通算18作目のオリジナル・アルバムは、自身がワーナー内に立ち上げたレーベル“SAMURAI ROCK”と同名のコンセプチュアルな逸品。3.11以降の日本とそこで営みを続ける我々の情況を、吉川一流のエンタテイメントとして昇華した音のスケッチブックとでも言おうか。原発や日米関係といった抜き差しならないテーマを溌剌としたビートとフックの利いたメロディ、軽妙だが奥深い歌詞で対峙する吉川の横顔は一貫して凛々しいものの、ウィットとユーモアは決して忘れていない。風雲急を告げるインスト『覚醒』から連なる冒頭の『DA DA DA』、『DO the JOY』と胸のすく疾走ナンバーには従来の持ち味が出ているが、『Lovely Mary』や『絶世の美女』のダブル・ミーニングは新機軸で、その巧妙さには唸らされる。本作の最終曲、近未来の地球を宇宙から俯瞰した『survival CALL』を聴いたあなたは一体何を思うか。静謐で美しい音像と含みをもたせた歌詞の余韻にぼくは何度も身震いしている。（椎名宗之）

関連リンク

• 吉川晃司オフィシャルサイト