2017年5月にユニットコントライブ「すいているのに相席5」、6月にアイアム劇団「何でもしますから赤福を売ってください」で共演した本間キッドさんがゲスト。後輩ならではの悩みから、芸人としての今後の展望までを赤裸々に語ってもらいました。(撮影/PANORAMA FAMILY 文・構成/山脇唯)
もともと、僕が高校生の頃からずっとせきしろさんのファンで。
山脇:普段は「実は知らない○○さんの素顔」みたいな切り口でやってるんですけど……そもそも、本間さんのことよく知らないっていうところから。
本間:まったくですよね、はい。
山脇:本間さんって、どこから現れたのかなっていう……
本間:確かに、そうですよね。この説明はしといたほうがいいですよね。
山脇:初共演は今年5月のユニットコントライブ『すいているのに相席5』ですけど、それまでに、ギャグしりとりライブ『ギャグラリー』に本間さんが出てて、それを観てたから……
本間:なんとなく知ってる、みたいな感じですよね。
山脇:せきしろさんやA先生のライブに出るようになったきっかけは……?
本間:もともと、僕が高校生の頃からずっとせきしろさんのファンで。せきしろさんが『紙のプロレス』っていう雑誌で連載やってて、すっごい面白かったんですよ。それを高校生で読み始めて。せきしろさんがやってたのは『THE 検証』っていうコーナーなんですけど。
山脇:どういう、何を検証するんですか?
本間:せきしろさん、今やってることとあんまり変わらないんですけど(笑)。禿げてるプロレスラーがいたら「その人に一番似合う髪型はなんだ」とか大喜利みたいな感じで。あと『400戦無敗』っていう異名の格闘家・ヒクソン=グレイシーていうのがいるんですけど、日本で試合したのが400戦中の5試合だから、ほかの試合を考えるっていう……『1戦目、初めて歯磨きが出来たよ』とか、そういうのをやってたんですよ。
山脇:わあ。
本間:すげえ面白くて。しかも越中詩郎に引っ掛けて、せき詩郎っていうペンネームでやってて「すげえ面白いな、なんなんだこの人!」って、それで『去年ルノアールで』を読み始めて。だから俺、バカサイをあんまり通ってないんですよ。
山脇:へえ。
本間:今せきしろさんにそれ言うと、「本間しかその雑誌読んでなかったよ」とか「本間しかそのコーナー読んでなかったんじゃないか」とかすごい言われるんですけど。
山脇:そこから、実際の出会いは?
本間:僕がツイッターを始めて、せきしろさんをフォローして。そしたら僕も芸人だからか、せきしろさんもフォローしてくれて。「これからスタン=ハンセンにサインもらいにいきます」って書いたら「いいですね」ってリプライが来て。「キングオブコント準決勝行きました」にも「おめでとうございます」ってリプライしてくれてて。
山脇:あら。
本間:ある日、単独ライブの告知ツイートを、せきしろさんがリツイートしてくれて、それを見た、僕の先輩ハリウッドザコシショウさんが「お前、せきしろさんと知り合いなの?」って。「面識はないけど一方的にファンです」って言ったら、「せきしろさんと仲良く出来たら嬉しいね」みたいな話をされて。「単独とか誘った方がいいですかね」「誘えよ絶対!」って言われて、DMで連絡して。その時は仕事で行けなくて、ってなったんですけど、その後、ザコシショウさんの単独ライブを観にきたせきしろさんと話したりして。
「全員殺してやろう」って、鉄砲玉みたいな気持ちで。
本間:それで、ギャグラリーの若手版『ギャグラリー ネオブラッド』をやるときに「や団から1人出したいんだけど、誰がギャグできるの」みたいな感じで、せきしろさんがザコシショウさんに聞いて、ザコシさんも俺がファンだって知ってるから「じゃあ本間です」って推薦してくれて。
山脇:まあ!
本間:決まってからは、毎日ギャグラリーのことしか考えられないぐらい追いつめられて、原因不明の高熱が出たりして。
山脇:赤子のよう……
本間:知恵熱ですよ。で、本番は、死にものぐるいですよね。場所が渋谷の無限大ホールで。
山脇:コロシアムみたいになってるところですよね。私いきましたよ、それ。
本間:マジですか? ネオブラッド観てるんですか?
山脇:ニューヨークとかザ☆忍者とか出てたときですよね。
本間:そうですそうです。他の出演者が、無限大の人気者たちが多くて。そこに急に僕みたいな雑草が出るってなったから、本当に怖かったんですけど。
山脇:無限大って、ルミネとはまた違った空気がありますもんね。
本間:だから「全員殺してやろう」って、鉄砲玉みたいな気持ちで。「絶対笑い取ってやろう」って、後にも先にもないくらい賭けてて。殺気に満ちてたと思います、楽屋から何から。
山脇:誰と戦ったんでしたっけ?
本間:TEAM近藤です。
山脇:泥にまみれた試合で、A先生がすごく喜んでたやつだ!
本間:よくわかんない毛皮着込んだりして……A先生にお菓子を持ってくるというボケとか、とにかく必死ですよね。ウケてるのかウケてないのかわかんないくらい頭真っ白で、終わったら、楽屋で吉本の芸人さんたちがバーッて拍手してくれて「よかったよ」って。
本間:そのとき楽屋で初めてA先生と喋って、挨拶させてもらって。ザコシショウさんも来てたんですけど、僕がすげえ緊張して挨拶してたら、ザコシさんもA先生と話すとき、けっこう緊張してるんですよ。
山脇:ええ。
本間:僕の師匠がザコシさんみたいな感じだから、A先生は師匠の師匠みたいな人で。ギャグラリーきっかけから、単独ライブを撮影したDVDも渡したりして。コントもできんだなって思ってもらえたんじゃないかな、それで相席もオファーしてくれたんじゃないかなと。
山脇:ネオブラッドが2015年ですよね。
本間:そうです。そこから、本編のルミネのギャグラリーにも呼んでもらって。1回、下北沢のタウンホールでイベントがあった時には、や団でネタで呼んでもらったりしてて。
山脇:カレーのお祭りだ。
本間:一個一個、結果が出るように頑張ってやってたら……今っていう感じです。
俺とザコシショウさんが完璧に浮いてたじゃないですか、あの会で。
山脇:本間さんにちゃんとご挨拶したの、2016年のA先生のお誕生日会で。すごい怖かったんですよ。
本間:なんでですか。
山脇:若手の方って、怖いじゃないですか……。私のこと「なんなのアイツ」って思ってるだろうな、って。
本間:俺とザコシショウさんが完璧に浮いてたじゃないですか、あの会で。
山脇:そんなことないですよ。私は、芸人さんの血筋じゃないのに、いる、ということが……何をするときでも「お店ここでーす!」とかしないし、職種が違うことによってわりと治外法権的な立場にいるから、若手の人は気に入らないんじゃないだろうか、って。
本間:一番働いてる後輩には。
山脇:目の上のタンコブなんじゃなかろうか、って。
本間:僕は逆に、できる若手に見えて、すごくできないから。すごい怒られるんですよ。
山脇:そうなんですか。
本間:吉本じゃないし、養成所も出てないし……最初っからSMAに入って、ずっとSMAだから。SMAって、最初の立ち上げの頃は『寄せ集め』って言われてて、他の事務所でダメだった人が最後の手段で入るところで。先輩方も何かしらの傷を負った人たちが多いから、すごい優しくて。そこにいきなり入っちゃったんですよ。だから”後輩のやらなきゃいけないこと”を知らなくて、外だと「あれ、こいつ使えねえな」みたいになるから、他事務所の人に会うと、怖いんですよね……
山脇:大変ですよね……
これ普通に悩みなんですけど……。
本間:これ普通に悩みなんですけど……。ギャグラリーとかのイベントに結構出てて、何回か挨拶したことある先輩だと「ソニーミュージックアーティストの本間と申します、よろしくお願いします」っていう、まどろっこしい挨拶をせずに「おはようございます」だけ言ってるんですけど、これってアリなんですかね……?
山脇:それは難しいところですね……
本間:そこって悩みません?
山脇:私の場合は、単なるお客さんとして行ってるライブだったら「お疲れさまです」でやってますけど……ロフトプラスワンの楽屋とかだと、この空間にいるけど誰なんだ、っていうのがあるから……そういう時、吉本の人ってすごく丁寧に「○○期の●●です」って言うから偉いなあって。私、何期とかもないんで……難しい。
本間:何度も会ってる場合あるじゃないですか。それでも、長い挨拶した方がいいんですかね……?
山脇:どうなんですかね……?
本間:絶対覚えてない可能性もあるじゃないですか。
山脇:でも覚えてもらえてるのに、改まった挨拶をするのも……「なんなん? 覚えてるよ」って怒らせてしまうかも。
本間:それも気を遣っちゃうじゃないですか。この前も変な空気になっちゃって。何度も挨拶してる先輩だからと思って、「おはようございます」だけ言っちゃったんですよ。でも相手の先輩は「長い挨拶がくるな」っていうのを察して「大丈夫だよ、挨拶いいよ~」って空気出してくれてて、肩すかし食わせたようになってしまって。あー、やっちゃったなあ、って。
山脇:初対面ではないことと、自分が何者かがいっぺんに伝わるいい挨拶を編み出すしかないのかもしれないですね。
本間:好きな先輩だと特にこっちはすごく覚えてるから、以前1度ご挨拶してる、って思ってても「あれ誰だっけ」って顔をされたり、とかあって。
山脇:こっちはほとんどの方を知ってる、っていうのもありますよね、全ての先輩、全てのひとを。
本間:そうなんですよ。言うと「わ、芸能人だ」みたいな感じじゃないですか。
山脇:あと、挨拶って、お時間をとってしまっていいのかな、っていうのもありますよね。
本間:誰かとワーッてお話しされてる所に入っていくのも申し訳なくて。
山脇:割ってくのも失礼かも、っていう。
本間:挨拶が一番大事って言うし。だから怖くて……。
でもお前、そういうのじゃ怒らない俺みたいな先輩を選んでるんだよな
山脇:そういう礼儀関係で悩んだら、私は「こんなことで機嫌を損ねるなら、きっとたいした人じゃないから……優しい人とだけつきあって生きていこう……」って思って自分を励ましてます。
本間:僕も完全にそうで……。それでいいですよね……わかります。
山脇:だって、その後も何かと辛いじゃないですか。だからもう、怒る人とはご縁がなくていいのかな、って。
本間:山脇さん、まったく同じ考えです。
山脇:怒る人とは長く一緒にはいられないですから……。
本間:一回先輩に言われたのが……僕、バイきんぐの西村さんに可愛がってもらってて、前に一緒にバーベキュー行くとき、ちょっと寝坊して15分くらい遅れてったんですよ。そしたら西村さんが「先輩によっては怒られるから、遅刻は絶対にダメだよ」って。「でもお前、そういうのじゃ怒らない俺みたいな先輩を選んでるんだよな」って。それを聞いて俺「すべてわかってる、この人は……!」と思って。
山脇::やさしい。
本間:そうなんです、だからもう怒らない温厚な優しい先輩と接するのがいいんですよ。
山脇:そうですよ。
本間:ザコシショウさんもすげえ優しいですし。
山脇:怒っても、いいことってそんなに起きないじゃないですか、こと人間関係では。
本間:自分もそれじゃ怒らないし……。僕、誕生日祝われなくても全然いい人なんで、重要視してないんですけど。先輩によっては「あんな可愛がってるのに お前だけだぞ、誕生日メールしてこないの」って。
山脇:えー。
本間:翌日に会う約束してたから、その時に言えばいいやって思ってたら、なんで当日に送ってこない、って怒られたことがあって。あ、それは気をつけなきゃなって。
山脇:私も、お祝いメールいっぱい来てるだろうな、って思って控えちゃったりしますよ。
本間:遠慮しますよね。
山脇:お手間をね、かけちゃうから。私なんかに返信する時間を睡眠にあててほしいな、って。
本間:そうなんです、そうですよね、気を遣っちゃいますよね。
山脇:誕生日いつなんですか。
本間:12月23日の天皇誕生日です。
山脇:あ、私の友だちと近いです。
本間:それはすげえ遠いですね。「友達と近い」はすげえ遠いですよ。
山脇:1982年の12月23日で。
本間:天皇陛下と、プロレスラーの武藤敬司と同じ誕生日です。
山脇:山羊座かな。血液型は?
本間:血液型はAB型です。山脇さんABですか?
山脇:違います。A型です。
本間:やー、Aか。
山脇:日本人に一番多いですからね。
本間:僕も相方2人はA型ですね。せきしろさんって何型ですかね?
山脇:A型だった気がします。
本間:A先生は……
山脇:AかOかどっちか……O型かな。
本間:ああー。ぽいですね。Oですね。
(数分間、アイアム野田さん、ザ・ギースの2人の血液型の話をする)
この年齢になって、父親はこの年齢のとき、楽しいことをしてたのかな、って思うんですよ。
山脇:お家は、厳しかったんですか?
本間:すごいちゃんとした家、真面目な家ですね。父親が経済学やってて、経営コンサルタントで、書いた本がベストセラーになった、みたいな人だから。
山脇:すごい、ちゃんとしている。
本間:仕事して帰ってきて、書斎に閉じこもって自分の仕事して、やっと飯を食う、みたいな父親を毎日みて「わ、こんな生活嫌だな」ってずっと思ってたんすけど。この年齢になって、父親はこの年齢のとき、楽しいことをしてたのかな、って思うんですよ。それこそ合コンとか行ってたのかな、とか……
山脇:34歳の頃だと、もう結婚されてたんじゃないですか?
本間:あ、20代後半で結婚してたんで、してますね。でも、若かりし頃を楽しんでたのかな、大丈夫なのかな、って心配になっちゃう。1度、夜に家帰ったら、親父がべろべろに酔っぱらってて、「そうなんですよね~」「酔っぱらうと、楽しくなっちゃいますよね~」って俺に敬語を使ってきて。普段すごいきっちりしてるから、ちゃんとストレス解消してんのかな……、っていう。そういう父親と。
山脇:よくしゃべるお母さんと。
本間:母ちゃんはもう、昔の……女性は3歩下がって、みたいな考えの人なんですよ。
山脇:えー。
本間:うちの兄貴の奥さんが、兄貴と家事を分担してるのとか、すごい嫌だって言うんですよ。「女がやらなきゃだめよ」とか。
山脇:だめだ、本間家に嫁げない。
本間:本間家は、女子に対して厳しいんですよ。そういう、あれが。
山脇:それは、影響受けてますか?
本間:だからね、ちょっと影響受けてます。
山脇:ぎえー。
本間:『九州男児』じゃないですけど、そういう考えにはなっちゃってますね、すりこみで。「男を立てろ」みたいな。
山脇:おむすび作ってこないと怒ったりします?
本間:怒らないですよ(笑)。わからないんですよね、女性と住んだことないから……まだ見ぬ僕がいるかもしれないですけど。僕より優位に立とうとする女子にはめっちゃイラッとしますね。
山脇:怖いな。すいません。
本間:彼女が、ですよ。
山脇:優位っていうのは? 「そんなことも知らないの?」とか。
本間:そうそうそう、結構イラッとします。「うるせえな!」って。
山脇:「そんなのつまんないよ」とか?
本間:超いやですね。
柔道部の先輩に「新宿行くぞ」って言われて。アルタ前で「おい、ナンパしてこい」って。
本間:自分の中では、そんなことないよって思ってるんですけど、大学の先輩とかから「女に対して『女は下がっとけ』みたいなとこあるからな」って言われて「そう見えてんだ!」って。だから自覚はないです、正直。
山脇:ああ、一番苦手です、そういう男性が。
本間:やめましょう。やめましょう。だからこんなんなっちゃってるんです。
山脇:こんなんなっちゃってる、っていうのはどういうことですか?
本間:彼女がいないとか……。やっぱり中学から男子校っていうのがあって。僕、中学、高校と男子校で。
山脇:埼玉のですか?
本間:東京です。私立受験して、日大の付属で護国寺にあるんですけど。そこでずっと男子校だったから、女子がもう本当に怖くて。
山脇:えー。
本間:大学のときは、女子と話せないし、隣りの席に女子がいるだけで緊張しちゃうし、もうリハビリみたいな感じで。「一生女とつきあえる気がしない」ってずっと思ってたんです。
山脇:あらまあ。
本間:そのとき柔道部に入ってて、柔道部の先輩に「新宿行くぞ」って言われて。アルタ前で「おい、ナンパしてこい」って。
山脇:えー。
本間:「すいません、ちょっとそういう気分じゃないですね」って断ったら、「お前、今日が試合の日でも『試合の気分じゃない』って断るのか」って怒られて「そんなことないです」って言ったら「やれ、この野郎」「逃げんじゃねえ」みたいな。
山脇:怖い。ひどい話ですよ。
本間:説教されて、半べそかいて。で、ナンパするんですけど、初めてだし、女の子が捕まるわけないじゃないですか。でもずっとやらされて。そしたら先輩が、あの佐山コーチみたいな感じで「オッケ、それがわかればいいんだよ」って。
山脇:はああ。
本間:「お前は口がうまいから、なんだかんだ口で逃げるクセがあるな。いいか、女と接してみてわかっただろ。お前なんて誰にも求められてないんだ、自分がどれだけダメな人間かわかった上で、本質を高めろ」みたいなことを言われて。
山脇:え、ナンパと柔道と関係なくないですか。
本間:関係ないんですけど、でも、僕はそれがけっこう原点になってて。
山脇:えええ? どういうことですか?
本間:ナンパするってなったら、要するに『自分とお茶したらどれだけ楽しいか』っていうプレゼンを一瞬でしなくちゃいけない。そしたら、まず女性に嫌われない身なりでないといけないし、『自分がたいしたことない人間である』ってことをわかった上でやって、それでも「うざい」とか言われるじゃないすか。それで、自分の要らないプライドとかもなくなりますし。というので、僕はナンパが修行になったんです。それが原点ですね。そこから、女性とも喋るようになっていったというか。
山脇:そうなんですね……。えー。
意外に、身体が……フィジカルが弱くて。
山脇:そこから、お笑いやるってなったのは何故なんですか。柔道は?
本間:柔道はずっとやってたんですけど。好きなものが3つあって。お笑いか、格闘技か、音楽、って。3つともすごい好きだったから、将来的にはこのどれかに就きたいな、と思って。全部やってってお笑いが一番よかった、っていう。
山脇:ほうー。
本間:音楽は、高校生の時に、柔道やりながら、文化祭の時だけライブやる、みたいなバンドをやってて。でも楽器が難しくて。
山脇:どこのパートやってたんですか。
本間:ギターですね。
山脇:D、D、D、C、C、C……ってやってたんですか。
本間:それが難しすぎて。難しいから、仲間を集めて後ろをかためて。ギターをもう1人入れて。
山脇:ツインにして。
本間:で、ギターボーカルをやってましたね。ただ歌うだけ、みたいな。
山脇:バンドって、リズム隊がしっかりしてればわりと聴こえますもんね。
本間:そうなんです。それで、ごまかしバンドやってたけど「こりゃあさすがにプロにいけるレベルじゃない」と思って。
山脇:格闘技は?
本間:意外に、身体が……フィジカルが弱くて。両膝、トップアスリートがなるような大怪我してて。
山脇:え!
本間:前十字靭帯っていうのを断裂して、1年リハビリしなきゃいけないんですけど。まず右やって、1年近くリハビリして、復帰して3ヵ月くらいして、今度は左の靭帯切って、って。これは「運動は無理だ、向いてない」と神様が言ってるんだと。手術して両方治ってはいるんですけど。
俺、RIP SLYMEが平成のドリフだと思うんですよ。
山脇:そしてお笑いは、どういう……
本間:もともと憧れがあったから……。僕らが中学生くらいの時『ボキャブラ天国』がすごかったじゃないですか。あのときに、ネプチューンさんを観て「うわ、おもしれー!」「お笑い芸人になりたいなー」ってそのへんで意識しだして。高校生、大学生くらいの時にジョビジョバ全盛期があって、もう「なろう」って決めて。
山脇:はい。
本間:最初はジョビジョバみたいに劇団っぽいのをやりたかったんですけど、友達集めたら同窓会みたいになっちゃって。「こんな人数、俺じゃまとめられない」って諦めて。そしたら、今の相方が、もともとお笑い好きでDVD貸し借りとかしてたんですけど、そいつが「お笑いやんない?」っていうから「あ、じゃあやろう」つって。で、トリオですね。絶対3人以上がよくて。
山脇:それはなぜですか?
本間:複数の格好良さってあるじゃないですか。コンビだと、息の合う格好良さって感じですけど。ジョビジョバとか、ドリフとかだと、5人いるのに、1人ずつ個性があって、1人でも面白いのに集まるともっと魅力的になる。あの感じ、よくないですか?
山脇:あー。なるほど、そうですねえ。
本間:ネプチューンさんも1人ずつ活動もしてんのに、3人が一緒に出てるとすげえドキドキするんですよ、ワクワクしちゃうっていうか。あとはRIP SLYMEとか。
山脇:え?
本間:俺、RIP SLYMEが平成のドリフだと思うんですよ。あんな1人ずつ個性豊かで、でもみんな集まってるとこが見たいじゃないですか。
山脇:そう……ですか。
本間:はい。わかんないですか? その感じ。
山脇:や、集まったところがいい、っていうのは、わかります。ジャンルが違っても……たとえばSEXY ZONEとか……
本間:僕、似てる人がいるんですよ。SEXY ZONEに。
山脇:え? 誰のこと言ってます?
本間:若い子で……(画像検索をはじめる)一時ね、みんなが大騒ぎしてたんですよ。色んな所で言われまくってたんです。
山脇:それは、すごい、あれですねえ。
本間:すごい嫌でしょう。
山脇:そうですね、嫌です。
本間:(検索結果を見せて)この子ですよ。
山脇:……松島くんのことですね。
本間:たまにね、すげえ似てるときがあるんですよ。
山脇:5人の中ではね、そうかもしれないけど。人間を大きく4種類にわけたら、そうかもしれないですけど……
本間:あれ、そこまでですか。
山脇:いや、全然似てないです。
本間:この子と俺とサンシャイン池崎さん。みんな一緒ですよ。
山脇:それは……
本間:すいません。だから、何を言いたかったかというと、集まったら、いいじゃないですか。そういうことですよ。
「なんでブルーハーツみたいな格好良いバンドって今いないんだろう」って思ったりして。
山脇:音楽は何が好きだったんですか?
本間:僕ら同世代じゃないですか。だから、だいたい共感できると思うんですけど。Hi-STANDARDとかすごい流行ったじゃないですか。ハイスタ、HUSKING BEE、BRAHMAN……あのへん。
山脇:ああー! 好きだったですか。
本間:むちゃくちゃ好きだったですね
山脇:世代ですねえ。
本間:AIR JAMていうフェスがあるんですけど、高3くらいかなあ、生まれて初めて行って「世の中にこんな楽しいことがあるんだ」って。そこから色んなフェス行ってました。
山脇:へー。
本間:だからね、「すいているのに相席5」の『フェス』のコント、羨ましかったですね。
山脇:そうだったんですね、そうなんだ。
本間:昔、彼女が車持ってたから、ひたちなかのROCK IN JAPAN FES.に毎年行ってました。すごい好きで。
山脇:2007年だか2008年だかに1回だけ行ったことあります。Tシャツのロゴが青と緑だったとき。そのときは、遠くからスネオヘアーが聞こえてきましたよ。
本間:あーわかります。俺、絶対行ってました。
山脇:今も、そういう音楽が好きですか。
本間:はい。メロコア、みたいなのが。あの当時、ビジュアル系がすごく流行ったじゃないですか。GLAYとか、ラルク、SHAZNA……
山脇:私たち高校生のときかなあ。連続で何枚もCD出すよ、みたいな。
本間:すごい流行ってるし、みんな聴いてるし、多感な時期だから、聴いて「いいねー」とか言うけど、なんか「どっか格好良くねえな」ってずっと思ってて。昔のブルーハーツとかも聴くじゃないですか。それで「なんでブルーハーツみたいな格好良いバンドって今いないんだろう」って思ったりして。で、ハイスタ聴いたら「うわ、かっけえ!」ってなって。
山脇:それはお兄さんの影響もあるんですか?
本間:や、兄ちゃんの影響受けたのは、プロレス、格闘技くらいですね。あとはもう全然、似てない。なにもかも、真逆ですね。
山脇:なんでそんな力強くいうんですか。
本間:正月集まった時、一言も喋らなかったです、兄貴と。
山脇:そんなことあります? 歳の差がけっこうあるんでしたっけ。
本間:7歳違いで、今、41、42歳くらいかな。単純に合わないですね。お互い嫌いあってるわけじゃなくて、単純に話題がないから喋らないだけで。
山脇:へー。
本間:親が「仲悪いの?」って心配してました。「別に悪くないよー」って。
山脇:ああ、私の夫も4つ歳上の兄がいますけど、お兄ちゃんと話してるイメージないですね。お姉さんが間で話してくれてる。
本間:喋らないですよね。男兄弟ってそんなに仲良くなんないのかもしれないですね。
「恥ずかしがりやな部分を隠すようなハイテンションで痛々しい」ってすごい言われてて。
本間:女子と喋れなかったし、あんまり人の目をみて話せないんですよ。だから、芝居のときも相手の目を見るのが苦手なんですけど、これは、どうなんですかね? ってことを聞きたかったんですけど。
山脇:鼻を見るといいって言いますよ。昔、テレフォンショッキングでタモリさんがゲストに同じこと相談されてて、タモリさん「俺も目は見てないよ。鼻を見てたら目を見てるみたいになるよ」って言ってました。
本間:あ、そうなんだ。じゃあ……大丈夫です。
山脇:目を見られないのはなんでですか? 怖いんですか?
本間:単純に習慣がない……ずっと男同士でしかいなかったから。男同士ってあんま人の顔見ないイメージがあって。
山脇:ああー。そっか。
本間:あと、内面にひそむシャイな部分がすごくあって。なんかこう……テンション高いか低いかしかないんですよね。
山脇:ほう。
本間:今でこそ普通になりましたけど、昔は、大学の先輩から「恥ずかしがりやな部分を隠すようなハイテンションで痛々しい」ってすごい言われてて。「そんなこともねぇんだけどな~」って。明るい自分もいるんだけど、恥ずかしがりやの自分もいるから。それがAB型なんですかね。二面性があるんですよ。
山脇:はー。
本間:相方も言うんですよ。すごいテンション高いときと内向的なときがある、って。でも自分では意識がないんですよ。
山脇:そうですねえ。ギャグラリーに出てるのを観たときは、すごく若手の芸人さん! ていうイメージで。周りにおとなしい先輩が多かったから、初めて触れる若手芸人らしい若者だなあ、って思ってたけど、実際会うと、わりと普通の人だな、というのは、あったかもです。
本間:けっこう普通でした?
山脇:「だから(相席5にも)呼ばれたんだろうな」って。
本間:普通だと思われるのもすげえしゃくですけど。明るい人だ、って思ってください。
山脇:いい意味でですよ。
本間:歴代の彼女たちは皆「友達から『普段もあんな感じなの』って絶対聞かれる」って言ってました。それで「普段は普通だよ、って答えてる」って言うから「普通だとは言わないでくれ」って。
山脇:イメージがね。
僕らなんて、どういったら面白いか、どの間で言ったら面白いか、とか、そういうことしか考えてないから。
本間:『すいているのに相席5』での僕を、山脇さんの目から見て、ダメ出しとか、こう思った、とかないですか。
山脇:え?
本間:普段のコントは自分が作って自分がやりたいようにやってるから、すげえ自作自演じゃないですか。『相席5』は他の人の台本で、やるからには台本以上の面白さをやりたいとは思ってて。自分がどう見えてたのか、すごい気になってて。芝居の上手い下手も伸ばしたいな、っていう修行の意味もあって。思ったこと、総評を教えてください。
山脇:いや、私が言えることなんて何もない、そんな。
本間:総評してください。どう思ったか。
山脇:えー……でも「面白かったね」って、せきしろさんとかとごはん食べてる時に「本間さん面白かったですね」って話が出たりは。
本間:本当ですか?「しくじったなー」ってのはなかったですか?
山脇:なかったと思いますよ。声が大きいから、よく聞こえて良かったですよ。
本間:お芝居の人って大変ですよね。めっちゃ大変じゃないですか。
山脇:え? そうですか?
本間:山脇さんに色々聞くと「わ、そんな考えてたんだ」みたいな。(『すいているのに相席5』のコント「今日から勝俣を見る目が変わる話」の)「ここでイチャイチャしようぜ」のシーンの、笑い待ちの間の取り方とか。僕らなんて、どういったら面白いか、どの間で言ったら面白いか、とか、そういうことしか考えてないから。背景とか、なんも考えてなかったな、って。
山脇:どうしたら面白いかを考えられて、ちゃんとできる人は、それでいいんですよ。私は、面白い面白くないのジャッジはお任せして、できることをやってるだけだから。自分で面白さを突き詰めなきゃいけない人たちの方が大変だな、って思ってます。
本間:そうなんすかねえ。そうすねえ。
山脇:ゼロか1かでしょう、芸人さんは。ウケるかウケないか、それを全身で引き受けているから大変だな、すごいなあって。
12年後に、あんなコメディアンになれてるんだろうか
本間:『すいているのに相席』に出てる芸人さんて、みんな超面白いじゃないですか。それがもう衝撃で。何とかついていこう、みたいな。「あいつのときだけ温度下がる」みたいに思われたら絶対いやだと思って。
山脇:私も初めて相席に出た時、びっくりしましたよ。お客さんをこんな笑わせてすごいなーって。
本間:A先生がとにかく面白くて。ザコシショウさんと話してたら、ザコシさんが「A先生はパワーすごいよ」「マンパワーだったら俺は勝てない」って言ってて。あんなザ・マンパワーの人が「勝てない」って言うから、俺もう「うわ、すごい!」って。アイアム劇団でも「いいなあ」とか「いろんなカトちゃんがあるなあ」とかA先生の台詞で絶対笑っちゃうんですよ。
山脇:あれなんであんな面白いんだろう。
本間:せきしろさんもどんどん面白いこと言うじゃないですか。こうしたらああしたら、って。
山脇:稽古がずっと面白いですよね。
本間:A先生もすごい面白いから、生で見てるとファンみたいになっちゃうんですよ。俺、稽古の時に「絶好調!中畑清です!」を正面で見て、涙出そうになりました。感無量ですよ。やっててよかった。
山脇:ねえ。本当にすごい面白い。
本間:A先生が今、46歳じゃないですか。僕が12年後に、あんなコメディアンになれてるんだろうか、という焦りというか。
山脇:本間さんは今、芸歴何年ですか?
本間:12年目ですね。大学卒業からやってるんで。
山脇:NSCだと……
本間:10期と一緒です。
山脇:12年後、今のA先生と同い年。
本間:ああなりたいですよねえ、コメディアンとして。でも、12年前の自分より今のほうが面白いって自信はあるけど、じゃあ12年後、あの域に達していられるのか? っていうのは、あります。
芸人は「面白い」って思われたいから、絶対嘘つかないんですよ。
山脇:面白くなるには……どうやって面白くなるんですか?
本間:ザコシさんに言われたのが「環境と信念があれば、面白くなれる」って。
山脇:環境?
本間:「いい環境にいないとダメだ」って。まわりが面白いとか、ダメ出ししてくれる先輩がいるとか。そういうのはあると思います。
山脇:なるほど。
本間:環境は、いいと思うんですよ。同じ事務所でもライバルみたいな感じでピリピリしてるところもあると思うんですけど、SMAは一回ダメだった人たちが集まってるから。ゆるく聞こえちゃうけど「みんなで頑張ろう」みたいな考えがあって。
山脇:はい。
本間:みんなでネタを見せあって、ダメ出しする、っていうのがあって。ライブで一緒だったら「○○さん僕らのネタ見てください」って見てもらって、あとでダメ出しをもらうんです。芸人って不思議なもんで……例えば、ライバルだったら、嘘ついて面白くなくさせることもできるんですけど、芸人は「面白い」って思われたいから、絶対嘘つかないんですよ。
山脇:あー。なるほど、そうか。
本間:「俺はこうした方がいいと思う」って。あ、やっぱりこの人は面白いな、って思われたいためにやってる人たちだから、絶対嘘つかないから。そういうのでどんどんどんどん相乗効果で上がっていって、チャンピオンが3組生まれたんですよ、その寄せ集めの事務所から。バイきんぐさん、ザコシショウさん、アキラ100%さん……。だから環境はすごくいいです。
いい環境にはいさせてもらってると思うんで、あとは、ハート。
本間:先輩で、ロビンフッドのおぐさんていう人がいて。一時期、コンビのもう1人がお芝居ばっか出ててコンビとして機能してなかった時期があって。その頃、僕らはNHKの『オンバト+』によく出させてもらうようになってて。
山脇:はい。
本間:おぐさんはコンビが機能してないから、僕らのライブも観にきてくれるんですよ。それで「あそこ、ああしたら、こうしたら」ってダメ出ししてくれて。それで打ち上げにも出てもらって、「じゃあ先帰るわ」って言うから見送りして「今日ダメ出しありがとうございました」って言ったら、「俺も今自分がこんな状況で、お前らみたいな後輩がすごいウケてたら腹立つし、逆にこんなダメ出ししてんのにスベっても腹立つし。どうせ俺に腹立たれるんだから、ウケて腹立たれた方がいいだろ」って言って、去って行ったんですよ。俺もう「この人嘘ついてないな」って思って。なんかね、そういう、いい環境にはいさせてもらってると思うんで、あとは、ハート。心の持ちようだっていうんで、信念。
山脇:気持ちの部分。
本間:信念と環境があれば、面白くなれる、って言ってました、師匠が。
山脇:演劇とちょっと似た所がありますね。5個『自分の大事にするもの』を決めてやると、お芝居は良くなるよ、って教わったことあります。
本間:どういう、たとえば?
山脇:明るく元気にいる、前を向く、笑われても気にしない、とか何でもいいんですけど、明確に決めておくだけで、地に足がついて見えるから、お客さんが安心して観られる。フワッて出ていくと、そこで迷いが出たりしちゃうから、何を大事にするかを確認しておくだけで、輪郭がくっきりするよ、って。
本間:すごい良いこと聞きました。
本間:意外に『前を向く』って難しくないですか、どうですか。
山脇:難しいです。
本間:僕もずっと横向いてやってて。よく指摘されるから、最近は意識して前を向くようにして。でもお客さんの顔が見えるのも恥ずかしいし。
山脇:ドキドキしますよね。
本間:いいや横向いても相手を見てりゃ、ってやってたんですけど、でもやっぱり、それだと笑いは半減しますよね。面白い表情とかしてるのに、それ見せなきゃ、って。
山脇:見せてくれると安心する、というのはありますよね、観る側としては。こっちを向いてくれるだけで「あ、真っ正面を向く度胸がある人だ」って思えて、安心して笑える。
本間:なるほど。だから12年目にして「前を向く」って意識して、それだけを言い聞かせてやってるんですよ、それが恥ずかしいんですけど。色んな人に聞くと「前向くのはできる」っていうんですよ。「だって『面白いでしょ』って思ってるから、前を向けるじゃん」って。強いメンタルだなあ、って。
山脇:そこが本当に芸人さんのすごいところですよ。私なんて理論武装してるだけですよ。
本間:でも理論みたいなのあるといいですよね。芸人はないじゃないですか。だから「どういう気持ちでやってるんですか」「ネタどうやって作るんですか」って聞かれると困っちゃうんですよ。「やー、ウケればいいな、です~」「面白いかなと思ったんです~」しかないから。
全てを満たしてくれるのがTシャツ。
山脇:Tシャツ集めてるんですか?
本間:はい。3、400枚くらいあるんじゃないですかね。
山脇:なんで集めてるんですか?
本間:なんか……Tシャツ、よくないですか。僕もよくわからないんですけど、すごい好きなんですよ、Tシャツ。
山脇:でもそんなに持ってても、身体1個しかないのに。1年で一周するか、しないかじゃないですか。
本間:グッズといえばTシャツ、みたいなのあるじゃないですか。格好良いと買いたくなっちゃって。最初、プロレスのTシャツを買い始めて。……なんなんすかねえ、それを着ると、一個、人に伝わらない部分が伝えられるというか。
山脇:ああー! 趣味嗜好が伝わる……というか。
本間:特にそうしたくて着てるわけじゃないんですけど、プロレスのTシャツ着てると自然と「あ、プロレス好きなんだ」って会話になるし。そういうのが好きな人なんだな、って思われると、一個ラクになるじゃないですか。
山脇:スムーズになる。
本間:バンドのTシャツを着ると「あ、こういう音楽を聴くんだね」って。
山脇:相手に親切ですよね、とっかかりがあるから、声かけやすいし、しゃべりやすい。
本間:あと「好きな人のグッズを着たい!」ていうのがあるじゃないですか。だからなんか、それですね。
山脇:ああー。
本間:記念になるし。このライブに行った、この試合を観にいったとか。
山脇:思い出になるし。
本間:けっこう物欲がすごいから。金銭欲は全然ないんですけど、なんかそういう……
山脇:ものを手に入れたいという気持ちが。
本間:記念品を置いておきたい、忘れたくない、って。
山脇:収集癖あります?
本間:収集癖があるんですよ。
山脇:あらあら。ものが捨てられない……?
本間:そうです。記念になるし、自分がどういう人かもわかるし、っていう、全てを満たしてくれるのがTシャツ。
山脇:なるほど。
本間:Tシャツは1年中着られるじゃないですか。冬は羽織ればいいし、夏はこのままでいられるし。
山脇:稽古とかあれば、1日2枚着たりできますしね。
本間:何枚も持っておけば着替えられるし。全てが含まれているのがTシャツな気がして。
チャンピオンになるっていうのは、そこがゴールでもいいくらいの、本当にすごいことですから。
山脇:じゃあ、今年の目標は?
本間:やはり……キングオブコントですね。優勝できたら、次の日死んでも後悔はないです。
山脇:だめですよ。漫画の『べしゃり暮らし』にいましたよ、そんな人。
本間:俺、読んでないからわかんないんですよ。
山脇:すごくいい時に雪が降ってて死んじゃう、超つらい話があるんですよ。死んじゃダメですよ。
本間:でも、それくらいの目標ですね、キングオブコント。ボクサーがボクシングで世界チャンピオンを目指すような感覚で、せっかくコントやってるんだから、やっぱりチャンピオンになりたいです。だからA先生とか、偉大な人です。
本間:よく賞レースでも優勝しても売れない、とかいうじゃないですか。
山脇:そういう世間の雑音は、ありますけども。
本間:でも、チャンピオンになるっていうのは、そこがゴールでもいいくらいの、本当にすごいことですから。ていうのを世間の人にもうちょいわかってほしいですねー。
山脇:世間はわかってないですか。
本間:わかってないじゃないですか。
山脇:テレビだけ観てる人は、そうかもしれないですけども。
本間:みんなお笑い番組の1つとして観てますけど、どの芸人も1年かけて調整してるって考えると……
山脇:確かにボクシングっぽさがある。体重を絞るみたいにネタも絞って。
本間:無駄な台詞を削いで。4分間って決まってるから「もうあと何秒削らなきゃいけないから、このボケ切るか」「でもウケるからもったいないな」「じゃここの台詞切って」「でもそうしたら辻褄合わなくなるね」……とかって、もう大変ですよ。
山脇:ひえー大変ですね。
本間:それが楽しいんですけどね。
一回戦で負けた次の日でも、黙々と新ネタを書いているような男になりたいんですよ。
山脇:何かを目指したり狙ったり、明確な目標があると、あれでしょう。やる気も出る反面、すごく追い込まれるじゃないですか。だめだったら、って。
本間:そう、そういう恐怖もあるけど……。『グラップラー刃牙』って漫画に愚地独歩っていう空手家がいるんですけど。彼がある死刑囚と戦ったときに、その死刑囚の技が『相手に催眠術をかけて、一番格好良く勝ってる自分の姿を想像させる』っていう。相手の頭の中では、その死刑囚をバーンって倒して「よっしゃ!」ってなるんですけど、実際は何も当たってなくて、疲れちゃったところでやられる、ていう技で。それをかけられて、愚地独歩は戦うんですけど、「……こんなに戦いは甘いもんじゃない」「こんなにきれいに勝てる訳がない」ってなるんですよ。「戦いとは、思い通りにならないんだ」って思ってるから、催眠術が途中で切れちゃって、そのまま黙々と戦い続けて、死刑囚を倒すんですよ。
山脇:はー!
本間:そこがすごい好きで。人生もそうじゃないですか。一個も思い通りにいかないじゃないですか。だけど、そこでいちいちショックを受けずに、淡々とやり続ける、っていう。
山脇:やるべきことを。
本間:だから僕は、キングオブコント優勝を目標に掲げているけども、一回戦で負けた次の日でも、黙々と新ネタを書いているような男になりたいんですよ。
山脇:ほお!
本間:そういうのを心がけてて。その漫画を読んでから、あんまり振るわなくても一喜一憂しないようにしよう、って決めてます。
山脇:なるほど……
本間:そんなことないですけどね。一喜一憂しちゃいますけどね。
山脇:しちゃいますよね、それは。
本間:そんな男になりたいなと思ってますよ。黙々と。
それで肩を並べられる訳じゃないですけど、同じ目線を1度、味わってみたいです。
山脇:実は、や団のコントを生で観たことがないんですよ。Youtubeでは観たんですけど……スーツを着て、ネットか何かで3人集まって、みたいな。
本間:それ、面白かったですか?
山脇:え……?
本間:僕らYoutubeにあんまり良いのを上げないようにしてるんですよ。賞レースのネタバレになるからと思って。
山脇:あー……「ああ、本間さん、けっこう丁寧に説明する役割をやってはるなー」って思いました。
本間:紆余曲折あって、この1年ずっと僕がツッコミをやってるんですけど……。ギャグラリーとかで知りあった人は皆コントみて「あ、ツッコミなんだ」って言うんですよ。この前も、ライブで一緒になって、初めてギースさんの前でネタをやったんですけど、高佐さんも「ネタおもしろかったねー、あと、本間くんツッコミなんだね」ってやっぱ言ってましたもん。
山脇:しっかり喋るんだなあ、って。
本間:みんなそれびっくりしてますもん。
山脇:ワーワーいうやつかと思ってたから。
本間:本当はワーワー言いたかったんですけど。3人のバランス的にそうなっちゃったんですよ。
本間:やっぱコンプレックスがすごくあるんですよ。A先生はチャンピオンだし、野田さんもギースさんもファイナリストだし。ギャグラリーに出てる人達も皆そういう人ばっかりだし。その中で1人だけ準決勝までしか行ってないし、テレビにも出てないし、っていう、コンプレックスが強い。だから、なんとか、本職の方で結果を出したいな、って。
山脇:はい。
本間:それで肩を並べられる訳じゃないですけど、同じ目線を1度、味わってみたいです。
山脇:応援してます。
本間:その言葉をそっくりそのままお返ししますよ、山脇さん。
山脇:え? なんでですか?
本間:応援してます。
山脇:いいんですよ、私のことは。
本間:でも羨ましいんですよ、結婚もしてるし。それはいいですよね。
山脇:結婚ていうのも、なかなか大変なものですよ。
本間:いいじゃないですか、二人三脚で。
山脇:そうですねえ。今日はありがとうございました。