記憶を抹消しようとしてますね……
山脇:改めてしゃべるのは……
野田:ほぼ初めてですかね。
山脇:え! そんなことないですよ。タクシーに乗った時とか、話してますよ。
野田:あー、酔っぱらってるときが多いですかね。
山脇:2年前くらいの冬に、タクシーの中で野田さんに「結婚っていいものですか」って聞かれて。
野田:え! そういうことで自分が悩んでたのかな。
山脇:忘年会の後だったかな。
野田:そうっすねえ。そういう話は山脇さんに結構してますもんね。大概、相談にのってもらってますもんね。いやー、でも、すみません、あんまり覚えてない。色々あって。
山脇:記憶が……
野田:記憶を抹消しようとしてますね……
山脇:昔のことですからね。
野田:うん、昔のことです。その節はありがとうございました。
山脇:はい。じゃあまず。お洋服のことを聞きますね。野田さんって、実はおしゃれだなっていう話があって……
野田:いやいやいや(笑)そんなこと、え? そう?
山脇:コントライブ「すいているのに相席」で共演した女優の高田郁恵さんと楽屋とかで話してて「野田さんはお洒落だよね」ってなりましたよ。あと、おばけザウルスのこやつタイムさんとも。
野田:うわあー、じゃあ、間違いないですね。女の人たちに、そんな風に言ってもらえるなら。
山脇:よく、はい。
野田:嬉しいんですけど、でも僕、BEAMSしか知らないですよ。BEAMSしか行かない。
山脇:そうですか? でも、前に撮影でつけてたネクタイって、どこのでしたっけ。
野田:ネクタイ……紺色のかな? あれはね、あれだ。AMERICAN RAG CIE。
山脇:ほら、おしゃれですよ(笑)。
野田:BEAMSとAMERICAN RAG CIEには行きます。新宿しか行かないけど、あ、あと昨日はね、あそこ、裏原宿に行きましたよ。
山脇:裏原に!
野田:僕は買い物しなかったけど、はんにゃの金田くんがリーボックのポンプフューリー買うって言って。あの……裏原に行くまでの、明治通りでUターンして、電力館とかあったところ……あれ、もうないのかな……。
山脇:なんでしたっけ。煙草と塩のなんとかではなく?
野田:タワレコとかある方の。その途中の、スケートショップにいったんですよ、あの……。
(PANORAMA FAMILY:『STORMY』ですか?)
野田:そう、『STORMY』! 僕初めて行ったんです。スケーターみたいな人がたくさんいるところ。僕はそこでは買い物できなくて……。その先の靴屋で金田くんがポンプフューリー買って。
僕ね、ジュード・ロウに似てるねって。
山脇:好きなお洋服のジャンルとか、選ぶ時のこだわりはあるんですか?
野田:やっぱ……そうっすねえ。あれっすかねえ。僕、やっぱアメカジが好きかもしんないですねえ。
山脇:あ、フルーツポンチ亘さんの好きな。
野田:そう、亘くんのアメカジの感じが好きですし。僕、ジーパンをずっと育ててたんですよ。
山脇:育てた!
野田:最初っから、色を。それで、最近、股擦れで股のところに穴が空いちゃって。渋谷の方にあるお店に修理出しにいったら、半年待ちって言われちゃって。ドゥニームっていうところなんですけど。
山脇:どぅ……にーむ?
野田:Denime(デニム)って書いてドゥニームって読むところ。20歳くらいのときからずっとね、ジーパンはそこで買ってるの。今回で3本目で、自分で洗濯して、みたいな感じでやってるんですけど、大体いつも股に穴が空くんで、修理する。
山脇:はい。
野田:で、今回は亘くんに依頼しました。
山脇:えー! 亘さん修理できるんですか
野田:あ、亘くんの知り合いの所に。
山脇:亘さんづてで。
野田:そう。千葉にね、職人さんがいるらしいんですよ。そこにお願いしました。
山脇:あらー。おしゃれですよ。
野田:えーえー、そんな。なんていうんでしょう。自分で育てる感じが……好きですね。
山脇:かっこいい(笑)。この連載、4回目なんですけど、お洒落の話を、こんなに話してくれる人初めてですよ。
野田:やはは~(照れ笑い)。本当?
山脇:みんな恥ずかしがってあんまり話してくれない、なかなかお洒落の話は。
野田:前回これに出てたハリウッドザコシショウさんと、革ジャンの話をこの前したんですけど。僕ね、頭がほら、ちょっとM字ハゲだから、外国人っぽいんですよ。だから革ジャン着たら似合うんじゃないか、って。それでね、30万円の革ジャンを試着した写真があるんですよ。見ます?(写真を見せる)ほら、これ、かっこよくないですか。かっこいいでしょ。
山脇:ほんとだ。似合いますね。
野田:この写真を見た瞬間にね、ああ、「俺、革ジャンだな」って思って。こういうの欲しい。
山脇:なにっぽい、なんだろう。
野田:これ、ライダースって言ってたかな。
山脇:外国の人ってこういう感じなんですか。
野田:僕ね、ジュード・ロウに似てるねって言われて。(ジュード・ロウの写真を見せる)この、髪のこういう感じが、ジュード・ロウに似てるんすよ。
山脇:わあ、本当だ、質感が。
野田:将来的に、隠しきれなくなったら俺こういう感じにしたいんですよ。
山脇:可愛いですもんね、マイナスになってないですよね。
野田:セクシーだし。
山脇:これからはセクシーな方向に。今はわりとキュートだから……
野田:キュートな一面を出しつつ、禿げ上がったらセクシーな感じになっていこうかな。
山脇:禿げ上がったら。いいなあ。
野田:いやあ、お洒落は好きですね。
Mr.Childrenを「ああ~いいなあ~はあ~素敵だなぁ~」って
山脇:音楽は、何か好きなのはありますか?
野田:音楽はね、僕はずっとMr.Childrenが好きです。
山脇:ずっと。いつ頃から?
野田:中学生くらい……高校生かな。『Atomic Heart』とか聴いて。『Tomorrow never knows』聴いて、わーってなって。
山脇:『若者のすべて』の頃だ。
野田:他に色々好きな人いるんですけど、Mr.Childrenだけはずーっと好きで、好きすぎて。5年前くらいかなあ、アルバム出たばっかりの頃に小田急線成城学園前のホームで「ああ~いいなあ~はあ~素敵だなぁ~」ってイヤホンで聴いてたんです。で、パッと目を開いたら、ギターの人が真横にいたんですよ。「うわああ~」ってなって「握手してください」って。
山脇:ギターの人って……
野田:田原さん。
山脇:「浜ちゃんに似てる」って『HEY!HEY!HEY! 』でずっと言われてた方!
野田:そうそう。もうびっくりして、「はあ~わあ~あの~(イヤホンを外して)ちょうど聴いてたんです!」って言って「好きです!」って握手してもらって。でも、乗る電車が同じじゃないですか。2人とも乗って、僕は座ったんだけど、田原さんずっと、乗車ドアの所にぴっちり立って、顔と窓ガラスがこーんな近くなってて。優しい人なんでしょうね、でも恥ずかしいから、僕が見えないように、って、ずっとこう、立ってて。あー、ちょっと申し訳ないことしたな、って。「ファンです」って言われらやっぱ怖い……っていうか、気を遣っちゃいますもんねえ。申し訳なかったなあ。
山脇:歳くらいの頃ですか?
野田:それ、30前半くらいかな。
山脇:いまって30……
野田:39歳。
山脇:39歳になったんですか! 2016年で39歳に。どう、ですか? 感想というか……?
野田:どう思います? 山脇さんって今……
山脇:35歳です。4つ違いかな。
野田:そんなに、あれですね。年代が。
山脇:そんなに離れてないんですよ。
野田:28、29歳のときは「やばい、もう20代が終わる」って思って、ちょっと焦りがあったんですけど。今回は、40歳に向けての焦りはないですね。そんなもう、40になっても変わらないですよね。40代でおっさんっていうイメージがないですもん。
山脇:確かに。
野田:20代から30代に向けての方が「若い感じがなくなるんだ」っていうのはあったけど、そういう恐怖はないですね。
山脇:ああ。
野田:ひとつだけ、恐怖というか、不安なのは、ずっとひとりなのかなって。
山脇:それは、孤独の「独り」のほう……
野田:そう、本当の、ほんとの、独り。孤独。独房の「独」。
山脇:わあ。
野田:やーばいですよ、本当に。
欲がない時、力抜いてる時ほど、いい音がする。
野田:やっぱりね、健康には気をつけようとはしてますね。運動して。
山脇:あ、野田さんボクシングしてるって。
野田:そう、高田郁恵さんと一緒のジム行ってて。高田さんどんどん上手くなってってますよ。
山脇:高田さん真面目だからなあ。
野田:最初は女の子パンチだったのが、この前みたらシュッ! シュッ!って。黙々と通ってる。
山脇:おおー。
野田:本当に、おすすめですよ。僕、飽き症なんですけど、ボクシングは飽きないっすね。あのね、いい音がするんですよ、調子いいとき。欲がない時、力抜いている時ほど、いい音がする。いいパンチが出せるんですよ。でも、「こういうふうにしてください」って言われて、意識して力入っちゃうと全然ダメで。面白いっすよ。
山脇:それって芸事にも通じる……
野田:本当そう。3分間やらなきゃいけなくて、それはしんどいんですけど「これ乗り越えたら!」って自分で思えるし、精神の鍛錬にもなります。すごい、いい。
山脇:何年くらいやられてるんですか?
野田:2015年の8月とかだから、まだそんなに。いやあ、いいっすよ。
山脇:ジム仲間もできて。
野田:そう。仲間が増えて。高田さんをジムに誘ったら、「あのキレイな人って野田さんの繋がりですか?」って、俺がなんで美女と知り合いなのか? ってジムの皆に不思議がられて。「いやいや、共演したんですよ」って。「あっ! そうなんですかあ!」ってみんな驚き。
山脇:なんでボクシングやろうと思ったんですか?
野田:本当はやるつもりなかったんですけど、金田くんが、一緒に呑んでる時に「明日体験入学いこう」って言って、「ああ、いいよー」って。で、行ってみたら体験入学やってなくて、俺はそこで帰るテンションだったんだけど、金田くんが「じゃあ」って入会申込書を書き始めちゃったから、それで、ねえ、なんか後輩が入会するのに……。正直に言えばよかったんすけど「金がない」って。でももう、後輩が入るんだから、って。俺もその場で金だけ借りて、入会して。「まあ1ヵ月くらいやればいいかな」って思ったんですけど、始めたら、面白いから、ハマっちゃって。
山脇:ボクシングをやって、芸の面で変わったことってありますか?
野田:うははー! 声が大きくなりましたかね。声が通るように。
山脇:ええ。
野田:あとは、面と向って喋ってる時に、「最終的にこいつ殴ればいいや」って思えるようになった。強気な感じ。精神的に優位に立てる、みたいな。殴る方法を知ってるぞ、って。
山脇:気持ちが強くなった?
野田:相手がなんか言ってきた場合、詰めて来た場合に「本当の"殴る方法"はあなたより知ってるから」って思って、自分が優位に立てるっていう。
山脇:やらなくても、やれるんだ、って思うだけでも気持ちが強くなりますよね。実際には、やらないとしても。
野田:そこは、自信つきましたよ。なんか、無茶な事とか、嫌なこと言われても「マジ、殴ればいいんだから」って心の中で。
山脇:うわあ、いいですねえ。
野田:うふふふ。
「なんでわかんないんだよ!!」って怒ったことは、あります。
山脇:強気ですか、弱気ですか。
野田:温厚っていわれるけどねー。
山脇:そんなイメージがある。
野田:でもね、最近はなくなったけど、相方に言わせると、かんしゃく。「かんしゃく持ちだなお前は」って。
山脇:赤ちゃんみたい。
野田:昔はよく喧嘩とかしてた。自分が思ったことバーって言っちゃう感じの喧嘩。後輩からも「怖い」って思われて。後輩に怒ったことはないですけど。
山脇:プチンってきちゃう?
野田:そこまでは……
山脇:ぷっつん?
野田:ぷっつんなんて、そんなそんな『何やるかわかんない』まではないけど「なんでわかんないんだよ!!」って怒ったことは、あります。
山脇:どういう場面で怒るんですか?
野田:自分の記憶にあるのは、1度、ネタ見せの時に、他の2人が遅刻してきて。3人で話してて、その日はまあ冷静に「遅刻だけはやめようか」って言って。自分もときどき遅刻はするんですよ、でもその時はイラっとしちゃって。許せなくて、なんか。
山脇:はい。
野田:数日後に、2人ともまた遅刻してきて。ネタ見せの出番が始まりそうなのに、ぎりぎりまで来なかったから。来た瞬間に「ほんともう、いいかげんにしてよ」って。
山脇:『火花』みたいですね……。
野田:ああー。『火花』。Netflix。
山脇:そんなような場面が確か。
野田:その時のことは覚えてます。本当に腹立ちました。「なんでわかんないの」って怒りましたよ。
山脇:でも、怒れるのはいいことですよね、私わりと飲み込んじゃうからなあ。
野田:その怒りが溜まりに溜まったらどうするんですか?
山脇:奇行にでちゃいますねえ。
野田:奇行って? 相手に向けずに、こういう感じ?(テーブルをコツコツ叩く)
山脇:怒りをわかってほしくて。慮ってほしくて。直接言えないから。
野田:でもそういうの、相手にはわかるじゃないですか。伝わるから、「じゃあ言ってよー」みたいになりません?
山脇:そうですね。あとは、奇行に出たことを単純に咎められたりして。
野田:ああー、俺、それイラッとしちゃうかもしれないですね。
山脇:言わずに怒ってる方が?
野田:言ってもらえないと、こっちがどうしたらいいかわかんなくて「うおああ」ってなりそうですねー。
山脇:ですよね。最近は、言葉を選んで「このことに怒ってます」って伝えるようにはしてますけども……
僕は言葉のチョイスを間違えてしまうんですよ……
野田:言葉って大切ですよね。言葉1つで、すべての状況が変わってくるって最近わかりましたよ。
山脇:どんな?
野田:なんだろう、後輩に、高圧的じゃなくて、どんだけ、こう……ね。僕は言葉のチョイスを間違えてしまうんですよ……どういうとき……たとえば……なんだろうなあ。
山脇:美味しいって言いたいときに「まずい」と言ってしまうとか?(※美味しい鮪を食べた際、美味しい! という気持ちが強すぎた野田氏が「まずい!」と声を上げた事がある)
野田:いやあ(笑)。極力最近は、私みたいな者が……いちいち「まずい」とか、「ダセー」とかマイナスなことを言わないようにしています。
山脇:え、なんでですか?
野田:だって、他の人が言うでしょ。
山脇:ん?
野田:たとえば、この人に対して、自分は元々思うところがあって。で、誰かが言うでしょう。「こいつは、こういうところがあるんだ」って。そういうとき、前は、自分もつっこみっぽく何かを言ってたんですけど。あんまりうまくないんですよ、それが。変な感じになってしまうんですよ。
山脇:はい。いじるみたいな流れのときかな。
野田:相手とすごく仲良かったらいいんですけど、「この人のこういうところ、本当やだな」ってところが、顔に出ちゃって。本当の感じが出ちゃって。なんか良くないな、って思っちゃって、言わないように、しようかな、って思ってます。
もう、本当に怒られたくないから。
山脇:あのね、野田さんって真面目なんですよ。
野田:真面目、なんすかね。そうかな。でも、真面目っぽい、ガサツじゃないですか。
山脇:真面目とガサツは同居しますよ!
野田:え、するんですか? そうなんだ。えー……。
山脇:「几帳面」と「ガサツ」は同居しないけど、真面目の反対は別にガサツではないから。真面目なんだけど、ガサツ、は成立するはず。
野田:僕、真面目っぽく見せようとしてませんか? そんなことないですか?
山脇:ご自身が? ですか?
野田:うん。
山脇:でも台本ちゃんと覚えたり……真面目に……
野田:それは一所懸命してますよ。うん。
山脇:それは真面目ってことじゃないんですか。例えば「覚えてないけど、ごまかそう」ってことはないですよね。
野田:それはない! もう、本当に怒られたくないから。
山脇:(THE GEESEの)尾関さんが、たまに、ごまかしますでしょう?
野田:ああー(笑)そうなの?
山脇:尾関さんがごまかしてるのを、何度かみてて。
野田:そっか、それで見破られちゃうから、だから馬鹿にされちゃうんだねえ、尾関は。
山脇:尾関さんも本当はすごく真面目なんですけど、たまにうっかり台本忘れたり無くしたりしたときに「正直に言うと怒られちゃうから、言わないで乗りきろう」って頑張って、結果、ばれちゃってる、ことがある。
野田:僕って、台本覚えてきてるってイメージ?
山脇:ですよ。
野田:あ、そうなんだ! よかった、よかった。
山脇:まだ2回しか一緒にやってはないですけど。はい。
野田:俺も、そんなに覚えてきてる感覚ないから、尾関が責められると「しめしめ」って。「俺にこないな」って。
山脇:尾関さんも、逆に野田さんがいるから、自分に矛先が向う回数が減ったって言ってたけど……
野田:底辺の争いだねえ。
山脇:でもね、安心ですよ。
精神バランスがとれてね、「お笑いも頑張ろう!」って。
野田:あの(『すいているのに相席』の)稽古楽しいですよねえ。A先生がまたストイックだから。
山脇:ね。楽しいですね。
野田:僕はね、稽古好きなんですよ。なんていうんですか、稽古嫌いな人もいるじゃないですか。「なんで朝から晩までやるの」っていうひと。僕は全然出来るタイプ。
山脇:あら、ストイック。
野田:いやいや、僕は、自分1人ではできないから、誰かがいて、ひっぱってくれると、できます。
山脇:2016年の後半、野田さんはすっごくお芝居に出てらした印象があって。
野田:たまたまですよ、たまたま。やってみようかな、って。
山脇:芸人業と俳優業って、気持ちの上でわけてます? それとも地続き?
野田:なんでしょうねえ。前回、出演した舞台(時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』)がすごく面白かったんですよ。
山脇:赤坂でやってた舞台。
野田:そう。ロングコントみたいに、2時間くらいやったんですけど、すごく楽しくて。本当に楽しかったから、精神バランスがとれてね、「お笑いも頑張ろう!」って感じになるんす。あのね、いいっすよ。
山脇:なんだろう、両方やってバランスがとれる、みたいな。
野田:お笑いしかやってなかったから、自分で行き詰まって、もうバラエティ番組も観なくなってて。壁にぶち当たったっていうか、「ああ、どうしよう」って思ってて。だけど、普通のお芝居の方を一所懸命やっていたら、逆に、お笑いの素晴らしさに気づく、みたいな。楽しくなった。
山脇:ちゃんと台詞や段取りがきっちり決まって、っていうのと、自由で、瞬発力が求められたり、その場の空気で変化していくのの、どっちもあって面白い、っていう感じですかね。
野田:そう。ちゃんと、芝居の方で楽しめたから、かもしんないですね。一所懸命やったから、お笑いも、楽しんで出来るようになって。そういうの大事かなって。
野田:だから、芝居も、やりたいですね。
山脇:野田さん、「でんでんになる」って言ってるとの噂も。
野田:なりたい。お笑い界のでんでん。
山脇:お笑い界の……?
野田:あ、あの人もともとお笑いか。
山脇:でんでん、っていう名前が……そうですね。
野田:『冷たい熱帯魚』(監督:園子温)のでんでんさんがもう、怖くて。
山脇:怖かったですよね。ああいうのが一番怖いですよ。だって、いい人と思っちゃって近寄っちゃうし。
野田:ああいう感じの、あの怖さが出せるからすごいなーって。でんでんさんは朝ドラの『あまちゃん』にも出てたんですけど、それはすっごい普通のおじさんの役なんだけど、普通の演技がもう怖いから、観ててはらはらしちゃって。奇行に走らないかな、誰か殺すんじゃないかな、って。
山脇:『あまちゃん』なのに。
野田:それくらい『冷たい熱帯魚』すごかった。あの印象がすごかったから。
山脇:優しければ優しいほど怖い。
野田:裏があるんじゃないか、って。
カメラマンさんが僕の顔を見ただけで興奮するんですよ。
山脇:野田さんは、映画も出られてますもんね。
野田:はい。楽しいですねー。楽しいですよ。僕やっぱ褒められるのが好きなんで。カメラマンさんが僕の顔を見ただけで興奮するんですよ。「いい顔してるね~早く撮りたいよ~」って。
山脇:うわ、いいなあ。
野田:僕、全然うまくないんですよ、でも絵力が強いんでしょうね。だから嬉しくて。やっていきたいです。
山脇:あー、野田さんの映画祭やりたいですね、野田さんを主役にした、短い短編を色んな人が撮って、っていうイベント。
野田:うわ、それやりたい! 自分でMCやって。
山脇:野田さんみてたら、確かに「私だったら野田さんにどんな役やらせるかな」って考えちゃいますよ。
野田:うわー嬉しい。全力でやりたい。
山脇:前に、A先生が「野田さんの台詞はどんどん書ける」って仰ってたの、そういうことなんだろうなーって思いました。
野田:え、そんなこと言ってくれてたの?
山脇:え、一緒にいましたよ、そのとき。
野田:あ! あのときか! みんなでインタビュー受けたとき!
山脇:野田さんを使うならどう使おうかな、って考えたくなる、そういう演者さんなんですよ。
野田:わあー。
山脇:なにがいいかな……喋らないタクシー運転手とか……
野田:うわあ、背中で語る、みたいな。やりたいなー。
山脇:ホステスが乗ってきて、みたいな、渋いやつ。
野田:語らないけど、お疲れさん、みたいな。
山脇:それか岸谷五朗の『月はどっちに出ている』的なのか……
野田:やりたいなー。そういうのやっていきたいっすね。そういうのって、自分で、募ればやってもらえるんですかね。「僕を、撮ってください」って……
山脇:規定をちゃんと決めたらいいんじゃないですかね。何分以内で、とか。いま、iPhoneでも撮ろうと思えば撮れるから。
野田:うわあ、いいなあ、あ、ごめんなさい、すぐ本気になっちゃった。
山脇:いやいや、いいですよ、2017年、野田イヤー。
野田:野田イヤー、ね。僕ね、ギャグを作ろうと思ってて。やっぱギャグを求められるの「ギャグやってよ」って。でも、全然ないんですよ。ひとつふたつくらいしかなくて、今。
山脇:え? 2つもあるんですか? 知らないよ……
野田:いやいやいや、最近考えたやつ。やっとね、ひとつ、ふたつ。
山脇:ええー。
野田:でも自己紹介ギャグがないから、考えなくちゃ、って。「なんとかで~アイアムの~だ~!」みたいな、そういうのがないから、考えなきゃいけないから、自分でギャグのライブ立ち上げようかなって思ってるんです。
高佐は素晴らしいっすよね。求められることを、しっかり。たいしたもんですよ。
山脇:ギャグってすごいですよね、『ギャグラリー』とか、イベントを観てるとみんなすごい。
野田:そう、(THE GEESEの)高佐がね、元はあんなギャグをするやつじゃなかったんですよ。でも今はメキメキと、すごいよね。
山脇:高佐さん、会って5年くらいですけど、一番印象が変わったかもしれないです。
野田:確かに。昔は、おとなしくてシュッとしてるイメージだったけど、今はそんなことない。いやー、あいつかっこいいっすよ。
山脇:あんなに踊ったりすると思ってなかったですもん。
野田:素晴らしいっすよね。自分が求められることを、しっかりやってるんですよ。たいしたもんですよ。
山脇:私、高佐さんに最初にちゃんと会ったのが『煩悩短編小説』の朗読イベントで。
野田:はいはい。
山脇:当時の高佐さんは、文学青年みたいというか。
野田:あー、頭良いんだろうなあ、って感じだったけど、最近は、ほんと何考えてんのかわかんないよ、って感じだもんね。
山脇:マッドサイエンティスト。
野田:マッド。狂気がね。
山脇:狂気じみてる今の方が、とっつきやすいですよね。こちらが頭悪くても大丈夫というか。
野田:あー。あー確かに。
山脇:野田さんも、最初はこんな印象じゃなかったですよ。
野田:え、そうなの? 最初っていつ? すいているのに相席以外で?
山脇:何年か前の花見です。
野田:井の頭公園の? あー。はいはい。僕が途中で寝ちゃったやつかなあ。
山脇:アニメ『スクールデイズ』を昨日観た、って野田さん言ってました。その頃。
野田:アニメ? なんだろう……
山脇:マコトって男の子が主人公で、セカイとコトノハって女の子がいて、っていう。
野田:ああ、あの最後ホラーっぽいやつ。あの頃か、はあはあはあ。すごい覚え方ですね。え、どういう印象でした?
山脇:なんか……なんだろう、でも、とっつきにくかったですかね。うーん。人見知りしあってたのかな。「どうもー」って挨拶だけして、あんまり喋らなかった。
野田:そうだったのか。人見知りだったのか。
山脇:いや、私も人見知りしてたので。こんなに話すようになるとは。
野田:恋愛相談までして。
山脇:いつからでしたかね。
野田:僕の印象では、すげえ励ましてくれたんですよ
山脇:なにをですか?
野田:婚約破棄のときに、「大丈夫ですか」って、いの一番に連絡くれたし。そっから恋愛相談するようになりましたねえ。
山脇:あー。あと、野田さんが騙し絵みたいなセーター着てたときに愛着がわいた、っていうのはあります。
野田:あの、緑の、三角のやつね。
山脇:ボタンがついてて、カーディガンを着てるように見える、セーター。
野田:ああ。あのとき食べたマグロ、美味しかったですねえ~。
お餅……? お餅ってなんですか。
山脇:野田さんがなんでだったか、酔っぱらってみんなにキスしたときにも一緒にいましたね。東中野の飲み屋で。
野田:僕が、その場にいた全員にキスする流れになって、山脇さんにはさすがにしないけど、山脇さんはそれを遠くで見てて。でもやっぱり気になるじゃないですか。で、ちょっと見たら山脇さんは全然ひいてなかったから、普通にしてたから「ああこの人の前でキスしてもオーケーだ」って。
山脇:なんか見てましたね。
野田:キスって言っても、あのおぼっちゃまくんの「レロレロ~」っていうのをみんなでやる、みたいなので。
山脇:ねえ。
野田:嬉しかったのは、R藤本くんが、そういうのやるタイプじゃないのに、頑張ってやろうとしてくれたのがわかって、心うたれて。それに応えないと! って。
山脇:藤本さんの、そういうの嬉しいですよね。
野田:R藤本くんは普段もの静かだから、うれしかったなあ。
山脇:ちょっとずつベジータじゃない一面を見せてくれるのが嬉しい。
野田:そう、ほんとうに。藤本くんの大喜利とか面白いよねえ~
山脇:面白いですよね~
野田:いいなー
山脇:野田さんも、お餅のとき、面白かったですよ。
野田:お餅……? お餅ってなんですか。
山脇:新年にやってませんでしたっけ、お餅がお題の大喜利。
野田:あ、覚えてますよ、うけたから。お餅をおしゃれに……してください、かな?
山脇:あれで、なんでしたっけ、あの答え……おしゃれな……
野田:「お餅&ガッバーナ」
山脇:そうだ。あと「メンズエッグお餅号」とかもなかったでしたっけ。
野田:ありましたねえ~。うけたのは覚えてるなあ~
顔真っ白に塗って出て「俺を見ろ!」ってスプレーをシュー!!ってやって。
山脇:野田さん単独ライブもまた観たいです。
野田:ああ、やりたいなあ。
山脇:前の野田単独は行けなかったんですけど、野田さんが「ノダボーイ」って、映画『MAD MAX』のウォーボーイに扮したっていうので、すっごい画像検索しました。
野田:あれね、あの頃『MAD MAX』公開したばっかりだから、お客さんみんな知らないんですよ。なのに、顔真っ白に塗って出て「俺を見ろ!」ってスプレーをシュー!!ってやって。観に来た人、全然ピンとこない。全員がわかってないのに、オープニングでいきなり「俺を見ろー!」シュー!! って出てもねえ、みんな知らないから、変な感じになって。
山脇:知らないとなにがなにやらだ。
野田:同じようなので、僕、2、3年前に『北の国から』を全部観て、「人生のバイブルだ!」って感銘を受けたんですよ。それで、せきしろさんに「『北の国から』のライブやりたいです」って言ったら「じゃあやろうよ」って、『北の国から~2015 野田~』をやらしてもらって。で、『北の国から』に、お腹に顔の絵を描いて、上部分を黒くして髪の毛ってことにして、腹を出して踊る、腹踊りをするっていう、そういう祭りのシーンがいっぱいあるんですよ。だから、オープニングでその腹踊りをしたんです。そうしたら、お客さん全員、観てなくて、結局。どすべりして。
山脇:『北の国から』みてたら「あ、あれだ」ってなるのに…
野田:観てる人が来てるのかなあ、って思ってたから。でも全然観てなくて。
山脇:『北の国から』まるっと全部を観てる人はなかなかいないかもですね。部分的に、スペシャルだけ観た、とかはあっても。私も全部は観てないし……
野田:それは……じゃあ、俺がおしつけちゃったね。
山脇:まあまあ。
野田:いやあ、心が折れましたねえ。
山脇:わりと、身体に色を塗ったりするのが好きなんですね。
野田:(笑)そうですねえ。
山脇:そういうのを取り入れたくなっちゃう。
野田:わりと、それを取り入れちゃう。意外と塗りやすいんです、僕の身体。けっこう、顔とかを塗っちゃうのが好きだし、やっぱりそういうのを求められますね。
山脇:スキンケアは何かしてますか?
野田:アトピー持ちなんで、荒れるんですよ、すぐ。
山脇:え! そんな塗って大丈夫なんですか?
野田:大変です。だから、気をつけてます。アルコールが入ってる化粧水だと反応しちゃうので、薬局にあるビーソフラテン、かな? あれを大量にもらって使ってます。すっごくのびがいい。風呂上がりとかカサカサですけど、すごく浸透して。みんな使えばいいのに、って思うくらい。
山脇:処方箋ないと買えないやつですかね。
野田:そうそう。あらゆる化粧水使っても、反応しちゃうんですよ。
山脇:あらゆる。結構試したんですか。
野田:こないだ、ハトムギの白いの、あるじゃないですか。
山脇:私、使ってます。大きいボトルのやつ。
野田:ビーソフラテンを切らしちゃったんで、それ使ったら、やっぱりちょっと反応しちゃって。だから、敏感ですね。
山脇:敏感な人はそのぶんお手入れするとめっちゃキレイになるって.木村文乃さんもinstaglam に書いてましたよ。
野田:あ、そうなんだ。じゃあ本当そうなんだ。あと、特には、それくらいですかね。乳液とかはベタベタするのが嫌いだからつけないです。あと大事なのは食事じゃないですか? でも、夜中に食っちゃうからなあ。
人間って骨が無くならない限り、再生するんですよ。
山脇:好きな食べ物は?
野田:たこ焼き、からあげ……
山脇:一番に、たこ焼きがくるんですね。
野田:たこ焼き、本当好きなんですよ。
山脇:どんなたこ焼きが好きですか? 揚げたっぽいのとかフワフワとか、色々ありますけど。
野田:うーん、正直、揚げてるようなのは、しかたなしに食ってる感じっすね。フワフワがいいです。やっぱり、だしの方が好きだから。『わなか』とかね。うちのほうには、ソース塗ってない醤油味のたこ焼きで、中に山芋が入ってるのがあって、それがめちゃくちゃ美味しいんですよ。もう忘れられない。
山脇:えー。地元ですか?
野田:そう、おばあちゃんがやってるようなお店で。柔らかくて、美味しいんですよ。それはもう、食べられないと思いますけど。
山脇:え。もうお店やってないってことですか?
野田:うーん、もうやってないかも。僕が子供の頃からだから。
山脇::地元は愛知で。名古屋?
野田:名古屋の端っこで。
山脇:長男で生まれ、育ち。
野田:そう、弟がずっと家を造る職人でね、今はやめちゃって、人生の岐路に立ってるんですよ。弟は「熊本にボランティアにいってくるわ」って1人で行ったり、偉いやつなんですよ。だから、もうちょっとしたら東京に呼んで、僕の同級生とかいるから、仕事斡旋してやろうかなって思ってますよ。
山脇:家をつくる同級生が?
野田:や、家具をつくってる友だちがいるんで。什器って言いますか、こういうの……(喫茶店の棚などを指して)こういうのを、発注でやるんですけど。こういう角のところとか、丸く削ったり。
山脇:あー、お店の。調度品とか。
野田:僕もやったことあるんですけど、お店に合わせて、棚とかをつくって。
野田:いっかい僕、指飛んだことあるんですよ。刃がついてる機械を触ってて、何かの角を削ってるときに。
山脇:え?!
野田:ここ、スポーンって飛んでって。ショックで「うぇ!」ってなって。見たら、指がへこんでるんですよ「やばいやばい」って。でもね、人間って骨が無くならない限り、再生するんですよ。(指を見せて)ほら、もうここ、戻ってる。
山脇:うえー、痕も無いんですか。
野田:痕も無い。前は白かったけど、もうわかんないでしょ。
山脇:すごい……えー。
野田:痛くないんですよ。
山脇:痛いでしょう。
野田:痛くない。突然すぎて。もう、「怖い!」が強くて。
山脇:えええ。
野田:だから僕ねえ……色々な経験してるんですよ。
ごっこ遊びが過ぎた子ども……ていうのかな。
山脇:これからの野田さんはどうなっていきますか?
野田:やっぱ……でんでんさんみたいになっていきたい。狂気の部分を出していきたい。
山脇:野田さんの狂気。
野田:狂気と、でんでんさんのような明るさと……でんでんさんになりたい。
山脇:でも野田さんと一緒にコントしてると、狂気を感じますよ。
野田:ほんとうですか? うれしい。
山脇:なんだろう……子どものようです。
野田::子どもで狂気?
山脇:ごっこ遊びが過ぎた子ども……ていうのかな。この人ほんとうにその世界に行ってるのかな、っていう感じ。
野田:わあ、入り込んでるってこと? それは嬉しいな。
山脇:止まらないな、制御がきかないのかな、っていう。
野田:うーん、制御はきかないっすよ。
山脇:野田さんに殴られる役とか、やったことないですけど、きっと怖いだろうなって。
野田:あー。自分の中で抑えてても、力は入っちゃってるかもしんないです。よだれとかばんばん出ちゃうし、お客さんがハワ~って避けることとか、ありますから。
山脇:ああ……。それは大事なことだから、なくさないでください。
野田:頑張ります。一所懸命。また一緒にやりたいですね。
山脇:ね。単独も楽しみにしてますね。じゃあ、写真撮りましょうか。
野田:はい! いっぱい喋ったから、もう大丈夫。寝起きで撮影だったらどうしようって思ったけど、もう大丈夫!