このアルバムは2008年11月に録音、ギタリストのイザベル=ケメ鴨川とドラマーのファビエンヌ猪苗代が正式入社する直前に制作された音源である。創業時のメンバー2人、前ギタリストと前ドラマーの相次ぐ退職により廃業の危機寸前に追い込まれた、まさに崖っぷちの時期に、キノコホテル臨時職員として2人の友人を迎えて録音した9曲。2007年初夏の創業以来、初のまとまったスタジオ・レコーディングをこの時期に敢行した理由は謎に包まれたままであるが、当時のキノコホテルを知る人は少ないだけに貴重で興味深いサウンドを聴くことができる。
歌と電気オルガンのマリアンヌ東雲(支配人)、物販スタッフからベーシストに成り上がったエマニュエル小湊(秘書)の2人に加えた録音メンバーは、ドラムにはマリアンヌの銀座時代の先輩でもあり、現在は2児の母だというジェニファー松井(プログレ好き)。そして、ギターには、貿易関係のキャリア・ウーマンとしてスウェーデンに単身赴任中ながら休暇をとり来日したアンジェラ勅使河原(60年代ロック好き)。この2名を迎えて某スタジオにて2日間で録音された9曲は、2009年初頭にボルテイジ・レコードよりリリースの予定であったが、録音直後にキノコホテルの現メンバーとなるイザベル=ケメとファビエンヌが入社したことにより、必然的にお蔵入りとなってしまった。2010年10月、今ここにようやく陽の目を見ることになったのだ。
これを読んでいるあなたは当然、公式デビュー・アルバム『マリアンヌの憂鬱』をお持ちであることと思われるが、本作品は楽曲の重複もあり『憂鬱』のプリプロダクションのような位置付けなのだと思う。『憂鬱』を聴き込めば聴き込むほど本作もさらに効いてくるのである。(福田二郎/音楽評論家)
キノコホテル
『クラダ・シ・キノコ』
発売日:10月20日
品番:BQGS-22
定価:¥2,500(税込)
発売:ボルテイジレコード
販売:ウルトラヴァイヴ
*豪華三面ジャケット/支配人による漫画付
[収録曲]
01. キノコホテル唱歌
02. ネオンの泪
03. 恋のチャンスは一度だけ
04. もえつきたいの
05. 真っ赤なゼリー
06. 夕焼けがしっている
07. 危険なうわさ
08. あたしのスナイパー
09. 静かな森で
▽キノホテル公式サイト▽
http://www.kinocohotel.com/