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稲川淳二/赤い半纏(はんてん)【完全版】

2012.07.10   MUSIC | CD

TECH-25301 / 2,500yen (tax in)
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1. 怪談爺ぃの唄
2. 鏡のない洗面台(MONO)
3. 人面相 (MONO)
4. 樹海〜暗闇の絵馬 〜(MONO)
5. 赤い半纏<完全版>
6. 赤いはんてんの唄
7. 怪談爺ぃの唄(Backing Track)

 2年前に『稲川淳二の怪談〜MYSTERY NIGHT TOUR BEST SELECTION BOX〜』の特典DVDに収録するヒストリー・インタビューで稲川さんと仕事をご一緒させて頂いた時、僕を含めスタッフの皆さんに対して終始細やかな気配りを忘れない稲川さんの温厚な人柄に感銘を受けた。芸歴40年近い大ベテランなのに驕ったところが微塵もなく、ユーモアを交えながらサービス精神たっぷりに話し込む姿はまさに当代きっての語り部という印象を抱いた。
そんな稲川さんと言えば、今年で20年連続公演を敢行する『ミステリーナイトツアー』がご自身のライフワークとしても知られている。その功績が認められ、日本記念日協会より8月13日が「怪談の日」として認定されたことは記憶に新しい(『ミステリーナイト』は1993年8月13日、金曜日の丑三つ時にクラブチッタ川崎で初めて開催されたのだ)。
本作は『稲川淳二の怪談』シリーズの第13作目にあたるもので、『鏡のない洗面台』『人面相』『樹海〜暗闇の絵馬〜』『赤い半纏〈完全版〉』という4話の怪談、『怪談爺ぃの唄』と『赤いはんてんの唄』の2曲の歌を収録した異色作。表題作の『赤い半纏(はんてん)』は「あか〜いは〜んて〜んき〜せま〜しょか〜」の名フレーズでお馴染みの稲川怪談クラシックと呼べるもので、30年以上にわたって語り継がれている10分強の不朽の名作に話の続きを加えた〈完全版〉だ。これが恐い。実に恐い。温和な稲川さんが語るから余計に恐い。中国では「霊は耳で見るもの」と言うが、視覚効果のない伝聞というアプローチがゆえに想像が膨らみ、だからこそ得も言われぬ恐怖を味わうことになるのかもしれない。いずれにせよ、これが稲川怪談の最強にして最恐の話芸のひとつなのは間違いない。
また、稲川さんのテーマソングとして制作された『怪談爺ぃの唄』の作曲を頭脳警察のPANTAさんが手掛けていること(歌は稲川さんのツアー・アシスタントである樋口舞さんが担当)は本誌的トピックと言える。老若男女が口ずさめる親しみやすいメロディ・ラインはPANTAさんの職業作曲家としての持ち味がよく出ている。どちらも至芸の域に達している怪談とロックをブレンドさせた稲川さんとPANTAさんのステージ共演をいずれ期待したいところだ。(LOFT BOOKS:椎名宗之)

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