福島原発事故から1年経った今年3月に出版された本である。写真家・藤原新也はフクシマを取材する中で水俣・福島が繋がっていると痛切に思い、その答えを求めて水俣病を告発し続けている文学者、石牟礼道子(苦海浄土の作者)に会いに行く。被災地福島には答えはなかった。「1950年代を発端とするミナマタ。そして2011年のフクシマ。このふたつの東西の土地は六十年の時を経て今、共震している。〜歴史は繰り返す、という言葉をこれほど鮮明に再現した例は希有だろう。この二つの歴史にかかる橋をミナマタの証言者、石牟礼道子さんと渡ってみたいと思った」(藤原新也・序文)──この藤原さんの序文を読んだだけで・・・。淡々と語る二人、老いた文学者石牟礼さんと写真家の藤原さん。これほど素直に入っていける対談本を読んだのは初めてに近い。2012年に撮った藤原さんのミナマタとフクシマの写真が素晴らしい。・・・花や何 ひとそれぞれの 涙のしずくに洗われて 咲きいずるなり「石牟礼道子・花を奉る」より。(平野 悠)