絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
よく嘘をつきます。嘘と言っても「みんなを騙してやろう」とか、「誰かを傷つけないための優しさ」ではなく、二度と会わないであろう相手や、そういうことにしておいたほうが話がまとまる場合に本音を言い出さなかったりする、雑嘘のことです。
例えば、タクシーに乗る時。運転手さんに「お仕事帰りですか?」と聞かれると、実際にそうでもそうじゃなくても「はい」と答えます。初対面で二度と会うことのない方と話す機会があると、何を聞かれても「はい。そうなんですよ」と返すゲームが始まります。そうして適当に会話していると、わたしは京都からお友達に会いに来た大学生になったり、ジャニーズのコンサートに通っているロリータになったり、本来の自分とはかけ離れた人物になりきることができて楽しいのです。
メイドカフェでメイドになって間もない頃、わたしはご主人様におしぼりも渡せないほどシャイで、このままではクビになってしまうという焦りから嘘で会話をするようになりました。
「学校このへん?」「お兄ちゃんいるでしょ!」「A型って感じだよね」
違うのに違うと言えず、全部に「はい!」と笑顔で答えました。自分のことなんて誰も興味がないと思っていましたし、その場をやり過ごすことで精一杯でした。しかしそのメイドカフェは当時オープンしたばかりで、常連のご主人様方もメイドもそんなに人数が多くなく、メイドやご主人様同士での交流の中ですぐに「この前言ってた話と違くない?」といい加減に会話してることがバレました。不信感を抱かせてしまったのに、意外とみんな自分の話をちゃんと聞いてくれてるんだと嬉しくもありました。
その頃に誕生した持ち嘘が今も体に染みついていて、わたしは時々「これって本当の話だっけ? それとも持ち嘘だっけ?」とわからなくなります。とくに「昔ガチャピンって呼ばれていた話」は何度も話してるうちに完全にどっちだかわからなくなってしまいました。わたしはガチャピンって呼ばれていた過去が本当にあるのでしょうか。あってもなくてもこれからの人生に影響はないのですが、もう嘘をつくのはやめようと思っています。
以上、今回のコラムは作り話で書いてみました。