LOFTのステージに立てた嬉しさの余り、店長に感想を促したものの──
申し訳ないが、何しろ記憶が曖昧だ。
俺が、自身のバンド“有頂天”、あるいは大槻ケンヂ、内田雄一郎とやっていた“空手バカボン”というバンドで新宿LOFTによく出演させてもらっていたのは、1984年から86年の3年間だったのではないか。まだ店が小滝橋通りにあった頃だ。
82年だか3年だかに初出演した時の嬉しさったらなかった。そりゃそうだ、高校時代にRCサクセションやリザードやP-MODELやヒカシューを観たあの憧れのステージに自分が立っているのだ。昼の部で、客席には友人しかいなかったにしてもさ。
その時だったか、その少し後だったか、ライブ後の清算時に、当時の店長に、ステージの感想を促した時のことは死ぬまで忘れまい。自信満々の俺に向かって、店長は信じ難い言葉を放ったのだ。
曰く、「曲がどれもこれも同じに聞こえる」「バンドとして格好悪い」「センスがない」。
愕然とした。せめて一ヶ所ぐらい褒めたらどうなんだ。曲についてはともかく、あとの二つはそうそう克服できる問題じゃないぞ。センスが無いって。じゃあくれ! センスくれ! 解散しろと言いたいのか。
この時のクソ店長の言葉が悔しくて悔しくて、その思いがバンドにはずみをつけたように思う。あの悔しさを糧にしていなければ、乗り越えられなかったこともあったのではないか。
ライブハウスの店長さん、出演バンドはできるだけ面と向かってクサした方が伸びるよ。内田裕也とかクサしたら殴られるけど。
こう書いておいてなお、あの時の店長の言葉を思い出すと、有り難くなんてまったく思えず、ただ胃がムカムカしてくるのだから俺も人間が小さい。店長の名前は秋山だか秋元、顔にはたしか目や鼻があった。
KERAが表紙を飾った本誌'87年1月号。中を開くと、KERAの自筆イラストと手書きの文章が寄稿されている。「随分昔のコトだが、有頂天が初めてロフトでやらせてもらった時、当時店長だったヒトに感想を求めた。そのヒトはしばしタバコをふかして、こう言った。『全部同じ曲に聞こえたな』」。……意趣遺恨は20数年を経ても不変!