水星発、MATSURI STUDIO経由、地球行き。フジロック'09にも出演し、インディーズロックシーンでは注目を浴びていたSuiseiNoboAzが、2010年、待望のファーストアルバムを発表した。プロデューサーに向井秀徳という強力な個性を迎えて作られた今作。ともすればZAZENBEATSに呑み込まれてしまうのでは、という心配は、聴いてみてすぐに杞憂だったと分かった。切れ味鋭いリフが心地よいキラーチューン『水星より愛をこめて』や、ミクスチャー的要素の含まれた『over the rainbow』などの楽曲では、随所に向井秀徳の影を感じるものの、疾走間のあるオルタナ・ナンバー『メキシコかアイダホ』や、淡々としたベースとファズギターによって描かれる、スケール感の大きな『Happy 1982』などでは素敵な化学変化が起きていて、最高にカッコいいと思った。骨太でソリッドなサウンドに乗せて、激しくもどこか儚い印象を与えるボーカルは、その詩世界が描く情景のように、どこか現実感を失った現実のようで、危うい雰囲気をまとっている。こういう魅力あるバンドと出会えて嬉しい。素直にそう思わせてくれるバンドだ。是非。(Asagaya/Loft A:山崎研人)