アナキスト大杉栄と妻の伊藤野枝、甥の橘宗一が関東大震災の混乱に乗じ殺された甘粕事件は大変有名だが、そこに至るまでに物凄い情事の修羅場と青春と新たな文学思想活動があった(野枝は平塚らいてうから「青鞜」編集長を引き継ぐ)。現在説法お婆さんの瀬戸内寂聴が晴美名義だった1965年に彼らを書いた小説を漫画化。
赤名リカのモデル!野枝とダダイスト辻潤の出会い/大杉の略奪、大杉糟糠の妻・堀保子とインテリ女性記者神近市子との四角フリーラブと破綻を駆け足で描く。どんどん嫉妬で鬼と化し葉山日蔭茶屋で大杉刺す刃傷沙汰起こす神近の顔、柴門のあの崩れた描線怖い…原作より思想削ぎ潔い程SEXに絞り柴門らしい。本書で正力松太郎が大杉を張ってたと知れたのは収穫だった。大杉は中森明夫も小説化、日蔭茶屋はサザンの歌にも登場(何と現存グルなび掲載!)など今も人を魅了し続けている。(尾崎未央)