底辺のカリスマ、絵恋ちゃん。もともとは地下アイドルライブの受付スタッフをやっていたが、かわいい一般人に目がないオタクたちにチヤホヤされ、勘違いをしたことがアイドル活動のきっかけだったと言う。そんな彼女が4月1日に新曲『ヴァ・ラヴォンド~或いは羊達の闇鍋~』を発表した。「本当のことは話したくない」という繊細な彼女へのインタヴューは、大変気を遣った。
絵恋ちゃん(地下アイドル)
活動開始以来、絵恋ちゃんの音楽にはまったくブレがない。様々なジャンルの楽曲を持っているが、一貫しているように聴こえるのは彼女が持つ独特な歌声の力だろうか。最新作『ヴァ・ラヴォンド~或いは羊達の闇鍋~』について本人にうかがった。
写真:Misa Sohma
作品に作らされている
──新曲『ラ・ヴァランド~或いは羊達の闇鍋~』ですが、絵恋ちゃんにとってはどんな作品ですか?
絵恋ちゃん:私にとって、貴方にとって、世界にとって。そんなことは考えてないね。どちらかと言うと、ウミガメ、かな。ウミガメがレジ袋を食べてしまう。それってかなしいことだから。
──今回、まず驚いたのは、イントロだけで1曲分ほどの長さがありますよね。それは何故ですか?
絵恋ちゃん:4分のイントロを作ろうと思ったわけではないんだよね。曲にはそれぞれ、適したイントロの長さがある。この曲は、それがたまたま4分だった。それだけのことで。
──ギターソロも長いですよね。
絵恋ちゃん:7分。それも同じ理由かな。
──ネットで「ギターソロをスキップする若者が増えている」なんて論争もありましたよね。最近の音楽界へのアンチテーゼ的な意味合いはありますか?
絵恋ちゃん:そこまで強く意識したわけじゃないけど、まあ、無意識でそんな気持ちもあったりするのかな。音楽ってインスタントに消費されていいものじゃないって感覚はずっとあって。それが作品にも出たのかな。自分の場合、作品を作るというよりは、作品に作らされてるんだよね。ウミガメと一緒で。あぶないでしょ、レジ袋は。そういうので、曲がどんどん長くなっていった。
ウミガメについて熱く語る絵恋ちゃん
30秒だけ流行るくらいなら誰にも聴かれなくたっていい
──TikTok等で、15秒〜30秒だけ切り取られた曲が流行るなんてことも多いですよね。絵恋ちゃんはそのような注目のされ方はどう思っているのでしょう?
絵恋ちゃん:はっきり言って、クソだね。音楽が好きだからこそ、1曲フルで聴いてほしいし、30秒だけ流行るくらいなら誰にも聴かれなくたっていい。話してて気付いたけど、必然的なのかな、曲が長くなったのは(笑)。カメにも悪いしね。
──『ラ・ヴァランド~或いは羊達の闇鍋~』の他にこだわった部分はありますか?
絵恋ちゃん:ギターソロもだけど、構成も凝ってて。まあ、あんまり語るよりは、聴いてほしいかな、そこは。もちろん切り取りや一部じゃなく、全部通してね。
──ちなみに、私はTikTokは好きなほうで、ずっと見ちゃいますけどね。
絵恋ちゃん:帰る。もう話すことはない。あと、ずっとラ・ヴァランドって言ってるけどヴァ・ラヴォンドだから。
機嫌を損ねインタヴューの途中で帰ってしまった絵恋ちゃんだが、怒気をはらませスタッフに当たり散らす姿はまさにカリスマ。彼女の曲には彼女そのものが昇華されたパッションがある。本当の音楽が、本当のロックが、そこにはあるのだ。
インタヴューは唐突に終わってしまったが、絵恋ちゃんの挑戦はまだまだ終わらない