落ち目のスター女優、つかさ。その彼女を「神」と崇めるファンクラブの束ね役、美知代。ファンクラブの新メンバーで、美知代の元同級生、アキ。それぞれに屈折した思いを抱える彼女たちが、自分自身の「切り札」と向き合うまでを描く連作集。学校を卒業してもスクールカーストに根差した劣等感や権威意識は簡単には消えてくれないし、自分より優れた誰かに嫉妬する気持ちも変わらない。いつだって「自分が持っていないもの」が羨ましい。でも結局、自分の持ち札で戦うしかないのだ。「どれだけ待っていても、革命なんて起きない」から。三者三様の繊細な感情の機微を鮮やかに見せつつ、ミステリ要素も含めた語り口で最後までサプライズを用意してくれる著者の筆力に唸る。特に最終章、ラストの5ページは震えた。デビュー以来次々と話題作を発表し続ける朝井リョウ。気になっている人は是非、今回の文庫化を機に手に取ってみてはいかがでしょうか。(阿佐ヶ谷ロフトA:三上山なおみ)