なんとも、今月も何冊かの書籍を買ったが、新刊ではなく古本屋で買い求めた本を読みあさっていた。特に藤原新也の本を何冊か読破した。著者は写真家を原点におきながら文筆家、画家、詩人、旅人と多彩な顔を持つ。歩きながら自分史の切れ切れの思い出の中に旅をし、写真を撮り、失われた風景を書き留める。島原〜尾道〜能登〜房総とカメラを携えて読者を連れて旅をする。途中で差し込まれている様々な写真とキャプションがまた素敵なのだ。「今日、佳景に出会うことは大海に針を拾うがごとくますます至難になりつつあるのだ。だが歩き続けなければならない。歩く事だけが希望であり抵抗なのだ。歩行の速度の中でこそ失われつつある風景の中に息をひそめるように呼吸している微細な命が見え隠れする」(帯より)う〜ん、なんて素敵なんだ。私も今すぐ歩きたくなった。(平野悠)