もう年の瀬です。ジタバタしても仕方ないので2019年を振り返ったり、来年の抱負を考えたりすることなどしません。
ところで、抱負ってなぜ「負けるを抱く」んでしょうね? 日本人は元来ネガティブですもんねーカタカタ(今調べてる)、えっと、インターネットの海によると、「抱」の意味は「心の中に思いを抱く」、「負」の意味は「後ろだてとする。頼みとする」。「負」は「面倒な物事を背負い込む。負ける」といったようにマイナスをイメージしますが、「抱負」の「負」は「頼みとする」という意味になる。
なんだって。ふーん。まぁそんなことはどうでもいいです。
昔の話をしましょう。
私はこれまでの自分を誰も知らない場所へ行きたいという理由で、自宅から1時間半ほど通学に時間を要する高校へ進学しました。
ですので高校生活は友達作りも一から始めないといけなくなったわけですが、中学校までは普通に近所の公立中学へ通っていたので、幼稚園→小学校の人脈がそのまま受け継がれておりました。
で、中学校に入って2年生の時くらいから本格的に第二次不登校が始まったんですけど、中学校の時に特に親しくしていた子の一人に小学校の頃あからさまにいじめられていた子がいました。
その子がなぜいじめられていたのかは非常に明確で、小学生って残酷な生き物だと思うのですが、仮にAさんとしましょう、Aさんは他の子よりも率直に申し上げて太っておりました。たったそれだけの理由でいじめに発展するって、人間って分別をわきまえなければ残酷なんだなぁと思う次第でありますが、私はそのAさんがいじめられていたけれども普通に会話をしていたただ一人の人間でもありました。
他の子は率先して嫌がらせをして、その取り巻きは巻き込まれたくなくて見て見ぬふり、というよくある構図だったんですけど、俗にある「Aちゃんと喋ったらお前もハブるぞ」みたいな暗黙の空気が漂う中、なぜか私だけは例外で、Aさんと会話しても自分がターゲットになることはありませんでした。
私も私で大概酷い人間だなって思うのですが、Aさんが明らかな嫌がらせ(たとえば重い荷物全部お前が運べみたいなやつ。小学校の2年生くらいの時の話です)を受けているのに、黙ってそれを見ていて、みんながいなくなったら手伝うみたいなずる賢い人でした。自分の中にもなんとなく「仲間外れにされたくない」という意識があったのかと思うと吐きそうになりますが、7、8歳の子どもでも同調圧力は感じるんだなと思いました。これは良くないことだと思いますけどね…。
で、まぁそんな感じでのらりくらり私は生活していたのですが、自分の中で毎週土曜日に地元駅にある図書館へバスで行って本を借りまくる or カルチャー教室で実習体験をするというのがブームになった時期がありました。
でもバスに一人で乗って行くのは怖いし、カルチャー教室も一人で参加するのが恥ずかしい…とモジモジしていた時、唐突にAさんに一緒にバスに乗って図書館に行かない? と誘いました。
私としてはAちゃんはお友達がいないから暇してるだろうし、きっと土曜日は空いているだろうと、冷静に思うと酷い理由で誘ったわけなのですが、それから3年生に上がるまで私たちは毎週土曜日にバスで行って図書館で遊んで帰るようになりました。本を読んでいる時はお互い黙っているし、実習体験をしている時もそんな感じで特に会話もなかったのですが、Aさんへの風当たりも中学校へ進学したら次第になくなり、普通にお友達もお互いに増えて平和に過ごしていました(私はほぼ学校へ行ってなかったので真相は分かりませんが)。
月日は流れ、中学校卒業目前のある日。私は久々に登校してAさんと一緒に帰宅することになりました。たわいもない会話をしてそろそろお互いの家に着きそうな時、Aさんが突然言いました。
「昔さ、浜崎さんが突然図書館に行こうって毎週誘ってくれたことあったやん?」 ああ、あったね〜、楽しかったよねなどとヘラヘラ返事すると、「実を言うと、あの時めちゃくちゃビックリしたんよ。ほら、私、いじめられてたやん?」
あ、やっぱりいじめだったんだよな、アレは…と心の中で思っていると、Aさんは続けました。
「だからこんな自分を毎週誘ってくれる浜崎さんにめっちゃ感謝しててん。あの頃、毎日学校通うのが本当に辛くて…でも土曜日になったら浜崎さんと図書館に行ける! だから頑張ろう! って。私と普通に話してくれるの浜崎さんだけやったやん? 私、あの時、浜崎さんが毎週誘ってくれなかったら絶対自殺してた…」
ええええ!? と思いました。そこまで追い詰められていたなんて…。
私はいじめを止めるようなことはしなかった、もし私が大きな声を上げていたら…と思っていると、「だから、ずっとありがとうって言いたかってん…浜崎さん、私なんかと仲良くしてくれてほんとにありがとう!!」と泣きながら話す彼女の顔を見ながら、私は複雑でした。いじめた張本人ではない。でも見て見ぬ振りもしてた。それなのに、彼女を密かに救っていた…?
よく分からない感情のまま、泣きながら抱き合い、その場を後にしました。
私は一体何をしたのだろう。正しい行ないではなかったはずだ、感謝されるような人間でもないはずだ。だけどこれからそういう場面に出くわしたら、きっとどうしたらいいのか分かっている人になっていたい、と思いながら。