閉塞感が漂う現代のあらゆる悩みに寄り添う
人の悩みは数知れず、生きているだけで大小様々な悩みが発生し、時には心が病んでしまう。義理と人情の狭間で揺れ動く人間の業ともいえる悩みに町田康が真剣に向かい合い答えを導き出していく。大体の悩みが人間関係や自分自身の問題であるからに、結局解決したいのであれば貴方自身を変えるか菩薩にでもなるしかないと説く。閉塞感が漂う現代のあらゆる悩みに寄り添い、解決への最短ルートを通らず一緒に考え、目的地にたどり着くことよりもその行程にこそ意味があるのではないかと看做す。今回の文庫化に当たってのあとがきには「地獄極楽は此の世にあるんやで」と記憶の彼方に残る爺の言葉を引用している。爺曰く時代が変わっても人の楽しみ、苦しみはあんまり変わらないようだ。願わくば生きてる間は楽しくいきたいね。そのためにはどうしたらいいのか、とにかく頑張ろう。今はそれしか言えませんと町田康、かく答える。(阿佐ヶ谷ロフトA:山崎尚哉)