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あなたとわたしのドキュメンタリー / 成宮アイコ

2017.10.02   CULTURE | BOOK

書肆侃侃房
1,500yen

 人は孤独な存在だ。あなたは私ではないし、私はあなたではない。それでも私たちが生きていけるのは、たとえ一時でも誰かと繋がることができたり、他者に共感する瞬間が訪れたりするからだろう。絶叫朗読で知られる成宮アイコは「物心ついたときには家の中に当たり前のように」暴力があった家庭に育ち、それが原因で社会不安障害に悩まされ、不登校やリストカットを繰り返してきた。何度も死のうとした彼女がギリギリのラインで始めたのが、自分の生きづらさを言葉にした詩をライブで朗読することだった。それはテロルとも呼べるようなやり方に見えるが、その言葉は決して他人を攻撃したり排除するものでなく、逆に他者という存在を積極的に受け入れようとするものだ。表現することで自らは傷つきながら「傷つかない人間なんていると思うなよ」と誰かのために叫んでいるのだ。彼女にとって最初のこの本が水面のように広がり、一人でも多くの人に伝わることを願わずにはいられない。(加藤梅造)

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