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トップレビュー映画『ラフィキ:ふたりの夢』- 同性愛を違法とするケニアでは上映禁止、〈命がけの恋愛〉を描いた話題作

映画『ラフィキ:ふたりの夢』- 同性愛を違法とするケニアでは上映禁止、〈命がけの恋愛〉を描いた話題作

2019.11.01   CULTURE | CD

映画『ラフィキ:ふたりの夢』

【日本公開】2019年(ケニア・南アフリカ・フランス・レバノン・ノルウェー・オランダ・ドイツ合作映画)
【原題】RAFIKI
【監督】ワヌリ・カヒウ
【日本語字幕】今井祥子
【スワヒリ語監修】チェプクオニ・ジャスタス
【キャスト】サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ、ジミ・ガツ、ニニ・ワシェ
11月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

“ラフィキ”とは“友だち”という意味のスワヒリ語。ラフィキというタイトルのこの映画を、2人の10代の女の子の笑顔の写真だけで想像するなら、キラキラとした友情物語と思うかもしれない。実際、キラキラと眩しい映画なのだが、しかしワヌリ・カヒウ監督は、「ケニア人の同性愛者は、パートナーや恋人、伴侶や夫や妻を“ラフィキ“と紹介して、関係をボカすことがよくあります」とインタビューで言っている。それほどに同性愛は隠しておかなければいけないことなのだ。そう、この映画の主人公である2人の10代の女の子は、「人を好きになるのに ボーダーは無い」ことに気づいた2人だ。

カラフルな街並み。カラフルなファッション。クールなヒップホップ。街の人々は保守傾向でしきたりを重んじるが悪い人たちではない。裕福ではないし退屈だけど、友だちはいる。悪くはない暮らし。
そんな日々の中、出会い、恋に落ちる。戸惑いながらも近づいていく2人の表情は実に繊細。ドキドキする。街並みは更にカラフルに輝き、未来が、夢が広がる。今まで生きてきた世界とはまったく違う世界。とてもワクワクする。
しかし、そんな2人を世間は許さない。2人はこの恋愛が、命がけの恋愛だと知る。

カンヌ国際映画祭史上初のケニア作品である『ラフィキ:ふたりの夢』(原題『RAFIKI』)。カンヌ以外にもトロント、シカゴ、ロンドンなど100以上の映画祭に出品され注目されるが、本国ケニアでは上映禁止。ワヌリ・カウヒ監督によって限定公開が実現されたものの、自国では観ることができない映画。なぜか。ケニアではいまだに同性愛は違法。禁固刑に処される場合もある。つまり命がけの制作で、命がけの恋愛を描いた映画なのだ。
世の中は変わったわけではないけれど、“本物になろう”と誓った2人は、世の中へと歩き出そうとする。2人の未来はわからないが応援したくなるし、この映画が私たちを応援しているのだと気づくだろう。「私たちはもっと自由になれる、私たちの世界はもっと広がっていくよ」って、そんなメッセージが聞こえてくる気がする。特に若い人に観てほしいなぁ。

監督、脚本家、音楽担当のアーティストなど制作スタッフのほとんどがケニア人の女性である本作。女性であるということを敢えて書かなくてもいいぐらい当たり前のことになることを願って、今は敢えて記しておく。(text:遠藤妙子)

ラフィキ:サブメイン.jpg【あらすじ】
看護師になるのが目標のケナは、古いしきたりにとらわれた周囲の人たちに満たされない想いを抱えていた。両親は離婚し、ナイロビで母と暮らしていたが、国会議員に立候補した父のことは応援している。そんな時、父の対立候補の娘で自由奔放なジキと出会う。互いに強く惹かれたふたりは、「私たちは本物になろう」と誓い合う。だが、友情が愛情へと変わり始めた時、ふたりはこの恋は命がけだと知る──。

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