頼む! 「歌うたい」として認知してくれ!
かつて、劇団を始めたばかりの頃は、雑誌社に芝居を売り込みに行っても、「どうせ有頂天のヴォーカリスト、あるいはナゴムレコードのオーナーが、オフザケでテキトーにやっているロクでもない舞台だろう」と一蹴されたものだった。
旗揚げの動機は確かにその程度の軽い気持ちだったものの、2年、3年と続けるうちに、私としてはとっくに演劇に対して本気になっていた。
な のになかなか相手にしてもらえない。『宝島』と『DOLL』と『フールズ・メイト』はナゴムでレギュラー広告を出していた付き合いもあったからだろう、公 演レポートや公演情報を小さく掲載してくれたけれど、それだけだ。一般誌や演劇誌はおろか、有頂天やナゴムのニュースには飛びつく他の音楽雑誌すら、まっ たく興味を持ってくれなかった。
私は、自分的にはバンドやレーベル運営と同じぐらい情熱を燃やしている演劇活動に、どうして人々が振り向いてくれ ないのか悩み、落ち込み、やがて、「作品で振り向かせるしかない」というまったく感心と言うしかない見上げた結論を出し、以来、25年間、バンド活動と並 行して地道に地道に演劇を作り続けてきた。
で、気がつけば、いつの間にか、数々の演劇賞を受賞し、関わる舞台の集客は常に数万人を数える、日本を代表する素晴らしい劇作家になっていた。ざまぁみろである。
ところがだ。今度はいくら声高に訴えても、音楽業界の人間が私の音楽活動に興味を持ってくれない。「演劇人が遊びでやってるバンドでしょ?」という目で見られる。そりゃねーよ。ふざけんな。
25年前とは真逆とも言える状況である。何故だ!?
まぁ、根拠はいくらでも考えられるのだが、文字数の都合上ここで挙げることはしない。
と いうわけで、なんとか「歌うたい」として改めて認知されたい、頼む、してくれ、という「もがき」の一貫として、私はタダみたいな原稿料のこの連載を引き受 けたのであり、今年前半は隔月でLOFTでライブをするのだ。本当はそんな理由よりも楽しいからやりたいだけなんだけど。
2010年3月5日(金)の新宿LOFTは「歌うたい」のケラを存分に堪能できるチャンス!