われたくて盛ってたりとか、そういうのも多かったりしますよ。過去の自分のをみていると。
山脇:だから、いい話が今日は聞けたんじゃないかなって。
溜口:本当ですか? それは、よかった。
溜口佑太朗
1985年1月19日生まれ。埼玉県富士見市出身。ASH&Dコーポレーション所属。日本大学藝術学部映画学科卒業。特技は野球、日本舞踊、タップダンス。趣味はカラオケ。2006年より拙者ムニエル劇団員。大学時代に出会った塚本直毅と2009年4月にコンビ・ラブレターズを結成。キングオブコント2011、2014、2016決勝進出。歌ネタ王決定戦2017にASH&Dコーポレーション7名によるユニットとして出場、初の決勝進出となる。10/31~11/4『バッファロー吾郎Aコントセレクション 硝子細工の如く』に、11月24日にはロフトプラスワンで行われる『UFM~第二回独り言バトル~』に出演予定。12月16、17日に渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールにてラブレターズ単独ライブLOVELETTERZ MADE10「SWEET da PARTY」が行われる。
山脇唯
PANORAMA FAMILY
2006年頃結成。2009年1月、3MCから1MCへ。以降はゴメス1人のユニットとなる。
渋谷Organ.b第1火曜日mixx beautyを中心に、
年間60本ペースで精力的にライブを行う。
remix、客演、ビールケースの上から幕張メッセ(countdown japan fes 3年連続出演)まで、大中小規模なイベントに参戦する他、トラック、楽曲提供など活動は多岐に渡る。レぺゼン宮城県女川町スタイル。SLIDELUCK TOKYOの第一回ファイナリストに選出。雑誌STUDIO VOICEでとりあげられる。2016年3月写真集「fastplant」発売するも即SOLD。