PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
1975年12月31日をもって初期頭脳警察を解散し、ソロ・アルバムの製作に入るのだが、製作準備は'74年後期にはだいぶ進んでいたように思う。そしてさんざん言ってきたことだが、頭脳警察では封印してきた敬愛するブラック・ミュージックのテイストを全面的に解除することになったソロ・アルバム。
そんな折も折、とんでもない朗報が入る。来日するドゥービー・ブラザーズがメンフィス・ホーンズを引き連れてやってくるという情報が入ったのだ。あのメンフィス・ホーンズである。ブッカー・T&ザ・MG'sやオーティス・レディングやらのバックで吹き鳴らしているあのメンフィス・ホーンズである。興奮しないわけがない。自分のソロ・アルバムのレコーディングに参加できる可能性があるのかどうか打診してみたのは当たり前のことだろう。
そしてその可能性の低い朗報を首を長くして待っていたのだが、残念ながらと言うか案の定と言おうか、スケジュールが合わず、断念せざるを得なかった。そんな寸時の間でも妄想を抱かせてくれたメンフィス・ホーンズとのセッションに感謝をしつつも、それだけにその落ち込みようは半端ではなかった。人にそんなところは見られたくないし、見られているとも思っていなかったのだが、ある日、義兄の故・板谷博(トロンボーン奏者)はそれを強く感じ取っていてくれたらしく、「PANTA、だったらPANTAX'S HORNSを作ればいい」と提案してくれた。トロンボーンの向井滋春さんをはじめ、当時の日本のジャズを代表する錚々たるメンツを集め、PANTAX'S HORNSを結成してレコーディングに臨んでくれた。
これにまつわるレコーディング・エピソードなど数多くありすぎるが、まずはこのときのとても言葉にできない嬉しさを喇叭(ラッパ)の高鳴りで伝えたいソロ・アルバム『PANTAX'S WORLD』の製作過程であった♬