なんでそれを、今まで黙ってたんですか?
山脇:高佐さん、昔『絹』っていうコントのイベント出てました?
高佐:ああ! 出てました。なんで知ってるんですか?
山脇:ヨーロッパ企画が出てて。下北沢リバティで、ヨーロッパは男4人でイカダがどうこう、ってコントをしてて、その時にザ・ギースも出てて。
高佐:え? それ、10年前くらいじゃないですか?
山脇:かなり前です。10年……もっと前かもしれない。
高佐:なんでそれを、今まで黙ってたんですか?
山脇:ふと、思い出して。いつ初めて会ったんだろう、って考えて。
高佐:僕が覚えているのは、プラン9の久馬さん企画の『月刊コント』で、僕らも出て、ヨーロッパ企画として山脇さんも出てて。山脇さん、浅越ゴエさんの娘役か何かをやってた覚えが……
山脇:娘役……どうだったかなあ。私、『月刊コント』だとヤナギブソンさんの彼女役が多かったんですよ。
高佐:ああ、そうか、そうだったかも。
山脇:旅行会社か何かの設定のオープニングで、「お昼はどこで食べたんだ?」「ザギンっす!」っていう会話で「ザ・ギース」って紹介されてたの覚えてます。
高佐:すごい、よく覚えてますね。
山脇:出演するコンビを、ゴエさん達が駄洒落で紹介するんですよね。
高佐:『月刊コント』は2回くらい出させて頂いて、そのうち1回はバッファロー吾郎さんと一緒だったんですよ。
山脇:『月刊コント』で邂逅が。
「僕も中退しました」ってお話ししたら、「ああ、一緒一緒」って。
山脇:大学も一緒だったから、キャンパスですれ違ってる可能性もないですかね。
高佐:え……? え? 山脇さん、大学どこなんですか。え?
山脇:あれ、一緒ですよ。あの、私はでも文キャン……
高佐:早稲田ですか。
山脇:そうです。
高佐:じゃあ、同じですね。全然知らなかった。まじっすか。え?
山脇:あれ? ご存知だと思ってました。驕りですね、私の。
高佐:みんな知らないと思いますよ。あれ、俺だけかなあ。全然知らなかった。年代は……
山脇:ほぼ一緒です。高佐さんは、広末涼子と一緒ですよね。
高佐:一緒です。
山脇:私はその一個下です。
高佐:えー……。いや、同じ大学だったことに今、すごい衝撃を受けて。そっかそっか。そんな話しないですもんね。
高佐:僕は理工学部なんですけど、途中からほとんど文キャン行ってましたから。スロープ上がって、文カフェいって、なんかやってましたよ。
山脇:私は中国語ばっかり勉強してました。第二外国語が中国語で。
高佐:僕は、第二はスペイン語でした。従姉のお姉ちゃんが「スペイン語が一番ラクだよ」って。そうしたら見事にラクだったので。
山脇:あー、いいなあ。うちは父が「これからのビジネスには中国語が必要だ」って言うから選んだら、すごく大変だった。発音ができないと上げてくれなくて。
高佐:ああ、それは失敗ですわ。
山脇:本当に大変でした。
高佐:卒業したんですか?
山脇:……中退しました。
高佐:僕も中退しました。
山脇:ああ、よかった。でも中退っていうと励まされますよね。「早稲田は中退してなんぼ」みたいなことで。
高佐:言われます、言われます。タモリ倶楽部に出させてもらった時に、ちょうど楽屋でそんな話になって。タモリさんに初めて「僕も同じ大学なんです」って言って。「僕も中退しました」ってお話ししたら「ああ、一緒一緒」って。
山脇:それが言えるだけでも、いいですよね。
高佐:「中退してよかった~」と思った瞬間。
山脇:でもちゃんと卒業した人も、立派に働いてますもんね……
高佐:そうなんですよねー。
ラサールまでの道のりは遠い、っていう、歌です。
山脇:高校時代は……函館ラ・サール学園、男子校で。中高一貫ですか?
高佐:僕は高校からです。当時は中学はなくて。
山脇:どうでしたか? 男子校って。
高佐:”高校時代、同じクラスや学校に女子がいる”という感覚がわからないので、比べようがないというか。でもまあ、閉鎖的は閉鎖的でしたね。生徒の半分以上が寮に住むんですよ。主に北海道ですけど、全国から集まってくるので、寮があって。1年生なんかは、2段ベッドがすらーっと並んでる部屋で、ベッド内だけが自分のスペース、みたいな。
山脇:よく言えばドミトリー、悪く言っちゃえば……
高佐:もうもうもう、塀の中みたいな感じですよ。
山脇:えええ。高佐さんは寮生活だったんですか?
高佐:僕は、自宅生です。函館出身なので、家から通って。
山脇:はい。
高佐:あとは……校長先生も外国人だし。僕の代はアンドレ・ラベル校長で。
山脇:え?
高佐:アンドレ・ラベル先生です。
山脇:ラベル先生。そこはラサールじゃないんですね。
高佐:そうですねえ。あー、そうですよねえ。校歌も英語でしたし。
山脇:英語? 歌えますか?
高佐:歌えますよ。(歌って)It's a long way to La Salle High school~ It’s a long way to go~♫
山脇:うわー。
高佐:ラサールまでの道のりは長い、っていう、歌です。
山脇:だってもう、着いてるのに(笑)。
高佐:そうですね(笑)。
山脇:歌ってる人はもう、ラサールにいるのに。
高佐:そうですね。自慢したいんですね。到着した上で、まだ着いていない人に、ここまでは遠いぞ、って。そういう歌です。
内心、勉強が好きだったんです。勉強が好きなんですよ。
山脇:受験は大変でしたか?
高佐:僕、家が塾なんですよ。学習塾を父親が1人でやってて、そこにクラスメイトたちも通ってたんです。で、学校とかに行って「もうやだよ~。勉強面倒くせえなあ~」とか言ってたんですけど……
山脇:はい。
高佐:内心、勉強が好きだったんです。勉強が好きなんですよ。
山脇:それはやっぱり……
高佐:やればやっただけ結果がついてくるし、ほめられるし、こつこつやるのが好きだから。……勉強が好きなんです。
山脇:へえー。
高佐:それで、中学に入って初めての中間テストで、なぜか1位だったんですよ。テスト返すときに、国語のキシモト先生に「高佐、お前、勉強好きだろ」って言われて。でも、そんな「好き」って言ったら、これからの中学生活で絶対に浮くし。「いやいや、全然好きじゃないです」ってクラスメイトの前では言ったんですけど。
山脇:でも……
高佐:内心、超好きなんですよ。「そうです……好きです……勉強が好きです……キシモト先生!」「勉強がしたいです!」って。
山脇:それだけ好きだったら、やっぱり高校はラサールだなって感じで?
高佐:でもそのときは、ラサールのイメージもそんなに……。「メロンクラブ」っていう同性愛のクラブがラサールにある、っていう謎の都市伝説があったんで。
山脇:なんで……メロンクラブなんですか。薔薇とかじゃなくて。
高佐:なんでなのかはわからないんですけど。でも、ぽい響きではあるじゃないですか、メロンクラブ。
山脇:なんですかねえ。
高佐:やっぱり私立だし、男子校だし。中学のとき、イケてない部分もあったので……。公立の、共学で偏差値の高い学校もあったんです。それで、先に私立を受験して、共学の公立も受けて、どっちも合格して。だから共学を選ぶ事も出来たんです。
山脇:結構悩むところですよね。
高佐:でもやっぱり「勉強が好き」って気持ちに……抗えなかったというか。
「学歴社会……? なんだ、学歴社会って!」
山脇:中学の時、5科目でだいたい何点くらい取ってたんですか?
高佐:5教科……だいたい、460から480点の間だったと思います。
山脇:すごい。じゃあ、90点以上は全科目とれてたってことだ。
高佐:そうですねえ。でも……。俺、これ、どこにも話してないんですけど。
山脇:え、いいんですか。
高佐:はい。あのー……中学3年生の2学期が一番、進路に響くというか。
山脇:内申書に載せる、高校に提出するのがそこの評価なんでしたっけ。
高佐:それが、中3の2学期の期末テストなんですね。で、ちょうどその時期に、それまで勉強が好きだった反動が来たせいか、「勉強って何だろう」って思い始めて。「なんで、みんな、こんなに勉強するんだろう」って。
山脇:急にみんな勉強しだしますもんね、中3になると。
高佐:多分、中二病だと思うんですけど、それが中3にきて「学歴社会……? なんだ、学歴社会って!」って、尾崎豊みたいに目覚めて。なんなんだ! と思って、でも、それに対抗する術を知らなくて……どうやってこの憤りをぶつけたらいいんだと思って。何を血迷ったのか、2学期の期末テストで、「俺は……あえて、悪い点を取る!」と思って。
山脇:えー!
高佐:その時は大真面目ですよ。でも、ただ白紙で出しても先生に呼び出されるだけだから、あえて、”回答欄を一個ずらして間違えたフリをする”という巧妙な手口を使って、点数を低くして。50点、40点……でもこの教科は得意だと思われてるから70点台に抑えておかなきゃ、とかやったんですよ。で、案の定、悪い点数で、順位も100番前後で。先生方もやっぱりザワつくわけですよ「あいつ、いつもトップクラスなのに、なんでこんな点数なんだ」と。
高佐:で、生徒指導室に呼ばれて。担任のカズマタ先生とずっと話してたんですけど。「お前、何があったんだ」「いや……」
山脇:ええ。
高佐:そうしたら、なんか急に、涙が止まらなくなっちゃって。ぶわーって泣き出して。ふあ~ふぁ~って、嗚咽もらしながら「学歴社会が……学歴社会が……!」って、先生も「おう、おう、わかった、わかった」って言ってくれて。「先生、俺、学歴社会がぁ……!」って泣いてしまったんですよ。
(PANORAMA FAMILY:(爆笑して)ごめんなさい、俺うるさいですよね……)
高佐:そうか、やっぱこれ、変な話ですよね。人前で初めて話してみて、今考えたら「何やってたんだ」って。どうかしてたとしか思えないんですけど。
山脇:いやー……
高佐:みんなが技術室で技術の授業やってる中、俺は一人生徒指導室に呼ばれて、目を腫らしながら、また戻って授業に参加して。
山脇:金八先生のエピソードみたいですね。
高佐:そうっすね。うん。
山脇:「どうしたんだ」とかいって。
高佐:「どうした」って言ったって理由だけよくわかんないっていう。なんか知らないけど勝手に変なこと思い悩んで、泣いて。
山脇:第何回『優等生のなんとか』みたいな。「高佐くんの成績が急に……!」
高佐:案の定、それは内申に響いて。
山脇:でもそのあと、高佐少年は、立ち直ったというか……
高佐:すっきりしたんでしょうねえ。
山脇:泣いて、すっきりして。
高佐:担任の先生からも親に連絡がいったと思うんですけど、親からは、いまだにその話について何も触れられたことはなくて。タブーになってるのか……なんなのか……
山脇:息子の学歴社会への憤りが。
高佐:今日、初めて話して、こんなに爆笑されるとは思わなかったです。当時の高佐少年は、もう辛くて辛くて。でも、そうか……これはおかしな話なんですね。
山脇:でも、合格したんですもんね。勉強が好きだったから、すっきりして、また勉強して。
雑誌を熟読して、「なるほど、これがおしゃれか」と思って。
山脇:高校は、制服ですか?
高佐:私服なんですよこれが。
山脇:ああ、私も女子校で私服です。
高佐:阿佐ヶ谷姉妹のお姉さんと同じ高校。えーと、宇女高でしたっけ。
山脇:そうです。UJK。校章がマドンナリリーっていう百合で。
高佐:あと、校内に橋があるんですよね。
山脇:みさお橋、っていう1.5メートルくらいの短い橋が。高校時代の私服は、どんな感じですか?
高佐:もう本当に、ジーパンに、赤のギンガムチェックのシャツ、みたいな感じのばっかり着てました。
山脇:素朴な感じ。
高佐:それで、高校3年生くらいの頃から、色づき始めて……
山脇:色づき。
高佐:はい。おしゃれに色づき始めて。雑誌のBoonとかFINEBOYSとか、見てましたから。
山脇:懐かしい! うわあ!
高佐:熟読して「なるほど、これがおしゃれか」と思って。函館駅前の棒二デパートに、CHANGING TIMESっていうブランドがあるんですよ。
山脇:チェンジングタイムス?
高佐:CHANGING TIMES。「なるほど、時を変えるのか」「時代を変えるんだな」と思って行ってみたら、ほんとうに時代を変えそうな服がずらーっと。かっこいんですよ。
山脇:あの頃って両足がつながれたズボンとかありましたよね。ヴィヴィアン・ウェストウッドが流行って、無理矢理スカーフだけでも買って首に巻くとか。
高佐:あ、あと、Poloのちょっとだぶっとしたセーター、流行ってましたよね。
山脇:ベージュとかの。大きければ大きいほどいい、みたいな。
高佐:着ました。
山脇:着てました?
高佐:でも、当時一番好んで着てたのが、オフホワイトの、なんかね、ちょっとツルツルした素材の半袖の白いシャツで。で、左の袖だけ黒の七分がちょっと出てて、重ね着みたいになって。
山脇:え、右手は?
高佐:右手は……半袖のまま。で、首元から、紐がついてて編み上げたみたいになってて。
山脇:はい。
高佐:左の腹から脇にかけて、大っきな墨汁のシミみたいなのがついてて……
山脇:え?
高佐:墨汁を、ぽーんとやって、パァァーンとちらばったみたいな……
山脇:ぽーん、ですか? ピシャ、じゃなくて?
高佐:ぽーん、です。それを「かっこいい……」と思って、そればっかり着てましたね。
無地の方がなんなら今は。
山脇:私たちが高校生の頃って、ちょっとデコラティブなものが流行りましたもんね。一個足さないとお洒落じゃないような気がしちゃう時代。
高佐:そうですね。僕達、今日とかシンプルじゃないですか。
山脇:本当だ、私たち今日すごくシンプルですね。
高佐:学んで学んで、ここに辿り着くんですよね、結局。なにか柄がついてないとお洒落じゃないんじゃないか、って思ってたんですけど。無地の方がなんなら今は。
山脇:若いときは、このブランドの服、ってわかるようにロゴがついててほしい、っていう貧乏根性がありましたね。
高佐:でも山脇さん、こないだもMAISON KITSUNEを着てたじゃないですか。胸にキツネのマークがあって。
山脇:正直、あのマークがなかったらね、買わないですよ。あのキツネのワッペンに3万円払ってるんだなって思って着てます。
高佐:あれから僕もすごいMAISON KITSUNEが気になって。それで、RAGTAGにいったんですよ。MAISON KITSUNEの白いコーデュロイのジャケットがあって「おっ、MAISON KITSUNEだ」と思ったら、あれ、たっかいんですね!
山脇:高いんですよ、本当に。
高佐:中古でも3万くらいしましたよ。
山脇:ええー、じゃあ元値は。
高佐:元値をみてみたら、12万円。ええ~! と思って。
山脇:信じられない。なおまた買って、売っちゃうんですね、その持ち主は。12万も出して買ったものを。すごいなあ。
高佐:いやあ、いいなーって思って。
山脇:MAISON KITSUNEですぞー! っていうね。
高佐:ねえ。
山脇:最近、誰かもキツネ着てたんですよね、誰だったかなあ…
高佐:え、誰だろう……(鬼ヶ島のアイアム)野田さんじゃないですよね?
山脇:野田さんではないです! 語気荒めて言う事じゃないですけど。
高佐:そんな「絶対に違います」みたいな言い方で。「汚さないで私のMAISON KITSUNEを!」みたいなテンションでしたけど。
山脇:いやいや、そんなそんな。
高佐:野田さんといえば、新宿のフラッグスにAMERICAN RAG CIEが入ってて。僕はあんまり買わないんですけど、見るだけ見ようって入ったら、たまたま、試着室から、緑のハーフパンツを履いた野田さんが出てきて。「あー野田さん!」「似合うかなあ」「いいんじゃないですか」って。
山脇:野田さん、1人でお買い物してたんですか。
高佐:僕も1人だったんですけど、びっくりしました。たまたま。
山脇:ボトムスを1人の時に試着するのって、ハードル高くないですか?
高佐:あー、僕はもともと、誰かとショッピングに行かないですね。
山脇:でも、一回ズボン脱ぐから無防備になるでしょう。怖くないですか?
高佐:まあ、でもねえ。そこは、お店を信頼して。そんな急に開けないですから、店員さんも。「今、無防備だ!」とはならないですよ。
……すいません。らんまの話だと興奮しちゃって。
山脇:音楽は、学生時代は何がお好きでした?
高佐:音楽は電気グルーヴにハマりましたね。ハリウッドザコシショウさんも電グル大好きだから、この間初めて共通の好きなものの話題になりました。
山脇:この対談では、全然そんなこと教えてくれなかったです(※第3回)。
高佐:ザコシショウさん、石野卓球さんプロデュースで曲を出したんですよね。
山脇:あ、『ゴキブリ男』(笑)! ほかは、音楽は。
高佐:小中学生の頃だと、妹の影響で、ドリカムとかを聴いてました。音楽、マンガ、だいたい一歳下の妹の影響を受けてて。『らんま1/2』も、妹が読んでて、それでハマったんです。
山脇:らんま好きですねえ。
高佐:らんま好きなんです。
山脇:なんでですか? あかね(ヒロイン)がいいんですか?
高佐:その時は、たまたま読んで、右京のウッちゃんに恋してしまって。
山脇:うっちゃん……? どの人ですか?
高佐:お好み焼き屋で、後ろで髪を結んでて、ほどくとファサーってなって。ヘラを持ってる子です。主人公の乱馬の元許嫁の。
山脇:え? 許嫁はあかねじゃないんですか?
高佐:父親同士で勝手に約束したんです。許嫁にしたら、お好み焼きの屋台をもらえるっていうので、でも乱馬の父親の玄馬がいいかげんな奴で、勝手に屋台で夜逃げして、それがバレて。玄馬は本当にいいかげんで、すぐ許嫁を作っちゃうんですよ。
山脇:シャンプーもですか……?
高佐:シャンプーは違います。何かがあって、シャンプーと乱馬がキスしてしまうんですけど。中国の掟ではキスは、女同士だと「一生かけてお前を殺す」、男と女だと「相手を旦那にする」っていうことで。
山脇:それで、乱馬とらんまで。大変な設定だ。
高佐:はい。そうなんですよ。……すいません。らんまの話だと興奮しちゃって。
山脇:本当に好きなんですねえ。
高佐:好きすぎて、最後を迎えたくなくて、最後の巻だけ読んでないんです。
吉住渉先生の『ハンサムな彼女』がすごく好きで。
山脇:じゃあ、お好きなものは、妹さんの影響が大きいんですね。
高佐:そうです。それで少女マンガも読んでいて。吉住渉先生の『ハンサムな彼女』がすごく好きで。
山脇:ああ! 主人公が中学生で女優で、新発売のウォークマンのCMをやったら、「好きな色の選んでいいよ」って商品をもらえるシーンがあって。あれを読んで「芸能界っていいなあ!」って思ったのを覚えてます。
高佐:ペパーミントを選ぶんでしたっけ? サーモンピンクと悩んで。
山脇:あとスカイブルーかな? 『ハンサムな彼女』なつかしいですね。
高佐:僕、こないだ買っちゃいました。大人買いで。
山脇:いいなあ。二番手の可児収くんが好きでした。一番手の、相手役の一哉くんよりも。
高佐:それはやっぱり、可児くんが関西弁だからですか?
山脇:いやあ、吉住渉先生の作品は結構二番手の子がいいなって。次の作品『ママレードボーイ』でも、二番手の銀太がよくないですか?
高佐:えー。それは一番手は、松浦くんでしたっけ。
山脇:でしたっけ。遊くん。松浦遊くん?
高佐:僕はね、遊派なんですよねえ。遊が好きですね。
その時はまだ女性経験もなかったんですけど、学んだ事がひとつあって。
高佐:『ハンサムな彼女』で、主人公の未央が一哉とつきあうことになって、一哉の家に未央が遊びにきて。未央が台所でジャムを持ってたら、一哉が後ろから抱きしめるんですよ。そこで、ジャムのビンをゴトン……! って落として。あ、これはキスする感じかな、ってときに「ピーンポーン!」って映画監督のアーサーが来て「あれ~、お邪魔だったかな~」っていうシーンが僕はもう、好きですね。
山脇:あの、未央の友達で、一哉のことを好きな、歌手のショートカットの……
高佐:えーと。彩ですね。
山脇:彩! ハワイで、未央と彩2人で一哉の悪口をお互い言い合って、コトンって肩寄せあいながら「でもやっぱり……嫌いになれない……」っていうシーン。
高佐:あれもいいんですよね! わざわざハワイまで未央がプライベートでくるんですよね。それで告白してフラれるんですよ。
山脇:そう! そしてそこで……
高佐:スコールが降ってくるんですよ! 「雨……? 涙……?」
山脇:わー!
高佐:そこで僕、その時はまだ女性経験もなかったんですけど、学んだ事がひとつあって。
山脇:え、なんですか?
高佐:一哉は映画監督になりたいんだけど、アーサーっていうすごい映画監督から「お前は役者に向いているから、役者をやれ」って言われて。で、ジョディっていうアメリカの女優が相手役で、キスシーンがあって。一哉はジョディの耳に手を置いてキスするんですよね。日本に戻ってきて、その映画を未央と観たときに、未央はすごい怒ってるんですよ、キスしてるから。「でもこれは演技だから」って言っても、「本当に演技なの~?」って。「一哉ってさあ、キスする時、耳に手をやるよね!」
山脇:あった、ありましたね!
高佐:そこから、「女性とキスするときは耳に手を置けばいいんだ」と思って、ずっと実行していた時期があります。
山脇:(笑)そういうところから、学びますもんね。高校時代は、そういう、おつきあいとかは。
高佐:まったくないですね。
クラシックはね、かっこいんですよ。
山脇:で、音楽の話です。
高佐:忘れてました。ついつい『ハンサムな彼女』の話で。
山脇:今は、好きな音楽ってありますか?
高佐:今は……やっぱり椎名林檎、ですかね。
山脇:じゃあ東京事変も?
高佐:あー……すいません、ちょっと……。すいません、かっこつけました。
山脇:なんですか、なんですか。どうして。
高佐:これを言うと、変な感じになるし「へえー……」って話も盛り上がらないので、言ってないんですけど。本当に好きなのは、クラシックなんです。
山脇:ああー……高佐さんピアノ弾きますもんね。ピアノは何歳から?
高佐:ピアノは小1から中3まで。練習が嫌になってやめたんですけど、8年くらいやってました。
山脇:音感がありますよね。耳コピで太田胃散の曲を弾いてたり……
高佐:うーん。絶対音感ではない、ですかね……こういう(机をコンコンと叩いて)、この音はわかんないですけど、ピアノで音出されたら、わかります。
山脇:あの鳥はソで啼いてる、雨音はミの音だ、とかはない?
高佐:やりたいですけどねえ。
山脇:クラシックだと、どういう……「あの指揮者がいい」とかですか?
高佐:曲ですね。ベタですけど、ショパンとか。
山脇:やっぱりピアノ弾かれるから。
高佐:そうですね。でもオーケストラも好きです。ラフマニノフとか、ベタですけど。クラシックはね、かっこいんですよ。モーツァルトとかもかっこいいですし。
山脇:じゃあ、今のベスト1、1番好きなの何か、て聞かれたら。
高佐:えーとねえ……『ジュピター』ですかね。『木星』。
山脇:平原さんで有名になった。どこが好きですか。どういうところが。
高佐:やっぱり最初の、小ちゃく入って……ヴァイオリンかな、テッテテテテ ターン……タッターンタタタッタッターって。静かに入って、ドン! そこでなんか……「きた!」みたいなのがあって。で、中盤ぐらいから「テテテ~テテテテーテテーン」が始まって。かっこいいんです。言葉で上手く表現できないですけど。
山脇:音楽って、でも、そういうものですもんね。
高佐:はい。
みんな音楽が好きすぎて、10分前にカラオケ屋に入って。
山脇:ASH&Dコーポレーションで音楽のライブをやられたりとか、事務所皆さん音楽がお好きで。
高佐:音楽のライブ、一回だけやりました。どこだっけな……結構でかい会場でやったんですけど。それぞれが、歌を歌う、だけの、ライブです。
山脇:何か仕込んだり、ネタっぽくやる、とかじゃなくて。
高佐:「ちゃんと、歌唱力で勝負したい」って大竹まことさんが言ってて。大竹さん、レコード出してるんですよ『俺の背中に火をつけろ!!』っていう。
山脇:危ないですねえ。
高佐:本当だ。危ないですよねえ。
山脇:ハートならいいですけど、背中だと……
高佐:そういう、完全に火傷しちゃう、歌があるんです。あと、きたろうさんが五輪真弓の『恋人よ』を歌って。そのときにピアノ伴奏させてもらったりとか。
山脇:ピアニストとしてオファーがあったら、じゃあ。
高佐:やりたいです。何年か前に斉木しげるさんがシャンソンを歌ったときに、その伴奏もした事があって。
山脇:初見でも、わりとだいたい弾けちゃいますか。
高佐:そんな難しくなければ。
山脇:『すいているのに相席』でも、ピアニカすらすら弾いてましたもんねえ。
高佐:この前も事務所の新年会があったんですけど、「二次会はカラオケです」と言われていて。19時に一次会が居酒屋で始まって、そういうのってだいたい2時間制だから、だらだら飲んで食べて、ゆっくりカラオケ行く流れじゃないですか。でも、みんな音楽が好きすぎて、もう20時半には「21時からカラオケとってるんで、締めましょう」って一本締めして、移動するんですよ。お店側が「まだデザートが……」って言っても「いやカラオケ行くんで」って、みんなで10分前くらいにカラオケ屋に入って。
山脇:そっちがメイン。
高佐:紅白歌合戦を事務所の全員でやったんです。大竹チームときたろうチームにわかれて。
山脇:どうやって勝敗を決めるんですか? 誰かの票で?
高佐:DAMに入ってる採点機能です。点数を足してって足してって。
山脇:勝ったのは……?
高佐:きたろうチーム。僕はきたろうチームで、阿佐ヶ谷姉妹は大竹チームでした。
山脇:それは強力な……
高佐:(ザ・ギースの)尾関も大竹チームで。尾関が、その日、珍しく酔っぱらったんですよ。日本酒呑んだりして、なんかあったんじゃないかっていうくらい。
山脇:えー。普段の打ち上げでもあんまり飲んだりしないのに。
高佐:カラオケでも尾関はずっと潰れてて、寝てるのに、寝ながらポップコーン食べてて。食べようとして口に運んでもポローン……と落としちゃって。
山脇:地獄みたいですね……
高佐:無限ポップコーンの。
「どっちでもいいんじゃない?」「どっちでもいいんだったら、入ります」
山脇:肝心な事を聞いてもいいですか?
高佐:はい。
山脇:なんで尾関さんと2人、コンビになったんですか?
高佐:元々、別のコンビで……尾関はトリオをやってて、それぞれ解散して。そのあと、コント劇団みたいな所に入って。その時に一緒で。
山脇:はい。
高佐:京都の故林広志さんのGOVERMENT OF DOGSっていうコントユニットがあって……知ってますか?
山脇:あー! はい。
高佐:その故林広志さんの主宰するコントのワークショップがあったんです。僕達がやってた劇団も立ち行かなくなってきた頃で、「ちょっとそこに行ってみよう」って行ったのが、たまたま、僕と尾関の2人で。そこで故林広志さんに「2人でやったら?」って。だから『ザ・ギース』っていう名前も故林さんにつけてもらったんです。
山脇:それは何年くらいの出来事ですか?
高佐:それが2004年です。2004年3月。
山脇::じゃあ『絹』に出てたときも、わりと初期、というか……
高佐:組んで間もないですね。事務所にも入ってなかったですし。
山脇:事務所は、どんなきっかけで入ったんですか?
高佐:シティボーイズが好きだったので、シティボーイズライブの物販手伝いをしながら……。当時、唯一所属している芸人がユリオカ超特Qさんで、ユリオカさんの単独ライブの手伝いをしていたら、最後に一緒にコントやろう、という話になって。尾関とユリオカさんが募金箱を下げて、僕がとにかく2人の頭を叩くっていうコントをやったんです。その時に、たまたまシティボーイズさんが3人とも観に来てて。「あの2人、入りたいらしいですよ」「まあ、どっちでもいいんじゃない」って。「どっちでもいんだったら……入ります!」って入りました。
「いや、俺はこういう華やかな、面白い世界に飛び込むんだ」
山脇:勉強が大好きだった高佐少年が、青年になって芸人になろうと思った、そのきっかけはなんですか?
高佐:もともと中学3年のとき、芸人になろうと思ったんです。
山脇:え! それは学歴社会について泣いた時に?
高佐:同じくらいの時期に。札幌に吉本ができたので、一番仲が良かった友だちにそれとなく、「コンビ組もう」って誘ったら「いやいや俺は現実の道を歩むから」って断られて。それで、とりあえず高校に行って。で、東京で芸人やりたかったから、親への口実作りっていうのもあって「東京の大学にいく」って。
山脇:なんで芸人になりたかったんですか?
高佐:うーん……面白かったから、です。テレビを観てて、面白いな、って。
山脇:こういうことやりたいな、って。
高佐:はい。家が学習塾だし、真面目だし。本当に冗談なんて言わない家庭だったんで。父親なんて特に。母親はまだ、あれですけど。そういう息苦しさみたいなのもあって、「いや、俺はこういう華やかな、面白い世界に飛び込むんだ」みたいなのがあったんです。
山脇:あー、かつての高佐少年の気持ちを思うと、好きだった勉強も、今、色々なライブで生きてるから、よかったな、ってなりますね。
高佐:確かに。そうですね、生きてますね。
山脇:勉強を好きな気持ちと、面白い事をやりたい気持ちが、分離してなくて、1つになってる感じが、いいな、って。
高佐:統合されたってことですよね。
山脇:2つの自分が統合されて。これからも、じゃあ……
高佐:おもしろ勉強を。はい。そうですね。
急に? 「オアー!」って?
山脇:新年なので、2017年の抱負をひとこと、ください。
高佐:なんだろうな、『動物に触れるようになる』です。
山脇:あ、動物苦手なんですね。こわいんですか?
高佐:苦手ですね……嫌いです。見てる分には、可愛いなって思うんですよ。豆柴とか、猫とか、ああ可愛いなあって。でも、いざ触るとなると……くさいじゃないですか、あいつら。
山脇:まあまあ、ケモノですから、ケモノ独特の……
高佐:それがねえ。あとは、毛とか……汚れるな、って。それだけなんですよね。
山脇:でも、これからそういう「動物と遊ぼう」みたいな企画とか、ロケとかもあるかもしれないですもんね。
高佐:そうです。
山脇:あ、動物ふれあいコーナーに、自分から飛び込んでみたらいいんじゃないですか?
高佐:急に?「オアー!」って?
山脇:「オアー!」とはいかなくていいですけど、動物園の、子どもがヤギとかハムスターとかに触れられる、ちょっとしたふれあいコーナーに、ちょこちょこ行ってみるとか。
高佐:そうですね……確かに。
山脇:いや、気が進まないなら、いいですけど。
高佐:気が進まない感じを出してましたね。全然気が進まなかったです。見る分にはいいんですけど。
山脇:心理学の人に訊けばいいんじゃないですか。なんで自分が動物いやなのか。セラピーとか受けて。
高佐:いや、でも理由ははっきりしてるんで。
山脇:そうか。そうですね。あとは、慣れですな。
高佐:はい。今年は触れるように、慣れます。