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トップレビューいっぱい、ごめんネ。 / 小向美奈子

いっぱい、ごめんネ。 / 小向美奈子

2012.01.06   CULTURE | BOOK

徳間書店 / 1,680yen

 2008年の所属事務所契約解除騒動以降、数々のスキャンダルを経てすっかりミス・スキャンダルとして認知された感のある小向美奈子。だが、映画初主演のアイドルホラー『チェーン』にはじまり、一昨年公開された『花と蛇3』に至るまで(加えるなら昨年発売された『AV女優小向美奈子』でも)実に堂々とした演技をする"女優"であるということは、余り語られない。インタビューなどで「今後やってみたいことは?」と訊かれると必ず少しの沈黙を挟み、「来た仕事は何でもやります!」と切り返す彼女は恐らく、喩えるなら透明で何も入っていない容器で、だからこそ様々な"役"を中に入れ、それと同化することができるのではないだろうか。2009年に発売されたこのCD付き自伝に描かれているのも、そんな彼女の透明な半生である。芸能界デビュー、妊娠、恋人の事故死、流産、DV、めくるめく覚醒剤セックス、ストリップデビュー......と、壮絶な半生を拘置所で振り返るというやりきれない構成ながら、まるで悲壮さを感じさせない文体が、"女優"という生き物の業の深さを教えてくれる。(前川誠)

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