2023年4月29日(土)下北沢Flowers Loftにて“Flowers Loft 3rd Anniversary『ENDSCAPE vol.21』”が開催された。
2020年2月、コロナウイルスが猛威を振るいはじめたばかりの頃にオープンし、数々の逆境を乗り越えて迎えた3周年。記念イベントのラストを飾るのは、プランクトン、そして明くる夜の羊。どちらも東京都内を中心に活動し、今注目を集めている男女混成バンドだ。
まずステージに立ったのはプランクトン。
幻想的なサウンドのSEの中、一人ずつ登場するメンバーに、集まった大勢の観客から拍手が贈られる。Vo.葉南のアカペラから「明晰夢」でライブがスタート。力強い歌声と、印象的な鍵盤のメロディー、意気のあった演奏で、会場はあっというまにプランクトンが創り出す世界へ飲み込まれていくのを感じた。続けて披露された「灯火」では熱気のこもった拳が上がり、「XXX -Love me do!-」ではダンスホールのように体を揺らすなど、楽曲ごとにがらりと雰囲気を変え観客を楽しませる。
中盤のMCでは「記念イベントに呼んでもらえるって、めちゃくちゃうれしいことなんです!」と出演についての喜びが伝えられた。ツーマンという長尺でのライブだからこそ、プランクトンのいろんな面を見せられたら、と話していたとおり、その後も様々なテイストの楽曲が続いていく。プランクトンというバンド名を表すような深海をイメージさせる「ao」に、ベースラインの重低音が織りなすビートが印象的でダークヒーローを思わせるような新曲「悪完全抹消」や、壮大なピアノサウンドと疾走感あふれるバンドサウンドが重なる「終末時計の音が鳴る」。様々な楽曲でプランクトンの魅力が表現され、メンバーそれぞれの持つ演奏力、バンドとしての武器の多さに圧倒された。
終盤にはVo.葉南がはじめて作詞をしたという楽曲「億劫」が、制作にあたっての葉南の思いとあわせて披露された。2016年、高校の軽音部で結成され、“食物連鎖の最底辺からてっぺんを目指す”という意味を込めて名付けられたバンド名。「いきなりプランクトンから大きな生物に成長することはできないかもしれないけど、一日一日、少しずつでも変わっていけたらいいなっていう気持ちを込めて、この曲を書きました。ここでこうして皆さんに聴いていただけること、誇りだなって思います」 変わりたい、けれど変われない、そんな心の葛藤を描いた「億劫」。タイトルが与えるネガティブな印象とは一転、軽快なピアノのリズムに、力強い歌声と演奏からは、前を向いていきたいという強い決意が感じられる楽曲だった。
そして二番手、明くる夜の羊だ。
その名前を連想させる微睡むようなSEが流れ出し、待ち侘びた観客の前に登場したメンバーの姿は、単独イベントでのFlowers Loftへの出演ははじめてだが、堂々としたものだった。3月にリリースしたばかりの「周回軌道上」でライブがスタートし、“位置についてよーいドン”の歌詞のとおり、ここから明くる夜の羊の全力疾走がはじまる。Vo&Gt.カワノユイが「楽しんでいこうよ!」と笑顔で声をかけ、「あの日の僕ら」「都市から遠く」と代表曲を立て続けに披露。疾走感のあるサウンドの中で、伸びのあるカワノの歌声が光る。ライブハウスという限られた空間の中でも、どこまでも広がるようなその歌声に乗って、まさにどこまでも行けるような気持ちにさせられてしまいそうだ。
一息ついてMCでは、「飛ばし過ぎて喉が砂漠状態」と一走りした後のランナーのような発言や、「Flowers Loftの好きなポイントは(お手洗いの)石鹸がイソップなところです」「めっちゃいい匂い!大人の女の匂いになれます」と女性二人ならではの目線で笑いをとりつつ、メンバー同士の和気藹々としたやりとりで観客を和ませた。
その後も全力疾走は続き、お馴染みのライブナンバー「フラッシュバック」「リプレイ」で、会場のボルテージはどんどん上がっていく。あまりの熱気に、メンバーがたびたび「暑い!」と声を上げるほどだ。一番手のプランクトン同様、長尺でのステージだからこそ、いろんな曲をやって一緒に楽しめたらと話すように、「名前のない記憶」「環状線」など、流れるように、徐々に雰囲気を変え観客を楽しませる。「光の方へ」では、「歌って!」とカワノの声に応え、大勢の観客からシンガロングが起こり、コロナ禍では見ることのできなかった光景に思わず胸を打たれた。
ライブも終盤というところで、再びFlowers Loftの好きなポイントとして「(フロアの)みんなの顔がすごくよく見える」と、うれしそうに話すカワノ。大勢の観客、というだけでなく、その表情が見えるということは、ステージ上のアーティストにとって大きな力になるのだろう。「ずっとこんな景色を見ていたいなって思います」と愛おしそうに話す姿がとても印象的だった。大切な人との思い出を綴ったメッセージソング「花束」は、きっと一人一人の心に届いただろう。
“エンドロールが終わりを告げても この日々は続いていくんだ”──ラストソング「シネマを抜け出して」のワンフレーズだ。3年間、様々な制限を課せられてきたライブハウスだったが、2023年5月8日、ついに新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置付けが5類に移行され、すでにいくつかの制限は解除されている。この3年間を乗り越えて力をつけたアーティストたちは、長く暗い時間を耐えてきたライブハウスで、きっと強く輝きを放つ光となってくれるだろう。Flowers Loftの3周年記念イベントはここで幕を下ろすが、これからも様々なアーティストと観客と共に“最高の景色”は更新されていく。
テキスト:たまきあや(下北沢 Flowers Loft)
写真:TAMA(@tm_livephoto)
Live Info.
LOFT PROJECT presents『ENDSCAPE vol.22』
2023年6月20日(火)新宿LOFT
OPEN 18:30 / START 19:00
前売:一般¥3,000 / 学割¥2,500
当日:一般¥3,500
*各チケットDRINK代別¥600
*学割チケット購入者は当日受付にて学生証提示必須(学生は22歳以下)。
*入場順:①通常前売り(A No,1〜)・学割(B No,1〜)並列入場→②バンド予約(公演2週間前より開始予定、通常前売り価格のみ)
問い合わせ:LOFT 03-5272-0382