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メロン記念日 / MELON'S NOT DEAD

2010.02.01   MUSIC | CD

EPCE-5692〜3 3,150yen (tax in) / 2.17 IN STORES

 2009年3月にハロー!プロジェクトを卒業したメロン記念日が挑んだ新たなトライアル──それは、ストリートに根差したロック・バンドとがっぷり四つに組んだコラボレート・ソングを5作連続で発表していく“メロン記念日ロック化計画”と題されたプロジェクトだった。

 屈指のアイドル・グループでありながら、そのライヴではモッシュ・ダイヴやクラウド・サーフが巻き起こるという熱く激しいライヴを繰り広げていた彼女たちが初陣の相手として選んだのは、以前から親交のあった異能のお面貴族ことビート・クルセイダース。彼らが提供した『DON'T SAY GOOD-BYE』は、レッドゾーンを振り切った激情サウンドと胸を締めつける哀切のメロディが交錯した紛うことなき名曲だ。結成以来四半世紀にわたってビート・パンクの大衆化に努めてきた先駆者であるニューロティカは、『ピンチはチャンス バカになろうぜ!』というタイトルからしてロティカ節全開バリバリのポップな楽曲を提供。すでにメロンのライヴでは一撃必殺のキラー・チューンとなっている。“ロック化計画”5部作の中でも異色中の異色と言える顔合わせはミドリだっただろう。『sweet suicide summer story』は過ぎゆく夏への焦燥と甘美な陶酔、メランコリックな情緒の果てに昇華した珠玉のラヴ・ソングだ。ライヴで無条件に盛り上がれるアップ・テンポのロック・チューンという過去3作のコラボレート楽曲と大きく趣きが異なったのは、ザ・コレクターズが提供した『青春・オン・ザ・ロード』。往年のブリティッシュ・ロックのエッセンスが詰まったミディアム・テンポの哀愁ナンバーで、ジャケットに使われたモッド・ガールの衣装も話題になった。プリミティヴなアンサンブルと清涼感に溢れたハーモニーを聴かせるゴーイング・アンダー・グラウンドは、不滅のロック・クラシック『レモンティー』に対するオマージュ的要素もある『メロンティー』を書き下ろした。うたかたの逢瀬を愉しむラヴ・アフェアをポップに描いた躍動感に満ちたナンバーである。
 オリジナル・アルバムとしては『メロンジュース』以来2年2ヶ月振りの発表となる『MELON'S NOT DEAD』にはこれらの“ロック化計画”5部作に加え、すでにライヴではお馴染みとなっているロック血中濃度の高い楽曲ばかりが精選に精選を重ねた上で収録されている。楽器もろくに弾けないアイドルがロックを!? といぶかしがる読者諸兄もいらっしゃるかもしれないが、だから何だと言うのだ。あのシド・ヴィシャスだってベースを一切弾けずにセックス・ピストルズに加入したではないか。それに、彼女たちにはれっきとしたパートだってある。斉藤 瞳=セクシー担当、村田めぐみ=メルヘン担当、大谷雅恵=ボーイッシュ担当、柴田あゆみ=ナチュラル担当という重要なパートが。
 ハロー!プロジェクトというメイン・カルチャーをその出自としながらも、ストリートに根差したロック・バンドとコラボレートする器量が彼女たちにはある。何物にも囚われることなくメイン・カルチャーとカウンター・カルチャーを自由に行き来し、時にはその境界線を軽やかに突破するメロン記念日のスタンスは何とも痛快だ。そんな規格外のスタンスをロックと言わずして何をロックと言うのか。
 ここに断言しよう。メロン記念日とは楽器を持たない至高のロック・バンドであると。『MELON'S NOT DEAD』はそのことを雄弁に物語ってくれるはずだ。(Rooftop編集長:椎名宗之)
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