70年代に日本で生まれた「シティ・ポップ」を楽しむ上での決定的な指南書が登場した。著者は、エルヴィスがデビューした54年からの5年間、そしてビートルズがデビューした62年からの5年間と同様に、はっぴいえんどの『風街ろまん』がリリースされた71年から75年の時期を日本のポップミュージックにおける「奇跡的に濃密な5年間」と位置づける。当時、早熟な洋楽リスナーだった萩原にとって、『風街ろまん』は初めて「心を思いきり沸き立たせてくれる」日本のポップ・ミュージックだった。本書ではその後の日本の音楽シーンを大きく飛躍させた15枚の名盤(吉田美奈子『扉の冬』、シュガーベイブ『SONGS』、サザン・オールスターズ『熱い胸騒ぎ』など)を取り上げ、「純粋に聞き手のひとりとして」豊富な音楽知識とリアルタイムで経験した著者ならではの肌触りで解説している。萩原の体験を通じて、読者もまた音楽に出会うことの素晴らしさを実感するだろう。(加藤梅造)